上肢

五十肩(肩関節周囲炎)について

患者

肩が1年前から痛くて五十肩と思って様子を見ていました。
肩が上がらなくて、痛みで夜が眠れません

肩の痛みの代表は五十肩と腱板損傷です。
動きが悪く五十肩が考えられます。
痛み止めと関節注射を用いて痛みを抑えながらリハビリで肩の動きを良くしてきましょう。

患者

(2ヶ月後)
痛みも落ち着いて夜は眠れる様になりました。
動くも良くなってきて、背中に手が付くようになりました。

肩の拘縮が残ることが多いですが、良い経過です。
今後の予防を含めてもう少しリハビリを続けていきましょう。

目次

はじめに

四十肩、五十肩という言葉はよく耳にすると思いますが、肩の痛みが出ると自己判断で五十肩だと思い込むことが多いです。

そのため、肩こりのように怖がらずに放置しがちですが、これは大きな間違いです。

五十肩は治癒に時間がかかり、後遺症が残ることがあるため、安易に放置してはいけません。他の疾患の可能性もあるため、正確な診断が重要です。

五十肩の症状

五十肩は、肩関節に痛みが生じ、肩の動きが悪くなります。具体的には次のような症状が見られます:

  • 夜間に痛みが強まり、寝返りが困難肩関節の痛みが生じ、肩関節の動きが悪くなります。
  • 腕が上がりにくい
  • 手が後ろに回らない
  • 動かすと激痛が走る
  • 洗髪や服の着替えが困難
  • 上の物を取る動作が難しい

動かすと激痛が走るため洗髪、服の着替え、上に有る物を取る動作が困難になるために日常生活において支障を来します。

また、夜間痛といって、夜中に痛みが強く寝返りが困難になります。眠れないほどになることもあります。夜にゆっくりと眠れないというのは非常につらいものです。

五十肩の原因と病態

五十肩は、肩関節周囲の組織に炎症が起こることで発症します。この状態を「肩関節周囲炎」といいます。しばらくすると痛みが落ち着くのですが、進行すると関節包が分厚くなり、肩の可動域が狭くなった「癒着性肩関節包炎」へと移行します。

五十肩は以下の3つのステージを経て進行します:

  1. 炎症期(Freezing stage): 肩の痛みと動きが悪化する期間(2〜9ヶ月)
  2. 拘縮期(Frozen stage): 肩の痛みが極端に制限され、激しい痛みを伴う期間(4〜12ヶ月)
  3. 回復期(Thawing stage): 肩の痛みや動きが改善していく期間(1ヶ月以上)

五十肩の診断

肩関節の痛みを引き起こす疾患は五十肩以外にも多くあります。そのため、正確な診断が必要です。以下のような疾患が考えられます:

  • 腱板断裂
  • 石灰沈着性腱板炎
  • 変形性肩関節症
  • 上腕二頭筋長頭腱炎
  • 頸椎症性神経根症

首からくる頸椎症性神経根症によって肩周囲の痛みが生じることもあります。

肩関節周囲炎に腱板断裂、上腕二頭筋長頭腱炎が合併していることもありますし、五十肩と思っていても別の病気の事があります。

診断には、レントゲン、超音波検査、MRIなどの画像検査と診察を組み合わせて行います。

五十肩の治療方法

五十肩の治療は、急性期と拘縮期に分けられます。

急性期

  • 消炎鎮痛剤の内服
  • ステロイド関節内注射
  • リハビリテーション(痛みが悪化しないようにゆっくり行う)

強い痛みがある時期で、痛みと炎症を抑えることが最優先です。そのために消炎鎮痛剤の内服、ステロイド関節内注射を行います。リハビリテーションも行いますが、痛みが増悪しないようにゆっくりとリハビリを行います。痛みが強い場合には三角巾などを用いて肩の安静肢位を取ります。

拘縮期

  • 週1〜2回のリハビリテーション
  • 自宅でのセルフリハビリテーション

痛みが落ち着いた後、肩の可動域を広げるためのリハビリテーションを積極的に行います。週1回リハビリに通った時にだけリハビリを行っても効果は薄いです。そのため、それ以外の日も家でリハビリを行う(セルフリハビリテーション)をお勧めします。

改善しない場合は、関節鏡による手術や受動術(マニピュレーション)で治療します。

五十肩は治らない?

五十肩を放置すると、数年間痛みと可動域制限に悩まされることがあります。

治療を受けずに放置すると、最終的に可動域制限や痛みが残る可能性が高いです。

治癒に半年~1年くらいかかると言われています。そして、五十肩が放置して治ったとしても、半数が最終的に可動域の制限や痛みを残ると言われています1)

五十肩を放置し、適切な治療を受けなければ、数年間、痛みと可動域制限に悩まされる場合が少なくありませんので、早期の治療が重要です。

五十肩で苦しむ人の特徴

五十肩で苦しむ人は、整形外科を受診するタイミングが遅れがちです。

中には「五十肩だと思っていたけれど10年たっても治らない」といったケースもあります。

多くの患者さんは放置しがちで、自己流のリハビリを続けています。適切な治療を受けないと後遺症に悩まされることが多いため、肩の痛みが出た際には早めに整形外科を受診することが重要です。

まとめ

肩関節周囲炎は、治癒に時間がかかり、可動域制限や痛みが残りやすいため、放置せずに整形外科を受診することが大切です。

当院では内服薬の調整、関節注射、リハビリテーションによる治療を行っています。肩の痛みが出た際には、早めにご相談ください。

参考文献

  1. B Shaffer et al. J Bone Joint Surg Am. 1992 Jun;74(5):738-46.Frozen shoulder. A long-term follow-up

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