骨折

【骨盤脆弱性骨折(恥骨・仙骨骨折)】尻もちで骨盤が骨折?

目次

人生100年時代

転倒してから

「臀部が痛い」

「股関節が痛い」

といった症状の場合に骨盤脆弱性骨折(恥骨骨折、仙骨骨折)の事があります。

転倒や尻もちで骨盤が骨折すると想像しにくいのではないでしょうか?

近年は社会の高齢化に伴って骨粗鬆症の方が増大しており、それにともなう脆弱性骨折が問題となってきています。

脆弱性骨折の種類としては、手関節周囲の橈骨遠位端骨折、肩関節周囲の上腕骨近位部骨折、脊椎では胸腰椎圧迫骨折、股関節周囲の大腿骨近位部骨折の4つが有名です。

 特に大腿骨近位部骨折や胸腰椎圧迫骨折については寝たきりや生命予後にも影響する骨折ですので、予防が必要になります。

 今回はその中で、近年増えつつある恥骨骨折、仙骨骨折を中心に骨盤脆弱性骨折について説明します。

尻もちで骨盤骨折?

骨盤は強固な骨であり、通常、若い方の場合は転倒などでは骨折することはなく、交通事故や高所からの転落などの高エネルギー外傷によって生じることの多い骨折です。

尻もちくらいで骨盤が骨折することを想像出来ないのではないでしょうか?

この骨盤脆弱性骨折(Fragility Fractures of the Pelvis:FFP)は社会の高齢化に伴って、大腿骨近位部骨折と同様に急速に増加しつつあります。

高齢になると骨粗鬆症に伴って骨が脆弱となり、転倒や寝返りといった軽微な外傷を契機に骨折します。若い方と高齢者では違った形で骨折し、また骨折の仕方も異なります。

・診断方法

骨盤脆弱性骨折の診断は意外と難しいです。

高齢者において

「腰が痛い」

「臀部が痛い」

「股関節が痛い」

「立った時に痛みがある」

「大腿部の痛みがある」

といった症状を訴えられることがあり、症状が多彩で特徴的な症状にかけます。

また、単純X線でも骨粗鬆症のために骨折部がはっきりとしない場合があり、診断困難なことが多いです。

また、股関節の痛みや臀部の痛みにおいては圧倒的に大腿骨近位部骨折のことが多く、骨盤脆弱性骨折は世間的な認知度が低いことも原因の1つです。

恥骨や仙骨を落して痛みがあることを確認出来た場合には、骨盤脆弱性骨折も念頭において、股関節や腰椎とは別に骨盤のレントゲンを撮像して確認します。

 分からないけれども、疑わしい場合にはCTやMRIで確認する必要があります。

 症状的には坐骨神経痛だけれども、実はMRIを撮像すると腰には問題がなく、ふと写っていた骨盤に骨折所見を認めて診断がついたということもあります。

恥骨骨折だけと思っていたら仙骨骨折も?

非常にずれ(転位)が軽微なことが多いため、レントゲンやCTで確認して、恥骨骨折のみと思っていても実は仙骨骨折を合併しているということもあります。

仙骨と恥骨骨折の合併が42〜78% と言われていて、恥骨が骨折していたら仙骨が骨折しているかもと考える必要があります。

骨盤脆弱性骨折の治療

  • 安静
  • 内服治療(鎮痛剤)
  • リハビリ
  • 骨粗鬆症治療

高齢者の骨折の事が多いため、長期の臥床では寝たきりの可能性があるため、痛みをコントロールしつつ、離床してリハビリを行っていく必要があります。

また、骨折の原因が骨粗鬆症ですので、骨粗鬆症治療を合せて行っていく必要があります。

骨盤脆弱性骨折については例えば恥骨だけといった1カ所の骨折だけであれば、骨盤の○のアーチで支えてくれるため、安定しています。

2カ所以上で骨折していてずれ(転位)がない場合も安定しています。しかし、2カ所でずれ(転位)がある場合はアーチの支えが無くなってしまうため、不安定な骨折になります。

基本的には安定型の骨折の事が多く、その場合は痛みの範囲で日常生活を過ごして頂きます。いわゆる保存的加療によって治癒することが多く、そのもとでレントゲンなどで転位が進行してこないか確認していきます。

症状の改善には2ヶ月程度要することもありますし、痛みが強くて動けない場合には入院して安静にして上でリハビリしていく必要があります。

ただし、転位が進行してくる、もしくは痛みが強くて動くことが出来ないようなことがあれば、手術が必要となることがあります。

予後について

1年後の転機は、50% が元の状態にまで回復することができず、25% が施設入所、14.3% が死亡と非常に予後不良と言われています1)。

これは骨盤脆弱性骨折を起すということは、その段階で身体の廃用が進んでいることが原因です。また、骨盤だけでなく、その他の骨も弱くなっているためドミノ型に骨折することで一層身体の機能が落ち、一気に歩けなくなります。

骨盤骨折を来す前に骨粗鬆症の治療を行っていくことをお勧めします。もし起った場合には早急に骨粗鬆症の治療を行うことで骨折の連鎖を食い止めましょう。

 骨粗鬆症による骨折を目にすることの多い整形外科が骨粗鬆症の問題に一番直面している科であり、私も骨粗鬆症治療に力を入れて携わっています。是非ご相談下さい。

まとめ

骨盤脆弱性骨折は骨粗鬆症に伴う、軽微な外傷を生じる骨折です。

骨粗鬆症治療を行うことで、予防することが可能ですので、早めの検査・治療をして予防していきましょう。

参考文献

1)Taillandier J, Langue F, Alemanni M, Taillandier-Heriche E. Mortality and functional outcomes of pelvic insufficiency fractures in older patients. Joint Bone Spine. 2003 Aug;70(4):287-9. doi: 10.1016/s1297-319x(03)00015-0. PMID: 12951312.

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