骨粗鬆症

【骨粗鬆症】自分の骨折リスクを知る:FRAXを使ってみた

骨粗鬆症の診断は、骨折歴、合併症、骨密度によって行われます。

骨粗鬆症と診断され、骨折リスクが高いと言われた方も多いでしょう。

しかし、自分の骨折リスクが具体的にどの程度あるのか、骨密度が上がればどの程度骨折リスクを抑えられるのかを知ることが重要です。

目次

骨折リスクを計算するツール:FRAX

FRAXは、簡単な12項目を入力するだけで、骨粗鬆症による骨折が今後10年間で発生する確率を計算してくれるツールです。

FRAXの使用方法

1 FRAXのサイトにアクセスします:FRAX

2 Countryの欄が「Japan」になっていることを確認します。医療現場でも薬物療法を始めるかどうかの判断に使用されており、骨密度を記入しなくても骨折確率を算出できるため、誰でも簡単に利用できます。

FRAXで入力する12項目

FRAX®は世界保健機関(WHO)の国際共同研究グループが作成したプログラムで、40歳以上を対象に、骨粗鬆症による骨折が向こう10年のうちに発生する確率を計算するものです。
総数6万人の前向きコホートを用いて作成され、国別のFRAX®は、その国の骨折の発生率と平均余命に基づいて調整されています。

  • Age:年齢または誕生日
  • Sex:性別(Male男性 / Female女性)
  • Weight(kg):体重
  • Height(cm):身長
  • Previous Fracture:骨折歴の有無
  • Parent Fractured Hip:両親の大腿骨近位部骨折歴
  • Current Smoker:現在の喫煙歴
  • Glucocorticoids:ステロイド使用(現在1日5mg以上のプレドニゾロンを3ヶ月以上使用)
  • Rheumatoid Arthritis:関節リウマチの有無
  • Secondary Osteoporosis:骨粗鬆症に関わる疾患の有無(1型糖尿病、骨形成不全症など)
  • Alcohol:1日3単位以上のアルコール摂取(アルコール度数5%のビール500mlが約1単位)
  • Femoral Neck BMD(g/cm²):大腿骨近位部の骨密度(Tスコア)

簡単に12項目を入力するだけで骨粗鬆症による骨折が向こう10年のうちに発生する確率を計算してくれます。

FRAXで骨折リスクが高く出た方(Major osteoporoticの値が15%以上の方)には、一度受診して頂いてご相談することをお勧め致します。

FRAXを実際に使ってみた

① 骨密度を測定したことが無い場合

65歳女性と仮定して入力します。結果は

  • Major Osteoporotic(主要な骨粗鬆症性骨折):10年間で7.4%
  • Hip Fracture(大腿骨近位部骨折):1.1%

* 主要な骨粗鬆症性骨折:大腿骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折、上腕骨近位部骨折、椎体骨折

日本の骨粗鬆症ガイドラインではMajor osteoporoticが15%以上で骨粗鬆症の治療をした方がよいと言われています。

② 骨密度測定したことがある場合

骨密度のところでTscoreを選択して頂き、ご自身の股関節のTscoreを入力して下さい。

65歳、Tスコア -2.5(YAM70%に相当)の場合

  • Major Osteoporotic(主要な骨粗鬆症性骨折):9.8%
  • Hip Fracture(大腿骨近位部骨折):2.0%

>>骨粗鬆症の診断と基準についてコチラを参照して下さい。

そこまでリスクは高くありません。

③ ②から治療せずに10年放置した場合

先ほどの65歳 Tscore-2.5である方はTscore(YAM値)からは骨粗鬆症と診断される訳ですが、治療をせずに10年間放置した場合を示します。

年齢が 65→75歳

骨密度は治療をせずに上がることはまずなく、下がっていくばかりですので Tscore-2.5→-3.0

と想定して入力してみました。

この場合は

  • Major Osteoporotic(主要な骨粗鬆症性骨折):9.8% → 20%
  • Hip Fracture(大腿骨近位部骨折):2.0% → 7.1%

と上昇しており、かなりの割合で今後骨折する可能性があります。

④ ②の状態から治療した場合 10年後

10年間で治療を行い、骨密度を改善した場合を示します。

治療効果が十分で、Tscore -2.5→-1と骨密度が改善してきている場合を示します。

  • Major Osteoporotic(主要な骨粗鬆症性骨折):9.8% → 9.5%
  • Hip Fracture(大腿骨近位部骨折):2.0% → 1.2%

これは理想的な形を示していますが、治療をして骨密度を上げていけば年を重ねてもリスクを減らすことが出来ることが分かります。

⑤ 骨折リスクがある場合

骨折リスクあり

75歳
骨折歴あり
家族の大腿骨骨折歴あり
Tsocre -1

  • Major Osteoporotic(主要な骨粗鬆症性骨折):21%
  • Hip Fracture(大腿骨近位部骨折):7.5%

ご自身の骨折歴が有る場合や、ご家族の骨折歴がある場合にはかなり骨折リスクが上昇します。

FRAXを試して下さい

骨粗鬆症による骨折はご自身で歩けなくなったり、買い物に行けなくなったり、食欲がおちて体重が減ってきたりとご自身の日常生活の能力を落とすことになります。

骨粗鬆症のリスクは放置すれば年々悪化してくばかりですので、骨粗鬆症は早期に発見して治療することにこしたことはありません。

まだまだ骨粗鬆症は皆さんに認知されていない部分ですが、啓発していければと思っています。

ご自身の骨折リスクを把握することで、骨粗鬆症の治療に対する危機感を持って頂くことで治療へのモチベーションアップに繋がりますので、是非一度試して見て下さい。

FRAXの注意点

過去のステロイド使用歴や喫煙歴は評価されないため、大量に使用された方は表示された結果よりもリスクが高い可能性があります。

骨密度がない場合でも測定可能ですが、正確な結果を得るためには骨密度の測定が推奨されます。

まとめ

今回は、骨粗鬆症による骨折リスクを調べるFRAXというツールの使い方を解説しました。FRAXは簡単に使えるツールであり、自己診断や医師との相談の参考になります。骨折リスクを理解し、早期に適切な治療を受けることで、骨の健康を保ちましょう。

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