リウマチ 炎症性疾患

【関節リウマチとステロイド】ステロイドの作用と注意すべき副作用

目次

はじめに

「ステロイド」はリウマチや膠原病の患者さんには切っても切り離せないものです。

リウマチの治療において、最近では可能なかぎりステロイドの中止を目指していくことになります。しかし、どうしてもステロイドを完全オフ出来ないこともありますし、高齢者で治療薬の選択肢が少ない場合に少量のステロイドを継続使用することがあります。

そこで、今回は関節リウマチにおけるステロイドの立ち位置と注意すべき副作用について説明したいと思います。

ステロイドって何?

ステロイドは昔からリウマチを初めとする膠原病の治療で使われてきました。

現在でも多数の疾患において使用されています。

膠原病では身体の免疫の異常によって多彩な症状を来しますが、ステロイドは免疫を抑制することで症状を緩和してくれます。

関節リウマチの患者さんの場合では、発症時の関節炎が強く、日常生活に支障があるような場合、早期の緩和のためにステロイドの力を借りることがあります

これは関節リウマチの治療薬の効果が出てくるのに1-2ヶ月かかることが多く、一方でステロイドの効果が出るのは早いためです。

また、関節リウマチに胸膜炎などの合併症がある場合にステロイドを使用することがあります。

その他、リウマチ以外の膠原病の治療においてはステロイドパルスといって大量のステロイドによる治療を行うことがあり、ステロイドは患者さんの異常な自己免疫の抑えてくれる武器です。

しかし、良いことばかりではありません。強力な免疫抑制作用によって身体に負担がかかり、副作用が出てきます。

そのため、容量に注意しつつ、うまく使っていく必要のあるお薬です。

ここからはステロイドの副作用について説明していきます。

関節リウマチとステロイド

ステロイドの効果は早く、患者さんの症状を早急に和らげる事に役立ちます。

一方で感染リスクの上昇や骨粗鬆症の進行など長期的にはデメリットがあります。

そのため関節リウマチの治療においてはステロイドは短期間のみの少量のステロイド(PSL7.5mg以下)の使用にとどめる事が勧められています。

関節リウマチの治療薬の効果が出てきた段階で、減量していき、可能な限り半年以内に0mgを目指します。

私も大抵使用するとしても5mg程度にして、リウマチ薬の薬剤の効果が出てきた段階で早急に減量していきます。

高齢発症の関節リウマチ(EORA)とステロイド

通常は20-40代でリウマチは発症しますが、最近高齢者において発症する関節リウマチ(EORA)が多くなりつつあります。高齢の場合には感染のリスクや合併症の関係でリウマチの強力が薬剤が使用しにくい場合があります。

リウマチの治療においてステロイドは可能な限り使わないようにしていますが、高齢発症のリウマチの場合にステロイドが著効することが多く、PSL5-10mg/日を試して反応を見ることがあります。

反応確認しつつ、免疫調整薬やメトトレキサートを少量(2-4mg/週)使用して経過を見ていきます。このように通常の治療方針とは異なる順序で見ていくことがあります。

最終的にはステロイドを積極的に減らして離脱を目標にはしますが、少量のステロイドを継続していくことがあります。

ステロイドの副作用と発現時期

開始当日から不眠、うつ、精神高揚、食欲亢進
数日後から血圧上昇(10 mg以上)
浮腫、電解質異常
2〜3週間後から副腎抑制、血圧上昇
1ヶ月後から易感染性(10 mg以上で用量が多くなるほどリスク上昇)
中心性肥満・ムーンフェイス、多毛、ざ瘡(ニキビ)
無月経
1ヶ月以上後から紫斑、皮膚線条、皮膚萎縮
ステロイドミオパチー(10 mg以上)
長期的に骨壊死(20 mg以上 x 1ヶ月以上)
骨粗鬆症(5 mg以上 x 3ヶ月以上)
白内障(長期使用で 5 mgでもリスクあり)
緑内障(10 mg以上)

良くある副作用について説明していきます。

感染症と予防

ステロイドに限らず、免疫抑制剤を使用していると身体の免疫力(菌に対する抵抗力)が低下してしまうため、感染しやすくなります。

通常は感染しないようなニューモシスチス肺炎といってカビの一種が肺に感染することがあります。

重症になることが多く、高齢者がかかると致死的になることがあります。

そのため、ステロイド内服中、高齢者、肺の病変をもっているなどの感染リスクのある方に感染予防のために抗生剤(ダイフェン®︎やバクタ®︎)を予防内服して頂いています。不定期になってしまいますが、週3回 1錠内服して頂くことが多いです。

予防内服して頂くことによってかなり感染を予防することが可能ですので、処方されている方は忘れずに継続して内服するようにして下さい。

また、感染予防のために口腔内の環境を整えるようにして下さい。口からばい菌が肺に流れることがあります。歯磨きと定期的な歯科受診をお勧め致します。

骨粗鬆症と予防

ステロイドによる骨粗鬆症について別のコラムでも説明致しましたが、ステロイドは骨やカルシウムの吸収に関わるため、骨を脆くします。

骨粗鬆症となると、圧迫骨折や大腿骨頸部骨折などを来たし、生活の質が非常に下がることになります。

そのため、ステロイドの容量や年齢などによってはビスホスホネート製剤やビタミンDなどの内服による骨粗鬆症予防を行います

それに加えて予防として

  • 日光浴
  • 適度な運動
    が大切です。

ビタミンDは日光浴によって体内で生成することが出来ますので、1日30分は外に出て太陽を浴びて下さい。

また、骨を育てるには適度な刺激が大切ですので、ウォーキングなどの適度な運動を行って下さい。

糖尿病

ステロイドはストレスホルモンですが、身体が頑張ろうとして血糖値が上がってしまいます。

長期間ステロイドの影響が続くと糖尿病となってしまう場合があります。

そのため、ステロイド使用中の方は定期的に

  • 血糖値
  • HbA1c

を検査します。

血糖値(≧126mg/dl)、HbA1c(≧6.5)が糖尿病の診断の基準値となります。

軽度であれば運動・食事療法を行いますが、改善が乏しく悪化してくるようであれば内服治療を行います。

大腿骨頭壊死

ステロイドによる大腿骨頭壊死については別のコラムで挙げさせて頂きました。

大量のステロイドを使用すると大腿骨頭壊死のリスクがあります。早期の発見が大切になりますので、股関節痛がある場合はすぐにご相談下さい。

股関節痛が生じた段階ではすでに進行している可能性もあるため、大量ステロイド使用した患者さんは股関節レントゲンなどによるフォローが好まれます。

ムーンフェイス

ステロイドを長期に使用すると顔の浮腫が強くなり、これをムーンフェイスと言います。

若い女性にとっては気になってくるものです。

可能な限りステロイドを減量していくことによって、ムーンフェイス自体も改善してきます。

高脂血症

ステロイドが原因でコレステロールの値が上昇することがあります。

必ずしも治療が必要ではありませんが、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高くなってくると血管の動脈硬化などのリスクになってきます。

性別、年齢などによる血管リスクに応じて内服治療を開始します。

白内障・緑内障

ステロイドの長期使用では白内障や緑内障の原因となってしまいます。

目の異常が出てきた場合にはかかりつけ医か眼科に早めご相談下さい。

まとめ

ステロイドは関節リウマチや膠原病の治療においてかかせないものです。

しかし副作用がありますので、ステロイドの減量や定期的な検査を行う事で早期発見・治療に努める必要があります。

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