「ステロイド」はリウマチや膠原病の患者さんには切っても切り離せないものです。

リウマチの治療において、副作用の観点から可能なかぎりステロイドの中止を目指していくことになります。

そこで、今回はステロイドの特徴と副作用について説明したいと思います。

目次

ステロイドって何?

ステロイドは昔からリウマチを初めとする膠原病の治療で使われてきました。

膠原病では身体の免疫の異常によって多彩な症状を来しますが、ステロイドは免疫を抑制することで症状を緩和してくれます。

関節リウマチの患者さんの場合では、発症時の関節炎が強く、日常生活に支障があるような場合、早期の緩和のためにステロイドの力を借りることがあります。

これはリウマチ治療薬の効果が出てくるのに1-2ヶ月かかることが多く、一方でステロイドの効果が出るのは早いためです。

その他、リウマチ以外の膠原病の治療においてはステロイドパルスといって大量のステロイドによる治療を行うことがあります。リウマチ・膠原病の治療においてはステロイドは患者さんの異常な自己免疫を抑えてくれる武器です。

リウマチにおいてはステロイドは5mgや多くても10mg程度と比較的少量の投与で十分効果があります。

しかし、良いことばかりではありません。強力な免疫抑制作用によって身体に負担がかかり、副作用が出てきます。

そのため、リウマチにおいてはステロイドは0(ゼロ)を目指す事が基本です。

ステロイドの副作用と発現時期

開始当日から不眠、うつ、精神高揚、食欲亢進
数日後から血圧上昇(10 mg以上)
浮腫、電解質異常
2〜3週間後から副腎抑制、血圧上昇
1ヶ月後から易感染性(10 mg以上で用量が多くなるほどリスク上昇)
中心性肥満・ムーンフェイス、多毛、ざ瘡(ニキビ)
無月経
1ヶ月以上後から紫斑、皮膚線条、皮膚萎縮
ステロイドミオパチー(10 mg以上)
長期的に骨壊死(20 mg以上 x 1ヶ月以上)
骨粗鬆症(5 mg以上 x 3ヶ月以上)
白内障(長期使用で 5 mgでもリスクあり)
緑内障(10 mg以上)

感染症

ステロイドに限らず、免疫抑制剤を使用していると身体の免疫力(菌に対する抵抗力)が低下してしまうため、感染しやすくなります。

通常は感染しないようなニューモシスチス肺炎というものを発症することがあります。

重症になることが多く、高齢者がかかると致死的になることがあります。

そのため、ステロイド内服中の方で感染リスクのあるような方には感染予防のために抗生剤(ダイフェン®︎やバクタ®︎)を予防内服して頂いています。

予防内服して頂くことによってかなり感染を予防することが可能ですので、処方されている方は忘れずに継続して内服するようにして下さい。

また、感染予防のために口腔内の環境を整えるようにして下さい。口からばい菌が肺に流れることがあります。歯磨きと定期的な歯科受診をお勧め致します。

骨粗鬆症

ステロイドによる骨粗鬆症についてコラムでも説明していますが、ステロイドは骨やカルシウムの吸収に関わるため、骨を脆くします。

骨粗鬆症となると、圧迫骨折や大腿骨頸部骨折などを来たし、生活の質が非常に下がることになります。

そのため、ステロイドの容量や年齢、使用期間などによってはビスホスホネート製剤やビタミンDなどの内服による骨粗鬆症予防を行います

また骨粗鬆症予防として

  • 日光浴
  • 適度な運動

をお勧めします。

ビタミンDは日光浴によって体内で生成することが出来ますので、1日30分は外に出て太陽を浴びて下さい。

また、骨を育てるには適度な刺激が大切ですので、ウォーキングなどの適度な運動を行って下さい。

糖尿病

ステロイドはストレスホルモンですが、身体が頑張ろうとして血糖値が上がってしまいます。

長期間ステロイドの影響が続くと糖尿病となってしまう場合があります。

そのため、ステロイド使用中の方は定期的に

  • 血糖値
  • HbA1c

を検査します。

血糖値(≧126mg/dl)、HbA1c(≧6.5)が糖尿病の診断の基準値となります。

軽度であれば運動・食事療法を行いますが、改善が乏しく悪化してくるようであれば内服治療を行います。

大腿骨頭壊死

ステロイドによる大腿骨頭壊死についてはコラムで詳しく説明しています。

大量のステロイドを使用すると大腿骨頭壊死のリスクがあります。早期の発見が大切になりますので、ステロイド使用歴のある方で股関節痛がある場合はすぐにご相談下さい。

股関節痛が生じた段階ではすでに進行している可能性もあるため、大量ステロイド使用した患者さんは股関節レントゲンなどによるフォローが好まれます。

ムーンフェイス

ステロイドを長期に使用すると顔の浮腫が強くなり、これをムーンフェイスと言います。

若い女性にとっては気になってくるものです。

可能な限りステロイドを減量していくことによって、ムーンフェイス自体も改善してきます。

高脂血症

ステロイドが原因でコレステロールの値が上昇することがあります。

必ずしも治療が必要ではありませんが、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高くなってくると血管の動脈硬化などのリスクになってきます。

性別、年齢などによる血管リスクに応じて内服治療を開始します。

白内障・緑内障

ステロイドの長期使用では白内障や緑内障の原因となってしまいます。

目の異常が出てきた場合にはかかりつけ医か眼科に早めご相談下さい。

まとめ

ステロイドは関節リウマチや膠原病の治療においてかかせないものです。

しかし副作用がありますので、ステロイドの減量や定期的な検査を行う事で早期発見・治療に努める必要があります。

>>ステロイドについてのコラムはこちら

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