リウマチ 炎症性疾患

【関節リウマチ治療薬】~免疫調整薬について~

患者

色々病気をもっていますが、リウマチの治療は出来ますか?

医師

関節リウマチの治療では、ご高齢の方の場合は合併症が起こりやすく、慎重に治療薬を使用していく必要があります。

免疫調整薬」と言われるお薬が比較的安全に使用できます。

患者

効果は弱いでしょうか?

医師

メトトレキサートなどよりは弱いお薬にはなりますが、何種類か合わせて使用することでかなり関節リウマチの活動性を抑えることが出来ます。

関節リウマチに対して使用する薬剤は、主に「免疫抑制薬」と「免疫調整薬」の2種類に分類されます。今回は「免疫調整薬」について詳しく説明します。

目次

免疫抑制薬と免疫調整薬の違い

関節リウマチは、免疫系が異常に活発になることで関節が破壊される疾患です。

  • 免疫抑制薬: 免疫を抑制して異常な免疫反応を抑えますが、正常な免疫も抑えてしまうため、感染症のリスクが高くなります。例として、メトトレキサートや生物学的製剤があります。
  • 免疫調整薬: 免疫を正しい状態に調整する薬です。感染症のリスクが低く、高齢者や肺病変を抱える患者に使いやすいのが特徴です。効果はやや弱めですが、早期の段階で活動性が強くない患者には有効です。

免疫抑制薬は正常な免疫自体も抑えてしまうため、感染症があると使いにくかったり、感染症にかかりやすくなったりします。とにかく感染症に注意が必要です。一方で免疫調整薬は免疫を正しい状態に調えるというイメージです。

感染症があっても使い易く、感染症にかかりにくいという特徴があります。そのため、特に高齢者や肺病変などを抱えている患者さんにも使用しやすいものです。

免疫調整薬は感染リスクが低い

メトトレキサート使用の前に

  • 結核(TSPOT)
  • B型肝炎関連(HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体)
  • βDグルカン(カビ関連)
  • 胸部レントゲン/CT(肺の病変について)

といった検査で潜在的な感染症があるか確認します。

昔ウイルスに感染し、体の中にウイルスが眠っているという方がおられます。その場合、免疫抑制薬(メトトレキサートなど)を使用することによって、ウイルスが再度活発になってくることがあります。

このような検査によって感染症のリスクが高いと思われる症例においては免疫調整薬が勧められます

代表的な免疫調整薬

サラゾスルファピリジン

サラゾスルファピリジンは抗炎症作用をもつ5-ASAと抗菌作用をもつスルファピリジン(SP)を結合させたものです。

もともとはサラゾスルファピリジンは潰瘍性大腸炎に対して有効性があるとして開発され、1969年に潰瘍性大腸炎への治療薬として日本で承認されました。

その後、関節リウマチに対する有効性が報告され1995年に日本で関節リウマチへ承認去れされるようになりました。

  • 経口薬
  • 作用: 抗炎症作用(5-ASA)と抗菌作用(スルファピリジン)を持つ。
  • 使用方法:最初の2週間500mgの内服して、副作用の発現がなければ1000mgに増量
  • 副作用:肝障害、薬疹、無顆粒球症、再生不良性貧血、食欲不振、嘔気・嘔吐、頭痛
  • 特徴:肺病変や腎障害(透析含む)があっても使用可能。抗菌作用を持つため感染症のリスクが低い。

 薬疹が薬を始めてから10日程度で出てくる事が多いため、最初の2週間でもし薬疹がでた場合は中止が必要です。

ブシラミン(リマチル)

  • 経口薬
  • 作用: ペニシラミン類似のSH化合物で、日本で開発された。
  • 使用方法: 1日100-300mgを内服。
  • 副作用: 薬剤性肺障害、膜性腎症、黄色爪(これが出ると副作用が出やすいかもしれない)。
  • 特徴: 効果発現に1-3ヶ月かかる。膜性腎症はまれだが、タンパク尿が出た場合は中止が必要。

 タンパク尿自体は服用を中止すればほとんどが数ヶ月で治りますが、まれに重篤な膜性腎症を来した場合は専門病院での治療が必要となることがあります。毎回尿検査で経過を見させて頂きます。

イグラチモド(ケアラム)

日本で開発された薬剤です。

  • 経口薬
  • 日本で開発された薬剤。
  • 使用方法: 最初の4週間は25mg、副作用がなければ50mgに増量。
  • 副作用: 肝障害、血球減少、消化性潰瘍、間質性肺炎、下痢、嘔気。
  • 特徴: 肺病変、腎不全(透析含む)、感染症、悪性腫瘍があっても使用可能。
  • 注意点:ワーファリンとの併用禁忌。 ロキソニンなどとの併用による消化性潰瘍に注意

免疫調整薬の適応

免疫調整薬は、以下のような患者に対して使用が推奨されます:

  • 感染症のリスクがある
  • 高齢者
  • 肺に間質性肺炎などの病変がある
  • 腎機能が悪い、透析中
  • B型肝炎がある

これらの患者は、免疫抑制薬の使用が困難な場合があるため、免疫調整薬が有効です。活動性が小~中等度であれば、免疫調整薬のみで関節リウマチの進行を抑えることができます。

中等度の方の場合は、1剤だけではなく、先ほどのサラゾスルファピリジン、リマチル、ケアラムの3剤併用して治療に当たることで寛解が得られることがあります。

またメトトレキサートを使用している場合に不十分な場合にもう一息という場合に免疫調整薬を追加することがあります。

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