骨折

【骨折・骨粗鬆症】大腿骨頸部骨折の診断・治療、予防効果について

患者

転倒して、股関節が痛くて動けません
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骨折しているかもしれません。そのまま安静にしておいて下さい。
すぐに向かいます。

目次

高齢者と骨粗鬆症

高齢になると骨粗鬆症のリスクが高まり、軽い転倒でも大腿骨骨折を引き起こすことがあります。

特に大腿骨頸部骨折は強い痛みを伴い、歩行困難となるため入院と手術が必要です。

リハビリを経ても自力歩行が困難になることが多く、寝たきりや介護が必要になることがあります。そのため、予防が非常に重要です。

尻もちによる骨折

高齢者は、尻もちをつくだけで大腿骨近位部骨折(頸部骨折、転子部骨折)を起こすことがあります。

若年者では高エネルギー外傷(例:交通事故)が原因ですが、高齢者では骨粗鬆症が背景にあり、低エネルギーの外傷でも骨折しやすくなります。

大腿骨頸部骨折とは

大腿骨近位部骨折は、大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折に分類されます。

大腿骨頸部骨折は、股関節付近の骨折で、激しい痛みと動けなくなる症状が特徴です。

基本的に手術が必要であり、リハビリに長時間を要します。寝たきりや認知症の進行を招くことがあり、生命に直結する重大な骨折です。

大腿骨骨折の増加

日本では2012年に年間約17万人が大腿骨近位部骨折を経験し、特に女性に多く見られます1)

高齢化社会の進行に伴い、骨折患者は増加し続けると予想されています。新規の大腿骨近位部骨折の患者数は2020年に24万人、2030年に29万人、2040年には32万人に達すると言われています。

大腿骨骨折は死に直結します

大腿骨頸部骨折をきたした方の1年以内の死亡率は日本で10%と言われていて、非常に死亡率が高い疾患です2)。海外では30%程度という報告もあります。

高齢の方が多く多数の疾患を抱えていることが多いということもありますが、骨折を契機に心身が弱りきってしまい誤嚥性肺炎やその他の心不全などの疾患を来してしまうことが原因です3)

大腿骨頸部骨折は単なる骨折ではなく、生命に関わる骨折です。

大腿骨頸部骨折の診断

高齢者が転倒して動けない場合、大腿骨頸部骨折を疑います。

  • レントゲン
  • CT
  • MRI

レントゲンとCTで基本的に診断できますが、ズレが少なく分かりにくい場合にはMRIが有用です。MRIでは98%の感度で骨折を確認できます4)

治療方法

治療は主に手術であり、骨接合術や人工骨頭置換術が行われます。

① 骨接合術(自分の骨をそのまま使い、金属で固定します)

② 人工骨頭置換術・人工股関節全置換術(自分の骨を取り除き、人工の物に置き換えます)

骨のずれが少ない場合は骨接合術、大きい場合は人工骨頭置換術が選択されます。手術の負担や合併症のリスクは骨接合術の方が少ないです。

ずれが少ない場合は手術ではなく保存的療法(そのまま治す)方法もありますが、その後にさらなるずれ(転位)や偽説関節を来すために、現在は保存治療は行わない方がよいと言われています5)

退院までの期間

手術を受ける病院(急性期病院)での平均入院期間は約37日と言われています7)

その後、多くの場合、リハビリ病院や施設に転院が必要です。

施設や家に帰れたからといって今まで通りにはいきません。退院後も歩行能力の低下が見られ、環境整備や介護が必要になることが多く見られます。

歩行能力が下がってしまって、今までは普通に歩けていたのにもかかわらず杖を使ったり、歩行器という道具を使わないと歩けなくなります。

家に帰るために改修工事が必要となることがありますし、自分での食事やそのほかの日常の行動が出来なくなり、お風呂や着替えなどにも介護を要するかもしれません。

大腿骨頸部骨折の予防方法

  • 骨粗鬆症治療:骨折する前に治療を開始します。
  • 下肢筋力アップ:通院・訪問リハビリテーションを利用します。
  • 環境整備:手すりやバリアフリー化を進め、転倒を防ぎます。介護保険で補助が出ることがあります

ヒッププロテクターなどもありますが、なかなか継続が難しく予防に使うのは難しい点があります。

なにより転倒しない事が大切です。

骨折後の骨粗鬆症治療について

骨折したことがない方の場合は骨密度を調べて骨粗鬆症と診断します。

大腿骨頸部骨折では、骨折した瞬間に骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と診断されます

  • 治療を行っていない方はすぐに骨粗鬆症治療を開始
  • 治療を行っていたが、それでも骨折した場合は骨粗鬆症治療を強化

する必要があります。

骨折後に骨粗鬆症治療を行うことで、骨折を半減できたという報告があります。

「骨粗鬆症を持つ大腿骨頸部骨折患者では再び骨折するリスクが高いことから、専門的な治療・指導管理による骨折予防が重要」であるため、現在 国全体としても骨折後の骨粗鬆症治療を進める流れになっています。

まとめ

大腿骨頸部骨折は回復に時間がかかり、健康寿命を短くする重大な疾患です。予防が非常に重要であり、特に女性は骨粗鬆症のリスクが高いため、早期の骨密度測定と治療が推奨されます。健康で元気に過ごすために、整形外科での相談をお勧めします。

参考文献

1. Orimo H, et al. Hip fracture incidence in Japan: Estimates of new patients in 2012 and 25-year trends. Osteoporos Int 2016;27(5):1777-84.

2. Sakamoto K, et al. Report on the Japanese Orthopaedic Association’s 3-year project observing hip fractures at fixed-point hospitals. J Orthop Sci 2006;11(2):127-34.

3. Petersen MB, et al. Factors affecting postoperative mortality of patients with displaced femoral neck fracture. Injury 2006;37(8):705-11.

4. Cabarrus MC, et al. MRI and CT of insufficiency fractures of the pelvis and the proximal femur. AJR Am J Roentgenol 2008;191(4):995-1001.

5. Cserháti P, et al. Non-operative or operative treatment for undisplaced femoral neck fractures: a comparative study of 122 non-operative and 125 operatively treated cases. Injury 1996;27(8):583-88.

6. Fu MC, et al. Surgery for a fracture of the hip within 24 hours of admission is independently associated with reduced short-term post-operative complications. Bone Joint J 2017;99-B(9):1216-22.

7. Hagino H, et al. Survey of hip fractures in Japan: Recent trends in prevalence and treatment. Journal of Orthopaedic Science 2017;22(5):909-14.

8. Peterson MGE, et al. Measuring Recovery after a Hip Fracture Using the SF-36 and Cummings Scales. Osteoporosis International 2002;13(4):296-302.

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