今回は骨粗鬆症治療における、治療薬の種類とその効果について説明します。

目次

どうして骨粗鬆症になるの?

イベニティ.jpより引用

骨は常に、古い骨を壊して、新しい骨を作るというリモデリングと呼ばれる骨代謝を繰り返して健康な骨を保っています。

「破骨細胞」というものが骨を壊し(骨吸収)、「骨芽細胞」というものが新しい骨を作り出します(骨形成)。

そのバランスが崩れて

  • 骨が壊れすぎる(骨吸収の亢進)
  • 新しい骨を作る量が少ない(骨形成の低下)

ことが原因で骨粗鬆症になってきます。

骨粗鬆症治療薬の種類について

骨粗鬆症の治療薬は、この崩れた骨の代謝バランスを改善することで骨を強くしていきます。

お薬の種類としては大きく分けると以下に分けられます。

お薬の種類商品名使用方法投与間隔
ビスホスホネート製剤ボナロン
ベネットなど
内服(錠剤、ゼリー)
点滴
1日1回
週1回
4週(1ヶ月)に1回
デノスマブプラリア皮下注射半年に1回
テリパラチドテリパラチド
フォルテオ
皮下注射毎日(家)
週2回(家)
週1回(病院)
ロモソズマブイベニティ皮下注射1ヶ月に1回(病院)
SERMビビアント
エビスタなど
内服1日1回
ビタミン剤
(vitD、Ca剤、vitK2)
アルファカルシドール
エディロールなど
内服1日1回
骨粗鬆症薬の種類

に分けられます。

物によって、内服、点滴、皮下注射のものがあります。また、注射に関しては家で出来るもののあれば、病院に来て頂いて注射するものもあります。

作用で分けると

  1. 骨吸収抑制剤 骨が溶けるのを抑えて作った骨をためこむ
  2. 骨形成促進剤 新しい骨をたくさん作り出す

の2つに分類されます。

ここからは一つひとつの薬剤について作用と注意点、効果について説明します。

ビスホスホネート製剤

作用:骨吸収抑制

投与方法:毎日、週1回、月1回に朝一に内服、もしくは点滴と様々

ビスホスホネート製は破骨細胞(骨を溶かす細胞)に作用して細胞が力を発揮出来ないようにすることで、骨が溶けることを抑制します。

一般的に非常によく使われている薬剤です。

また飲み薬にはゼリーのものがあり、高齢者に使いやすい薬剤です。

注意点としては、吸収に時間がかかるため、コップ1杯の水とともに服用し、飲んでから30分は横にならないようにして頂きます。その他 副作用として、顎骨壊死、非定型骨折が指摘されています。

効果ですが代表的なアレンドロネート(ボナロン®)は3年間継続することで、腰椎骨密度が9.2%上昇し、椎体骨折・大腿骨近位部骨折ともに50%程度もリスクを軽減すると言われています。

SERMと比較するとより強力な効果を得られることが分かります。

デノスマブ(商品名:プラリア)

作用:骨吸収抑制

投与方法:皮下注射

デノスマブはRANKLというものに作用して破骨細胞の分化や活性化を抑制する薬剤になります。

デノスマブ(商品名:プラリア)は半年に1回注射するお薬になります。負担を軽減することが出来るが可能な薬剤です。

副作用として低カルシウム血症と顎骨壊死に注意が必要です。

投与時にはカルシウム血症の防止のためにカルシウム製剤やビタミンDの内服を併せてして頂いています。

2年間の投与で骨密度が腰椎で9.1%、大腿骨近位部で4.6%の上昇と非常に優秀なお薬です4)骨折リスクを42%も低下させると報告されています。

ビスホスホネートと同等かそれ以上の効果がありますビスホスホネート製剤とは異なる作用ですので、ビスホスホネート製剤を使用していて効果が不十分な場合にこの薬剤に変更することでより効果が得られる事があります。

テリパラチド(商品名:フォルテオ、テリボン)

作用:骨形成促進剤

投与方法:皮下注射 毎日or週2回皮下注射(家)、週1回注射(外来)

投与期間:2年間のみ

適応:重症な骨粗鬆症

テリパラチドは副甲状腺ホルモンと言われるものですが、骨芽細胞に作用することで骨形成を促進し、骨密度を上げる作用を持っています。骨形成促進剤にあたります。

骨吸収促進剤(ビスホスホネート、デノスマブ)の前にテリパラチドを使用するとより効果が得られるため、先に使用することをお勧めします。

患者さんにとっては手間にはなるのですが、骨折予防効果が非常に強く、テリパラチドとロモソズマブは重症な骨粗鬆症の症例に推奨されるお薬です。

また骨折の時の骨癒合促進にも用いられるお薬で、難治性骨折の治療で使用することがあります。

注意点としては、お薬の値段が高く1割負担の方で約5000円/月になり、人生の中で投与可能な期間が2年間のみです。

効果ですが、テリパラチドは1年間使用するだけで、骨密度が腰椎10%、大腿骨近位部2%も上昇させてくれる非常に優秀なお薬です。

骨折リスクも5-60%軽減させると言われています。

ビスホスホネート製剤と比べても非常に優秀な効果があります。

基本は家での皮下注射のものになりますが、本人がしっかりしている方、もしくは家族と同居している方であれば問題なく使用することが出来る方が多いです。自分で注射すると聞いて躊躇される方も多いのですが、よく出来ていますので手技は意外と難しくありません。

私の場合は重症の骨粗鬆症にあたる患者さんで、しっかりしていらっしゃる患者さんには一番に勧めているお薬です。1ヶ月間ためして頂いたら、大抵の方が慣れて頂けます。

特に最初が不安かと思いますが、丁寧に手技方法について説明・練習頂きますし、動画もありますのぜ、是非試して下さい。

ロモソズマブ(商品名:イベニティ)

作用:骨吸収抑制+骨形成促進

投与方法:皮下注射 月1回

適応:重症な骨粗鬆症

最近新しく出てきたお薬で、2019年3月に日本で販売開始となったお薬です。

骨吸収抑制+骨形成促進の両方に作用し、非常に優れた骨粗鬆症治療薬です。

費用は1割負担で約5000円/月程度になります。

投与可能期間は1年となっていますが、一定の期間を開けて、骨折リスクが高い患者に対しては再投与も可能となっています。

効果ですが、1年間の使用でビスホスホネート(アレンドロネート)使用している人と比較して、椎体骨折のリスクを36%も低下させ、なかなか上がりにくい大腿骨近位部の骨密度を1年間で2.6%上昇させると言われています。

SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)

作用:エストロゲン受容体 骨代謝のパランス改善

投与方法:内服 毎日

女性ホルモンが骨に対してのみ効くように改良されたのがSERMというお薬です。

閉経後の女性ではエストロゲンとよばれる女性ホルモンが減り、それが原因で骨が溶け(骨吸収が亢進)することで骨粗鬆症が進行します。

SERMの効果としては、3年で腰椎・大腿骨の骨密度を2%程度上昇させ11)、椎体骨折リスクを40%減少させると報告されています。

若い閉経後の女性で骨粗鬆症が軽度な患者さんに良い適応です。

ビタミン剤

  • カルシウム剤

 胃腸管切除、小食、続発性副甲状腺機能亢進症などによって、カルシウムが不足している場合にはカルシウム薬の投与を行います。

 基本的にはその他の薬剤と一緒に用います。

 カルシウム剤を用いるだけでも、骨密度を1~2%程度上昇させ、骨折リスクを下げると言われています。

  • ビタミンD

ビタミンDは日光にあたることで、身体の中で作られるビタミンです。

ビタミンDは腸からのカルシウムの吸収を促進、骨吸収の抑制、副甲状腺ホルモンの調整などによって、骨の代謝に作用することで骨を強くしてくれます。

効果の報告は様々ではありますが、骨密度を上昇させて脆弱性骨折のリスクを30%程度抑制すると言われています

また転倒リスクも20%程度下がると言われており、筋骨格系へも作用して骨折リスクを下げてくれる可能性があります。

ビタミンDが不足している場合にはビスホスホネート製剤の効果不十分となることが多いため、併用しています。