下肢

【変形性膝関節症】膝の痛み、O脚。変形性膝関節症の症状と運動療法について

高齢者の膝の痛みの第1位は変形性膝関節症です。日本国内には約2590万人もの患者がいますが、エビデンスに基づいた治療法が浸透しておらず、民間療法が氾濫しています。

ここでは、変形性膝関節症の症状、原因、治療について説明します。

目次

変形性膝関節症の症状

日本人はO脚(内反膝)が多く、内側の関節が変性して痛みを生じます。

  • 初期: 動き始めた際の痛み。椅子から立ち上がるときに痛み、歩き始めると痛みが和らぐ。
  • 中期: 膝が腫れて、階段の上り下りや長距離の歩行時に痛み。
  • 末期: 立つだけで痛み、膝の動きが悪くなり膝の可動域が制限される。

変形性膝関節症の診断

変形性関節症は「関節軟骨の変性・摩耗から始まり,進行すると軟骨下骨の硬化や骨棘形成などの骨増殖性変化を生じ,関節の変形に至る」病気です。実は明確な診断基準はありません。

レントゲンと身体所見で診断されます。

高齢者の膝関節痛の大半が変形性膝関節症です。特徴としては、急な痛みではなく徐々に痛みが強くなってきて、安静時の痛みや夜の痛みが無く、関節液が綺麗です。

レントゲン所見では膝の変形が進行してくると以下のような所見が出てきます

変形性膝関節症のレントゲン

 関節裂隙の狭小化:関節同士のすきまが狭くなる

 骨硬化:レントゲンで白く写ります

 骨棘形成:骨同士の刺激によって、通常はないような骨の出っ張りが横に出来てくる

膝の痛みの他の原因

若年者や外傷がある場合、以下のような他の原因も考えられます:

  • 半月板損傷
  • 靱帯損傷
  • 骨折
  • 関節リウマチ
  • 痛風・偽痛風
  • 大腿骨内側顆骨壊死

若年者や外傷機転があったり、レントゲンの所見が軽微である様な場合には半月板損傷や靱帯損傷、骨折など他の原因を考えて、CTやMRIで確認します。

また、関節リウマチ、痛風、大腿骨内側顆骨壊死なども念頭においておく必要があります。

関節リウマチ

 最近は、高齢で発症する関節リウマチが増えつつあります。

 その場合、手や足の痛みではなく膝関節などの大関節から発症することがあり、注意が必要です。

 元々、変形性膝関節症もある場合があり、血液検査や関節液の性状を元に疑う必要がありますが、診断に苦慮する場合があります。

痛風・偽痛風

 尿酸血症やピロリン酸カルシウム血症といったものによる関節炎です。

 急な膝の痛みという点が特徴的で、血液検査で炎症の数値が上昇し、関節液から結晶を確認することで確定出来ます。偽痛風では、レントゲンで石灰化沈着を認めることから疑います。

>>痛風についてはコチラを参照    >>偽痛風についてはコチラを参照

大腿骨内側顆骨壊死

 大腿骨内側顆に生じる骨壊死で、これも急な痛みを生じます。ステロイド使用歴のある方に大腿骨頭壊死と同様に起りやすい疾患です。

 レントゲンでは所見に乏しく診断が難しく、痛みが強い場合には疑ってMRIによって診断出来ます。

>>大腿骨頭壊死についてはコチラを参照

変形性膝関節症の治療方法

変形性膝関節症の治療

薬物治療・関節内注射・装具

リハビリテーション(理学・物理療法)

手術治療

の3本立てになります。

まずは薬物療法、リハビリテーションの治療が基本です。

薬物治療について

  • NSAIDs(ロキソニン、セレコキシブなど)
  • アセトアミノフェン(カロナール)
  • デュロキセチン(サインバルタ)
  • オピオイド鎮痛剤(トラマドールなど)

が使用されます。

痛みの強い場合にはNSAIDs(ロキソニンなど)を使用することも多いですが、副作用の観点から短期的な使用が好まれます。高齢者の場合にはセレコキシブ・カロナールといった胃潰瘍のリスクの少ない薬剤が好ましいです。

デュロキセチン(サインバルタ)という薬剤も有効です。慢性的な痛みが続くと、ちょっとした痛みに対しても反応して痛みを感じやすい脳になっていまいます。そのような脳の状態を改善するお薬になります。

強力な鎮痛剤であるオピオイド(トラムセットなど)を使用することがあります。ただし、副作用として便秘やめまい、吐き気などが生じる事があるので、痛みが強い場合に限定して使うことをお勧めします。

関節内注射について

関節内注射としては

  • ヒアルロン酸
  • ステロイド注射

がしばしば行われます。

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸は、もともと関節液に含まれる成分です。粘性・弾力性があり、膝関節への衝撃を吸収したり、組織同士のこすれを防ぐ潤滑油の様な役割があります。

関節に直接ヒアルロン酸を注入することによって、痛みの緩和や関節の動きを滑らかにする効果が期待できます。

ステロイド注射と比較して効果が出るのが遅いものの、長時間持続してくれるのが特徴です。

ステロイド注射

ステロイド注射は疼痛や炎症所見(腫れ)の強い時期にピンポイントで使用すると効果的です。基本的には、痛みが強くで歩行に支障があったり、関節液の貯留が多い場合に使用することがあります。

ただし、ステロイド注射によって膝の状態の悪化を加速するという報告もありますので、何度も繰り返すことはお勧めしません。

装具(足底板)について

日本人は内側型の変形性膝関節症、いわゆるO脚型の患者が多いです。

そういった方には外側が少し高い足底板(インソール)を使用することで、O脚を改善させることで内側の痛みを軽減し、変形性膝関節症の進行を軽減さえると言われています。

リハビリテーション治療について

変形性膝関節症の治療として運動療法があります。適切な方法で運動することによって痛みの軽減や運動機能の改善に繋がります。

炎症期(痛みが非常に強い時期)の運動療法

痛みが非常に強い時期には以下がお勧めです。

炎症期の運動療法

・座った状態での膝の屈伸運動

・痛みの範囲でのウォーキング

痛みが強い時期に過度な運動は避けて、比較的膝への負担の少ない運動をして下さい。

一つが座った状態での膝の屈伸運動です。1日で座っている間は可能な限り曲げ伸ばしをするように心がけて下さい。

また、痛みが強くならない程度のウォーキングをして下さい。無理をする必要はありません。5分でも10分でもよいので、痛みを感じる前に休憩を挟んで下さい。徐々に距離を増やしていきましょう。

また、階段は膝に負担がかかりますので、ウォーキングの際には階段の上り下りは行わずに平坦な道を歩くようにして下さい。

消炎期の運動療法

炎症が落ち着き、痛みが落ち着いたらそこからは予防のための運動を行っていきましょう。

適度な運動が症状改善に繋がります。

ここでは、変形性膝関節症の方におすすめの運動をいくつか紹介します。

太もも(大腿四頭筋)を鍛える運動①

大腿四頭筋は太ももの前側にある大きな筋肉です。これが膝を支えるのに重要な役割を果たしています。この筋肉を鍛えることによって膝の安定化を図ります。

椅子に座ってできる限り背筋を伸ばします。椅子に手をかけながらでもいいので、片足を挙げて4秒数えてゆっくりと下ろします。

これを5回繰り返し、1日3セットを目安に行うようにしましょう。

太もも(大腿四頭筋)を鍛える運動②

仰向けに寝た状態で、片方の足を伸ばした状態でゆっくりと上に上げます。4秒数えてゆっくりと下ろします。

これを5回繰り返して、1日3セットを目安に行って下さい。

股関節周りの筋肉(中殿筋)を鍛える運動

中殿筋(ちゅうでんきん)は、お尻の横についている筋肉で、歩く際などに骨盤を安定させる役割を担っています。

この中殿筋が衰えていることが多く、歩行時の下肢の不安定になることで膝に負担がかかります。この筋肉を鍛えることによって、下肢のバランスが改善し、つまづきにくくなります。

横向きに寝転んだ状態で上側の足を挙げて4秒数えて下ろします。

これを10回繰り返します。1日に3セット行うようにしましょう。

手術治療について

  • 高位脛骨骨切り術
  • 人工膝関節置換術

といった方法があります。

変形性膝関節症の重症度や年齢などによって手術の内容が変わります。

高位脛骨骨切り術というのは自分の骨を切ることによってO脚からX脚にかえる手術になります。自分の膝の関節を温存する手術です。比較的若くて、運動する方、変形が軽度な方に行います。

一方で人工膝関節置換術については変形した関節の表面を切り取って金属で出来た人工の部品に置き換える手術です。変形が強く、比較的高齢者に行われます。1度手術をすれば20年程度もってくれます。ただし、長期になるとゆるんで再手術する必要があったり、細菌感染のリスクがあります。

まとめ

変形性膝関節症は多くの人が悩む疾患です。正しい運動方法や予防方法を学び、専門医の診断と治療を受けることが重要です。民間療法に惑わされず、エビデンスに基づいた適切な治療を行いましょう。

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