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3つの「寛解」
関節リウマチは適切な治療を行うことで、「寛解」を目指せる疾患になりました。
「寛解」は3つあります。
- 臨床的寛解:関節の痛みや腫れなどの症状が落ち着き、採血上も炎症の数値が低い状態
- 構造的寛解:レントゲンで関節破壊の進行が止まっている状態
- 機能的寛解:日常的な労作に問題がなく、身体機能が維持されている状態
この3つの寛解をめざすことが目標となります。
臨床的寛解についてはVAS、DAS28、CDAI,SDAIといったもので計測します。関節の痛み・腫脹の数や患者さんと医者側からみた善し悪しによって決まってきます。
構造的寛解はレントゲンの評価によって、半年~1年前のレントゲンと比較して関節破壊が進んでいないことを指します。具体的には、骨と骨との隙間(関節裂隙=軟骨)が減っていないか、また骨が壊されていないか(骨びらん)を手・足の各関節で点数化して評価します。mTSS scoreというもので評価して、1年前のレントゲンでの点数と比べ、1年間で点数の増加が0.5以下の状態を構造的寛解と言います。
機能的寛解というのは、HAQと言われる日常動作に関わる動作について評価して点数付けします。HAQ<0.5が寛解を指します。つまり、日常動作にあまり支障がない状態を指します。
これらを目標に治療を行っていきますが、達成出来ればほとんどリウマチであることを自覚することなく日常生活を送ることの出来る状態です。3つとも達成することはなかなか容易ではありませんが、そのような状態にすることを目標として治療を行っていきます。
3つの「寛解」を達成するために
2010年にACR/EULARが目標達成に向けた治療(treat to target: T2T)に向けての治療勧奨がなされました。
高血圧や糖尿病といった疾患の治療では、血圧や血糖値などを指標に治療が行われます。それと同様に、リウマチ治療でも「寛解」という目標に向けて治療を行っていきます。
関節リウマチの活動性を抑える(臨床的寛解)ことが出来れば、関節破壊も進行せず(構造的寛解)、日常生活にも支障がなく送る事が出来ます(機能的寛解)。
そのため、まずは臨床的寛解を目指し、関節の痛み・腫れを抑え、疾患活動性を抑えることが治療の第一目標となります。これによって、長期的な予後の改善が可能となります。
これには薬物療法が重要となってきます。メトトレキサートを初めとしたお薬を使用し、抑えきれない場合には生物学的製剤やJAK阻害薬を使用するのが一般的な流れになります。
薬物治療で関節リウマチを十分に抑えることが出来ても機能的寛解が得られないような部分は手術やリハビリテーションによって補っていく必要があります。
関節の破壊が一度起ったものは、薬物治療で落ち着いても改善することは出来ません。関節破壊が進行した関節に対しては手術によって機能を回復できます。例えば膝であれば人工膝関節置換術が行われることがあります。
リハビリも非常に大切で、関節リウマチの炎症やステロイドなどによって弱った筋力を回復させることによって身体能力を改善させることが可能です。
このように、薬物治療を中心に、手術やリハビリを上手く組み合わせていくことによって「3つの寛解」を維持していくことになります。
まとめ
まずは臨床的寛解を目指しながら、その先にある機能的寛解、機能的寛解も達成できているか適宜確認していくことによって、3つの寛解を達成することを目標としています。
寛解に到達してからも、その状態を維持するために適切な治療を継続すること、そして患者さんと医療者側で共通の認識をもって治療を行っていくことでより良い治療に繋がる事と考えています。