骨代謝マーカーは、骨粗鬆症の初期評価や治療効果の判定に用いられます。
治療効果は骨密度に反映されるまでに時間がかかるため、骨代謝マーカーの変化量を用いて評価します。
骨粗鬆症の治療を開始する際には、治療前に骨代謝マーカーを計測し、その後3~6ヶ月程度で再度測定して効果を判定します。
目次
骨代謝マーカーとは?
骨は常に新陳代謝を行っており、骨が溶ける(骨吸収)と新しい骨が作られる(骨形成)という過程が繰り返されています。骨代謝マーカーは、これらの過程を数値化して評価するための指標です。
- 骨吸収マーカー: 骨を溶かす破骨細胞の活動を示す指標。数値が高ければ骨が過剰に溶けている状態。
- 骨形成マーカー: 骨を作る骨芽細胞の活動を示す指標。数値が低ければ骨が十分に作られていない状態。
これらのマーカーによって、骨の代謝状態を把握し、治療の選択や効果判定、患者さんの理解に役立てます。
骨代謝マーカーの種類
骨代謝マーカーは血液や尿検査で測定します。日内変動が少なく、腎機能の影響が少ない以下のマーカーがよく利用されます。
- 骨吸収マーカー: TRACP-5b
- 骨形成マーカー: BAP、P1NP
項目 | 閉経前 | 閉経後 | 男性 | 最少有意変化% |
intactP1NP | 14.9~64.7 | 27.0~109.3 | 19.0~83.5 | 12.1 |
BAP | 2.9~14.5 | 3.8~22.6 | 3.7~20.9 | 9.0 |
TRACP-5b | 120~420 | 250~760 | 170~590 | 12.4 |
骨吸収マーカーについて
治療開始前と治療開始後の数値を比較して変化量を評価します。治療開始後3~6ヶ月程度で測定し、効果を判定します。また、薬剤を変更した場合も変更後6ヶ月以内に再度検査を行います。
TRCP5bが309以上で骨量が減少、420を超えると骨折リスクがあると言われています。
骨形成マーカーについて
BAPとP1NPは、日内変動が少なく、腎機能障害の影響を受けないため使いやすいマーカーです。特にP1NPはテリパラチドの治療効果判定に使用されます。
骨形成治療薬の開始後4ヶ月程度の段階で検査、変化量・変化率を評価します。
ビタミンD
骨粗鬆症の治療前には血清25OHビタミンDを測定します。ビタミンDの状態は以下の基準で判定されます。
- 20ng/mL未満: ビタミンD欠乏
- 20~30ng/mL: ビタミンD不足
- 30ng/mL以上: ビタミンD充足
ビタミンDが不足している場合は、活性型ビタミンDの内服を推奨します。活性型ビタミンD製剤による治療を開始することで、骨粗鬆症の進行を防ぎます。
まとめ
骨代謝マーカーは、骨粗鬆症の治療効果を早期に評価するための重要な指標です。
治療開始前にこれらのマーカーを測定し、治療後3~6ヶ月程度で再度測定して効果を確認します。また、ビタミンDの状態も測定し、不足している場合は適切な補充を行います。
骨代謝マーカーとビタミンDの測定を通じて、患者さんに最適な治療を提供し、骨粗鬆症の進行を防ぎます。