急に膝の痛みが出てきて、腫れています
痛くて歩けません
急な関節炎の場合は痛風や偽痛風の事があります。
レントゲンと関節液の検査をして原因を調べてみましょう。
目次
はじめに
急性の関節痛を来す疾患の一つに「偽痛風(ピロリン酸カルシウム血症沈着症)」といわれる疾患があります。
「痛風」という言葉は世間に知れ渡っていますので、皆さん耳にしたことはあるかと思いますが、「偽痛風」という言葉はあまり耳にしないかもしれません
高齢者の方が急に関節の痛みや腫れ、頸部痛、また熱が出てきたときに考える疾患の1つです。
偽痛風自体は炎症鎮痛剤で良くなる事が多いのですが、発熱のみの訴えのこともあり惑わされることがあります。
今回は偽痛風について、特徴と診断方法、治療について説明致します。
偽痛風とは
偽痛風はピロリン酸カルシウム(calcium pyrophosphate dehydrate:CPPD)の結晶が関節内外に沈着して、その結晶に対して炎症反応を来し、腫れや痛み、発熱を来す疾患です。
比較的高齢者に起ることが多く、1カ所の関節炎や発熱を来した場合に考える疾患です。
膝関節、手関節、足関節、肘関節、肩関節、股関節、足関節などの幅広い関節で単関節炎(1カ所のみ)を発症する事が多いです。ただ時折 指の関節や頸椎などにも炎症を来たして発熱などの全身症状を来すことがあります。
偽痛風と名前が似ていて、症状も良く似ている痛風もありますが、痛風については別の記事をご参照下さい。
検査・診断
- レントゲン検査(+CT検査)、エコー検査
- 関節穿刺
- 関節液検査(培養、結晶)
- 血液検査
を行います。
レントゲン、エコー検査
関節の中に石灰化沈着を認めています。関節液の性状からも偽痛風が一番考えられます。
痛風を合併していることがあるので関節液を検査に出して確認します。
関節腫脹・疼痛がある場合には骨折などその他の骨病変が隠れている可能性がありますので、レントゲン検査を行います。レントゲンでは骨病変のみではなく、関節内に石灰化沈着を確認することで偽痛風らしさが確認出来ます。この石灰化沈着は関節内にCPPDがあることを示しています。
膝関節の偽痛風であったとしても膝関節内には石灰化沈着が見られないことがあります。その場合でも、手関節や恥骨結合(骨盤)といった他の部位に石灰化沈着を確認することで偽痛風の診断の補助になることがあるため、それらの部位のレントゲンを撮像することがあります。
また、エコー検査では関節内に結晶沈着を認めることがあり、エコーによる関節内の関節も有用ですのでレントゲンと合せて併用します。
関節穿刺、関節液検査
関節穿刺は痛風の場合と同様に必須の検査方法です。
レントゲンも参考にしますが、最終的な偽痛風の診断方法としては関節穿刺を行って関節液を採取することで行います。
偏光顕微鏡で関節液の中に偽痛風に特徴的なCPP結晶を確認することで診断します。
ただし、痛風結晶を一緒に認めることがあり、痛風発作なのか偽痛風なのか診断に悩むことがあります。
また、急性単関節炎を来す疾患として偽痛風以外に
- 痛風
- 化膿性関節炎
- 関節リウマチ
- 変形性関節症 など
の可能性があります。
細菌感染による化膿性関節炎の場合には重篤な経過をたどる可能性がありますので、培養検査によって化膿性関節炎を除外しておく必要があります。
関節リウマチは病気はやや緩徐な発症のことが多いため、比較的鑑別しやすいものの、検討は必要です。炎症の部位や関節内・外かなどについて評価しつつ、注意して診ています。
変形性関節症との合併はしばしば認めます。
血液検査
CRP、赤血球沈着速度(ESR)、白血球数といった炎症反応が高値を示します。
また偽痛風では特発性といって原因がはっきりとしないことが多いのですが、60以下で発症するような場合には原因となる疾患がないか確認しておく必要があります。
副甲状腺機能亢進症、ヘモクロマトーシス、低マグネシウム血症などが原因としてありますので、検索目的に血清マグネシウム、カルシウム、ALP(アルカリホスファターゼ)、フェリチン、血清鉄、PTHといった項目を調べます。
急な首の痛みは偽痛風かも(crowned-dens 症候群)
CPP結晶は脊椎にある椎間板や靱帯に沈着することがあります。
有名な疾患として頸椎C2歯突起周囲にCPP結晶が沈着して、
- 急な強い頸部痛
- 首をまわせない
- 発熱
などの症状を来すcrowned-dens症候群と言われる疾患があります。
非常に痛みが強く、採血で炎症反応も強くでるため、髄膜炎・敗血症・リウマチ性多発筋痛症・椎間板炎などの疾患と間違われることがあります。
頸椎の部分には膝などとは異なる関節穿刺を行って直接CPP結晶を確認することでの診断は困難です。また頸椎レントゲンでは異常所見に乏しいことが多く診断が困難であり、CT画像が診断に有効です。
偽痛風の治療
ロキソニンの内服で経過を見てみましょう。
大半の場合は1週間程度で良くなります。感染でないことを確認した上で、良くならない場合はステロイド注射などの治療を行います。
それでも改善しない場合はその他の病気の可能性があります。
急性の偽痛風発作の場合の治療方法は基本的には痛風発作と大きく変わりません。
治療の方法としては
- ステロイド・リドカイン注射
- NSAIDs(ロキソニンなど)
- コルヒチン内服
- ステロイド内服
などが挙げられます。大抵はロキソニンの内服によって症状は改善します。
急性の関節炎の場合はどうしても化膿性関節炎の可能性があるために、ステロイドの注射はためらわれます。そのため、最初はステロイド注射は行わずにNSAIDsやコルヒチンを用いることが多くあります。
少量のプレドニンを補助的に使用することもありますが、1週間程度で中止するしています。
大旨1週間程度すれば症状が落ち着くことがほとんどです。治療を開始して、それでもなかなか治らない場合には偽痛風以外の疾患を検討し直す必要があります。
まとめ
偽痛風は高齢者の急性単関節痛の際に考える疾患の1つです。
診断には関節穿刺を行い、関節注射や内服による治療を行いますが、基本的には良好な経過をたどります。
関節液を採取して診断を行い、その他の疾患の可能性も慎重に検討する必要があります。
関節痛を来した場合にはまずは整形外科にご相談下さい。