リウマトレックス®

関節リウマチと診断を受けた場合には、メトトレキサートMTXは予後不良因子がある場合には第一に検討される薬剤になります。リウマトレックスは商品名になります。

メトトレキサートは関節リウマチの治療の肝となる薬剤です。

しかし、メトトレキサートの使用の際に注意するポイントがあります。

今回はメトトレキサートの使用方法と副作用、注意点について説明致します。

目次

メトトレキサートは関節リウマチ治療におけるアンカードラッグ

メトトレキサートはガイドライン上においても関節リウマチ治療における中心的な薬剤とされています。

メトトレキサートは

  • 関節の炎症を抑える効果が高い
  • 関節破壊の予防効果がある
  • 長期的にも効果が比較的持続する
  • 安価である

であり、診断された場合に第一に検討するべき薬剤となっています。

関節リウマチに対する効果はもちろんのこと、メトトレキサートは生物学的製剤と比較すると非常に安価です。

これは長期的な治療において患者さんの負担を減らしてくれますので大切なポイントです。

ただし、リウマチ薬の特徴ではありますが、効果が出てくるのが少し時間がかかります。

他のリウマチ薬よりは早いですが、4週間程度は効果が出てくるのに時間がかかります

そのため症状が強い場合にはそこまでの間、ステロイドや鎮痛薬など速効性のある薬剤を用いて痛み和らげる必要があります。

メトトレキサートの使用方法・容量

通常成人の場合、1週間に4~8mgから服用を開始します。

年齢、腎機能、肺疾患の有無などに応じて初期の容量を調整します。

若い方やリウマチによる症状が強い(活動性の高い)方は8mgから開始します。

一方で高齢者や腎機能が悪い方は副作用が出やすい傾向にあるため、4mgや6mgから開始します。

2~4週間ごとに2~4mg程度増量していき、効果をみていきます。最大量で1週間に16mgになります。

メトトレキサートは内服方法が特殊です。皆さんが思い浮かべる内服薬とは異なり、メトトレキサートは週に1-2日で決まった曜日に内服します。

メトトレキサートの内服方法

日本では高齢者の関節リウマチが増えつつあります。年々このような特殊な内服方法が難しくなってくることがあるため、家人の強力が得られるか、本人がしっかりしているのか確認していく必要があります。

メトトレキサート使用上の注意点

メトトレキサート使用中には以下の症状が出てきた場合にはご注意下さい。

注意すべき症状
  • 発熱
  • 咳、痰、息切れ、呼吸困難
  • 口内炎
  • だるさ

といった症状がある場合にはメトトレキサートを一旦中止の上、まずは主治医にご相談下さい。

ここからはメトトレキサートの作用や副作用について詳しく説明します。

メトトレキサートの作用

メトトレキサートは葉酸代謝拮抗薬です。

葉酸は代謝されて活性型となりますが、これは細胞が活動する上で必要なものです。

関節リウマチでは、滑膜細胞やリンパ球が関節で炎症を起して、関節破壊を進行させます。

葉酸の代謝を阻害することによって滑膜細胞やリンパ球の活動・増殖を抑え、炎症を抑える作用があります。

一方で、正常な細胞の代謝も阻害するため、それに伴って副作用が出てくることがあります。

副作用予防 葉酸補充

副作用軽減・予防のために葉酸製剤「フォリアミン」を内服して頂いています。

「フォリアミン」によって予防・軽減出来る副作用としては以下のようなものになります。

・消化器症状(下痢、悪心、口内炎)

・肝障害

・骨髄抑制

以前はフォリアミンは一般的には1週間にメトトレキサート8mgを超える場合や高齢者、腎臓の悪い方、複数のNSAIDsを併用中、体が小さい方など副作用が出やすい場合に併用することが多かったのですが、2023年のMTXガイドラインでは、副作用予防のために基本的にフォリアミンの併用が推奨されています。

フォリアミンはメトトレキサートの最終服薬の24~48時間後に内服して頂いています。

通常の葉酸量は5mg/週(フォリアミン1錠)で、それでも副作用が出てきたり、改善されないケースなどに10mg/週に増量します。

それでも副作用が緩和されないようであれば、メトトレキサート自体の量を減らすことがあります。

使用上の禁忌

メトトレキサートは副作用の観点から次のような方には使用することが出来ません。

妊婦、妊娠している可能性のある人、授乳中の人

 胎児の形成障害を誘発する可能性があり、また母乳にも移行するため授乳中にも使用出来ません。

メトトレキサートによるアレルギー症状

 薬剤に対する過敏症の既往がある場合は使用出来ません。

骨髄障害(白血球、血小板が少ない)

 骨髄の働きが弱い場合はメトトレキサートがさらに悪化させる可能性があります。

肝障害

 軽度であれば問題ないことが多いですが、重度の肝障害がある場合には使用出来ません。

 また、活動性のあるウイルス肝炎、肝硬変や重度な肝障害をお持ちの方はさらに悪化させる可能性があります。

 そのため、事前に血液検査でB型肝炎やC型肝炎をお持ちでないか検査を行い、リスクを把握します。

腎機能障害

 腎機能が悪いとメトトレキサートが身体の中にたまってしまい、副作用の危険が高くなります。

 度合いに応じて、少量から使用することがあります。

 透析患者ではメトトレキサートは使用出来ません。

副作用

吐き気・おなかの痛み・下痢・口内炎などの消化器症状

 メトトレキサートによって、口や消化管を保護する粘膜が傷害されることが原因です。

 対処法としては、メトトレキサートを減量することや、ステロイド軟膏、制酸剤等の胃薬の併用があります。

発疹などの皮膚症状

 メトトレキサートによるアレルギー(過剰な免疫反応)症状です。原則として、メトトレキサートを中止します。

肝障害

 肝臓の数値 AST、ALT、ALPといった数値が上昇することがあります。そのため採血で適宜モニタリングが必要です。

 上昇してきた場合にはメトトレキサートを減量します。また、必要に応じて原因精査を行います。

 近年はメトトレキサートによるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)というものも言われています。

骨髄抑制

 白血球、赤血球、血小板の機能が低下します。

 メトトレキサートの減量・中止を行います。重篤な場合には活性型葉酸「ロイコボリン」を緊急で連日使用します。

間質性肺炎

 間質性肺炎はMTXを開始して2~3年以内に発生することが多く、一旦肺が繊維化すると元に戻りにくいため、早期発見が重要です。

 咳、痰、呼吸苦といった症状が出た場合は早急に医療機関に受診して下さい。

 メトトレキサートを中止し、必要に応じてステロイド治療を行います。

感染症

 発熱、咳、痰などが出てきた場合は早急にご相談下さい。

 原因に応じて抗生剤による治療を行います。

 また、感染のリスクが高い患者さんには抗生剤の予防内服を行って頂いています。

脱け毛

 メトトレキサートの減量・中止します

メトトレキサート関連リンパ腫

 メトトレキサートの副作用として、「リンパ腫」があります。

 内服開始してから2~9年くらいで発症することが多いと言われています。

 リンパ腫とは、身体のリンパ節が腫れて腫大する病気です。

 メトトレキサートの中止や化学療法を行う場合があります。

まとめ

メトトレキサートは関節リウマチの治療において肝となる薬剤です。

使用上の注意点や副作用はありますが、関節リウマチの治療において効果と副作用のバランスの取れた有効な薬剤です。それに加えて安価で費用も安いことから、アンカードラッグとして使用されています。

患者さんの背景に合せて容量を調節し、採血によるモニタリングや副作用の早期発見・治療に努めています。

>>リウマチ学会の案内もご参照下さい

>>メトトレキサートの皮下注射「メトジェクトⓇ」製剤についてのコラムはこちら

>>メトトレキサート2023年 ガイドラインについてはこちら