皆さん一度は歯医者でレントゲン撮像することがあると思います。
骨密度を測る機会は少ないですが歯医者にかかることはありませんでしょうか。
歯医者さんで撮影するレントゲンでは歯の状態だけではなく、顎の骨の状態も分かります。そこから骨粗鬆症患者をスクリーニング出来るのではと言われています。
気付かずに眠っている骨粗鬆症患者さんに早期に治療を開始することができれば、骨粗鬆症による骨折を減らせます。
より医科と歯科の連携が密になれば、この高齢化社会における骨折予防が可能になります。
今回は歯科による骨粗鬆症スクリーニングと医科・歯科の連携についてお話致します。
目次
はじめに
皆さんも人生で1度は歯医者さんにかかったことはあるかと思いますが、その際にレントゲンを撮影されたのではないでしょうか。
歯医者さんとレントゲンは非常に密接な関係があります。
整形外科でもレントゲンは外からは分からない中の状態を我々に教えてくれる大切な情報ですので、必ずといって良いほど撮像いたします。
歯医者さんにとっても、おそらく同様に大切なものなのだと思います。
医科の領域では、骨粗鬆症に対して積極的にスクリーニングして治療を行っているのは整形外科です。しかし、それが出来るのも整形外科を受診された患者さんに対してのみです。
骨折した患者さんか、その他の疾患でたまたま受診された患者さんのみですし、年齢や背景疾患から怪しい方の骨密度を測定して判断します。
たまに検診で追加料金を払って骨密度を測定して、その結果から受診される方もおられますがかなり少数です。
一方で歯科にかかられる患者さんは相当数いますので、その患者さんをスクリーニングして無自覚の骨粗鬆症患者を医科に紹介して頂くことが出来れば、骨折する前に治療開始することが出来ます。
歯のレントゲンで骨粗鬆症が分かる?
歯医者では回転パノラマX線写真を撮影するようなのですが、そのレントゲンでは歯のみならず、周囲の構造物も映ります。
我々もそうですが、歯科の先生もなかなか忙しい中の診療になりますので、意識しなければ普段見ていない構造物に関してはそこまで着目して見ません。
しかし、歯科でのレントゲンには顎も同時に映りこんできますが、この顎の骨がスクリーニングの指標になるのではないかと言われています1)。
骨には皮質骨と海綿骨というものがありますが、骨の端の部分にある白くみえる部分が皮質骨と言われる部分です。中の空洞のように見える部分には海面骨という骨が詰まっています。
顎の骨ではこの皮質骨が明瞭に見やすく分かり易いと言われていて、また皮質骨の厚みと腰椎の骨密度に関係性があると言われています2)。腰椎の骨密度は我々整形外科が骨粗鬆症の診断に利用する部分ですので、顎の骨が薄くなっていれば骨粗鬆症を疑う指標になります。
この皮質骨の厚みが骨粗鬆症の患者では薄くなってくるのですが、3段階に皮質骨の形態を分類されています3)。
写真のように白い部分が分厚く重層感があれば正常、ミルフィーユのように薄くなっていれば骨粗鬆症です。
何度か見ていればある程度すぐに分かるような気がします。
実際、欧米においてはこの顎の皮質骨の厚みを骨粗鬆症のスクリーニングに使用する試みが行われています4)。
医科と歯科の連携
骨粗鬆症に対する意識は医科の中でもまだまだ浸透していない部分がありますが、整形外科医においてはかなり浸透しつつあると思います。しかし、医科と歯科の連携はまだまだなされていません。
骨粗鬆症治療中では歯科治療は必須であり、治療開始前に歯科にスクリーニングをお願いしています。しかし、どのように歯科の先生が考えておられるのかはまだまだ知らない部分であり、整形外科と歯科との連携の構築、整備が必要です。
私としては医院の周囲の歯科と連携し、情報共有出来る関係性を構築していきたいと考えています。さまざまなしがらみはあるのかもしれませんが、今後医科・歯科全体としてそういった意識を持って患者さんへの治療に取り組んでより良い医療を提供出来ればと思います。