ここ1ヶ月くらい指が腫れて痛みがあります。
こわばった感じがあって物がつかみにくいです
関節リウマチかもしれません。
レントゲンと血液検査、関節エコーを行いましょう。
お願いします。
レントゲンで関節の破壊はありませんが、採血でリウマチ検査陽性です。
関節エコーでも滑膜炎の所見がありますので関節リウマチです。
破壊が進行するまえに治療をして寛解を目指しましょう。
指の関節(曲がる所)が腫れる原因の1つに関節リウマチがあります。
関節リウマチは実は若い頃に発症することが多く、放置していると骨破壊が進み様々な場所が変形してしまいます。変形しきると元には戻せません。
しかし、現在は有効性の高いお薬も出てきているため、早めから適切に治療を受ければ症状を落ち着かせ、骨破壊の進行を止めることが可能ですので早めの診断・治療が大切です。
今回は関節リウマチの特徴的な症状と診断、そして治療について解説します。
目次
関節リウマチって何?
関節リウマチ Reumatoid arthritisは免疫機能の異常によって関節で炎症を来たし、関節の痛みや腫れが生じる病気です。
関節リウマチでは、体中の関節に関節炎を起こします。
肺や神経、血管などの関節以外の部分にも炎症が広がることがあり、ひどい場合には命にも関わることがあります。
関節炎が続くと関節の破壊が進み、関節が変形していきます。変形してしまうと、痛みが残り、動きも悪くなるため日常の生活に支障が出てきます。
日本の関節リウマチの患者は82.5万人と言われており、人口の約0.65%程度が罹患しています。
女性:男性が3.2:1程度で女性に多く見られます。
高齢者や小児で発症する方もおられますが、中高年(40~60歳代)での発症が多いです。
関節リウマチの初期症状
では、どのような症状の場合に関節リウマチを疑うべき気になりますよね。
といった症状が関節リウマチの患者の特徴になります。
これらの中で1つでも当てはまるようであれば一度受診をお勧めします。
関節リウマチの主な症状は朝のこわばりと関節の痛み・腫脹です。
関節炎は手足の指や手首に症状を認めることが多く、左右対称に多数の関節で症状が出ることが多いのですが片側で少数の場合もあります。
また、皮膚の下にしこりが有る場合にはリウマトイド結節の可能性があります。このリウマトイド結節はとくに刺激の受けやすい場所(肘や膝)に出来やすく、大きさは米粒大から大豆サイズまで様々ですが、痛みはありません。
関節痛(関節リウマチ)の診察
手足の痛みというのは日本人の10%程度の方が自覚している症状になりますので、その他の疾患も念頭に置いておく必要があります。
我々は症状の問診や身体所見から得られた情報を元に関節リウマチを疑う場合には血液検査や画像検査(エコー、レントゲン)による客観的な情報から裏付けを行っていきます。
問診・身体所見
問診で疼痛の部位を確認します。
筋肉や腱などの痛みではなく、本当に関節の痛みなのか確認します。本当に関節痛であればその部位を確認します。
また、日中の変動や、急性なのか慢性なのか確認します。
急におこった関節炎の場合には、痛風や偽痛風や感染による関節炎の可能性が高いため、その場合には関節穿刺を行いその他の疾患を鑑別します。
関節が変形している場合に、変形性関節症といって年々の負荷によって生じた変形なのか、もしくは関節リウマチによる変形らしさがあるか確認します。変形性関節症の場合には隆々とした骨が触れますが、関節リウマチによる変形の場合には骨と皮膚の間に柔らかいクッションを感じることがあります。
また、現状痛みが日常生活に支障があるのかどうか確認します。
このようにリウマチらしさがあるのかどうかを問診と身体所見から判断します。
また関節リウマチには点数付けによる診断基準がありますが、初期の場合には診断基準に当てはまらない場合があります。
そのため、診断基準には当てはまらないものの、関節の腫れ・痛み、朝のこわばり、リウマトイド結節、採血異常などがある場合には経過を観察していく必要があります。
検査項目
続いて行っていく検査としては
- 血液検査
- 関節エコー
- レントゲン
になります。それぞれ我々医師に大切な情報を与えてくれます。
① 血液検査
血液検査としては
診断
- リウマトイド因子
- 抗CCP抗体
活動性、治療効果判定
- CRP、赤沈
- MMP-3
といった項目を調べます。
関節リウマチの診断にはリウマトイド因子や抗CCP抗体(ACPA)と言った自己抗体といったものを調べます。関節リウマチに特徴的な項目であり、異常値を認めれば関節リウマチの可能性がぐっと上がります。
しかし、リウマトイド因子はその他の疾患でも陽性になったり、健常人でも陽性になることがあります。
一方で抗CCP抗体は関節リウマチに特徴的なもので、抗CCP抗体が異常値の場合には関節痛の症状がなくとも、その後関節リウマチに進行する可能性があると言われており早期診断に非常に有効な検査項目です。
しかし、これらはいずれも必ず異常値になるわけではないため採血結果だけではなく総合的な判断が必要です。
CRPや赤沈といった項目は様々な疾患で異常値を来しうるもので診断には用いません。これとMMP-3を合せて、関節リウマチがどのくらい悪さをしているのか、活動度合いを評価します。治療を開始した場合には、治療によって改善してきているのかどうかの効果判定にも用いるものになります。
② 超音波検査
変形性関節症でも関節痛を来すことがありますが、エコーで関節に異常血流、滑膜の増殖をリアルタイムで確認することが出来、レントゲンなどには現れない変化を早期に捉える事が出来、早期診断に有用です。
炎症が有る場合には関節周囲に液体の貯留や血流を認め、滑膜肥厚や骨の変形など関節の状態が目に見えて分かります。
最近のエコーは非常に明瞭に見ることが出来ます。
また、エコーが良いところは外来で非常に簡便に行うことができ、安価で侵襲が少なく、また患者さんと画像を供覧しつつ説明することが出来ます。
患者さんと医師の両方にメリットの大きな検査です。
③ レントゲン検査
レントゲン検査では関節破壊の程度を確認できます。
関節裂隙といって関節同士の隙間が狭くなってきている像が見られます。
また骨びらんといって関節の近くに骨が侵食され、虫食い状態のように溶けているような像が見られます。
治療中も少なくとも1年に1回はレントゲンを確認して関節破壊の進行具合を確認して状態を把握していきます。
関節リウマチの治療
治療の柱は
- 関節の安静
- 薬物療法
- 手術療法
- リハビリテーション(ハンドシラピー)
になります。
その中でも、治療の基本は症状を落ち着かせ、進行を止めるための薬物療法です。
症状の緩和や日常生活に支障がある場合には追加でリハビリテーションを用いていきます。
変形が進行してしまい、痛みや拘縮を来している場合には手術療法を用いることがあります。
薬物療法について
薬物療法について解説します
お薬は「症状の緩和」と「進行の抑制」のために用います
症状の緩和
- 鎮痛剤(ロキソニンといったNSAIDsなど)
- ステロイド
進行の抑制・症状緩和
- 抗リウマチ薬 DMARDs(メトトレキサートや生物学的製剤と言われるもの)
それぞれ上記のようなお薬を用います。
以前は抗リウマチ薬として今のような生物学的製剤と言われるお薬がなかったため非常に治療が限られていました。
そのため関節リウマチの進行を止めきれず、変形が進行してしまうことが多々ありました。
現在は生物学的製剤と言われる新規のお薬が出てきており、かなり進行を押さえ込むことが可能になり、コントロールが出来るようになってきています。
しかし、生物学的製剤は非常に高額なお薬になります。若い患者さんの場合は現在の医療制度では3割負担になりますが、お薬のみの負担額として安いもので月1.5万、高額なものになると月4万程度になってきます。これに採血や診察料などがかかってくるため患者さんの負担額が大きくなってきます。また関節リウマチは難病に指定されていないため、自己負担額が大きくなってきます。寛解といって症状が落ち着けば薬剤を中止することが可能な場合がありますが、難しいことも多く長期的な治療が必要となり、負担額を可能であれば減らすことも必要です。
費用の問題もあり、治療の第一選択としてはメトトレキサートと言うお薬になっています。
メトトレキサートは効果が出てくるのに少し時間がかかりますので、使用してから1ヶ月程度みて効果不十分であれば増量していき、それでも不十分であれば別の薬剤を追加・変更していきます。
高齢や高度の腎機能障害がある場合にはメトトレキサートが使えない場合には他の薬剤を使っていきます。
リウマチの治療薬の副作用
メトトレキサートや生物学的製剤といったリウマチ薬には副作用がつきものですので、患者さんの背景リスク(年齢、合併症、腎機能、出産予定の有無など)に応じて薬剤を選択していきます。
我々も非常に注意しながら診療させて頂きますが、突然副作用が出てくることがあります。そのため、お薬特有の副作用を説明し、症状が現れた場合にはすぐに医療機関を受診するように説明しています。
また、患者さんの背景疾患や腎機能など、それぞれの背景を考えた上で適切な治療薬を提案いたします。
リウマチ治療の目標
関節リウマチを放置していると関節の破壊が進行して変形してしまい、取り返しの付かない状態になります。そのため、関節リウマチにおいてはいかに早期に診断し、早期に治療を開始するかがポイントです。
T2T( Target to Treat)という考えが2010年の欧州リウマチ学会(EULAR)で提唱され、この考えが広く浸透しています。
治療の目的は関節リウマチの「症状のコントロール」と「関節破壊の進行抑制」です。
つまり、治療においては低疾患活動性や寛解といった関節リウマチをコントロール出来、身体的な問題を解決して、関節破壊を抑制出来ている状態を目指していきます。
その目標を半年以内に達成出来るように薬物治療を見直していきます。
お薬は止められるのか
症状がコントロール出来ている状態(寛解)が維持出来ている場合には、薬剤の減量や中止を行うことが出来ることがあります。
減量・中止後に悪化することもありますが、減量・中止出来れば患者さんにとって費用面などでメリットが大きいものです。
そのため落ち着いている場合には患者さんとは相談し、減量もしくは中止を検討いたします。
しかし、すべての薬剤を止めることはなかなか難しく、継続的な治療が必要になります。
治療中に出産は可能か
若い女性の方の場合には特に出産の可能性があるため、必ず予定を確認しています。
妊娠・授乳中にも使える薬剤がありますので、出産を考えておられる場合にはそういった治療薬に変更していきます。
関節リウマチで使用するお薬には催奇形性や胎児死亡などといったリスクのある薬剤があり、また薬剤を中止してから一定期間あけてから妊娠して頂くよう注意が必要です。
妊娠を希望される場合には、まず医師にご相談下さい。
まとめ
関節リウマチは日常にひそむ疾患であり、関節破壊を進行してしまわないよう早期診断・治療が大切です。
関節痛やこわばりといった症状がある際には一度整形外科、リウマチ科にご相談下さい。