骨折

【まとめ】骨粗鬆症による4大骨折

骨粗鬆症では骨折のリスクが増大し、転倒などの軽微な外傷で骨折することがあります。今回は骨粗鬆症による代表的な骨折4選を紹介し、骨折後の治療と骨粗鬆症治療について説明します。

目次

骨粗鬆症による骨折

代表的な骨折としては

骨粗鬆症による骨折
  • 大腿骨近位部骨折
  • 椎体骨折
  • 橈骨遠位端骨折
  • 上腕骨近位部骨折

これら4つの骨折は骨粗鬆症による代表的な骨折です。これらの骨折を経験したことがある場合、骨粗鬆症の可能性が高いです。

骨粗鬆症の診断基準

骨粗鬆症の診断は骨折の既往と骨密度によって行われます。若い人の基準値(YAM)と比較した数値を用います。

骨粗鬆症の診断基準

何も骨折歴のない方の場合、骨密度の検査(DEXA)で

YAM値≦70

が骨粗鬆症の診断基準となります。しかし、特定の骨折がある場合は以下のようになります。

  • 大腿骨近位部骨折
  • 椎体骨折(圧迫骨折)

これらの場合、骨密度によらず骨粗鬆症確定です!このような骨折は骨が脆くないと起りません。

  • 橈骨遠位端骨折
  • 上腕骨近位部骨折

などの脆弱性骨折がある方は 通常はYAM≦70が骨粗鬆症の診断基準値ですが、

YAM値<80

で骨粗鬆症の診断です。

>>骨粗鬆症の診断の詳細はコチラ

大腿骨近位部骨折

骨粗鬆症により特に頸部(股関節の付け根)が脆くなり、つまずいて尻餅をつくだけで、大腿骨近位部骨折(頸部骨折、転子部骨折)を起こします。

日本では2012年では年間に約17万人の方が大腿骨近位部骨折を来していて、男性が約3.7万人、女性が13.8万人と女性に多くみられます。

近年の高齢化に伴い、骨折患者はさらに増えつつあります。

大腿骨近位部骨折の診断と治療

診断はレントゲンやCTで行い、治療は手術が基本です。

治療の基本は手術です。

手術の方法は骨折型によって分かれていて、大きく2通りあります。

① 骨接合術(自分の骨をそのまま使い、金属で固定します)

② 人工骨頭置換術・人工股関節全置換術(自分の骨を取り除き、人工の物に置き換えます)

大腿骨近位部骨折は死に直結する

大腿骨頸部骨折をきたした方の1年以内の死亡率は日本で10%と言われていて、非常に死亡率が高い疾患です。

それでも海外では30%程度という報告もありますので、日本での死亡率の低さは日本の医療の緻密さを物語っていると思います。

入院期間もリハビリを含めて3か月程度かかることが多く、元のように歩ける方は少数です。足の機能が衰えてしまい、何もなしで歩けていた方が杖歩行になり、杖で歩けていた方が歩けなくなってしまうこともあります。

>>大腿骨近位部骨折について詳細はコチラ

椎体骨折

椎体骨折は圧迫骨折などとも言われ、通称「いつの間にか骨折」です。特に尻もちを付いて腰が痛い という場合に椎体骨折(圧迫骨折)を起していることが多いです。

身長が低くなってきた

圧迫骨折を疑う症状

背が丸まってきた

ぎっくり腰をしたことがある

ずっと腰が痛い

このような方は一度椎体骨折がないかどうか確かめた方が良いです。

  • レントゲン検査
  • CT検査
  • MRI検査

ほとんどレントゲン検査で判明しますが、初期の場合は圧壊が少なく分かりにくい場合はMRIを確認します。

椎体骨折の治療

  • 疼痛コントロール
  • 体幹コルセット、体幹ギプス 2-3か月
  • 手術加療

になります。

コルセットによる治療が基本ですが、骨折型によっては手術加療が行われることがあります。

椎体が1か所骨折しているだけで骨粗鬆症の診断椎体骨折の圧壊が高度、もしくは椎体が2か所以上骨折していれば、重症の骨粗鬆症です。

>>椎体骨折(圧迫骨折)について詳細はコチラ

橈骨遠位端骨折

大腿骨近位部骨折と比較して若い方に起りやすい骨折で、手をついて転倒した際に発生します。

診断はレントゲン撮影で診断出来ます。治療の方法を決定するためにCTで確認することがあります。

橈骨遠位端骨折の治療

  • ギプス治療
  • 手術治療(プレート固定)

の2通りになります。

骨折型によって変わってきます。関節内骨折といって、関節まで骨折が及んでいる場合や転位が大きい場合は手術を行うことが多いです。

橈骨遠位端骨折になってから、1年以内に大腿骨近位部骨折が起こることが多いと言われています5)

橈骨遠位端骨折は初発の脆弱性骨折のことが多く、それを皮切りに連鎖してドミノ骨折を来します6)

橈骨遠位端骨折の患者はYAM<80%を切ると骨粗鬆症の診断です。

しかし、橈骨遠位端骨折患者の骨粗鬆症治療率が 13.4%という報告もあるくらいまだまだ骨粗鬆症治療による予防治療が浸透していないのが現状です。

橈骨遠位端骨折の段階で治療できれば、大腿骨近位部骨折や椎体骨折などを予防することが出来ます。もし、治療を受けておられなければ一度ご相談下さい。

>>橈骨遠位端骨折について詳細はコチラ

上腕骨近位部骨折

上腕骨近位端骨折は、転んで手を伸ばしてついたり、直接肩を打ったりすると起こる、上腕骨の肩に近い部分の骨折です。こちらも骨粗鬆症によって骨が脆弱になることで起きやすい骨折です。

診断はレントゲンで診断出来ますが、詳細な治療方針を決定するためにCT撮影を行うことがあります。

上腕骨近位部骨折の治療

上腕骨近位部骨折が発覚した場合はまずは固定を行います。

肩は、手首などと異なってギプスでの固定は困難なですので、三角巾やバストバンドを用いて図のような固定を行います。

  • 転位(骨折部位のずれ)
  • 骨折型(単純な骨折型か複雑骨折かどうか)

の具合によって保存的加療か手術加療が好ましいか決まります。

また、上腕骨近位部骨折を来した患者はYAM<80%で骨粗鬆症の診断になります。通常はYAM<70%で骨粗鬆症です。

まとめ

骨粗鬆症による骨折には以下の4種類があります:

  • 大腿骨近位部骨折
  • 椎体骨折(圧迫骨折)
  • 橈骨遠位端骨折
  • 上腕骨近位部骨折

これらの骨折では骨粗鬆症の治療が必要です。骨折すると治療に時間と労力がかかり、身体機能が低下します。骨折予防のために、早期の骨粗鬆症の診断と治療が重要です。

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