リウマチ 炎症性疾患

【関節リウマチの診断】リウマチトイド因子RF、抗CCP抗体について

目次

はじめに

患者

検診でリウマトイド因子が陽性でした。
私は関節リウマチでしょうか。

医師

偽陽性といって、関節リウマチでない方でも陽性となることがあります。
採血結果だけでは関節リウマチと診断出来ません。
こわばりや関節痛はありませんか?

患者

こわばりはありませんが、指の痛みが出るこがあります。

医師

レントゲンと関節エコーで確認してみましょう

今回は関節痛など関節リウマチを疑うような所見が見られた場合に検査を行う

  • リウマトイド因子RF
  • 抗CCP抗体

について説明します。

名前がリウマトイド因子というので、陽性=リウマチなのか?と思う方もいるかもしれません。

しかし、そうとは限りません。

今回は検査結果の意味について説明致します。

RFは健常者でも陽性になります。

リウマトイド因子(RF)の基準値は15 IU/mL以下になります。

RFは関節リウマチでない方の内、若年者では4%程度、高齢者にいたっては25%程度陽性となります。

ただし、健常者の場合には基本的にはそこまで高い数値になることはありません。強陽性といって上限の3倍以上あるような場合には何かあると考えて、よく詳しく調べていく必要があります。

一方で擬陽性に我々医者も悩まされることになります。

RFはリウマチ以外の病気でも上昇する

リウマトイド因子RFは名前からリウマチだけに関連すると思いがちですが、リウマチのみではなく、リウマチ以外の疾患でも上昇します

  • 膠原病;シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎など
    • 感染症 肝炎、ウイルス感染症、結核、梅毒など
    • 肺疾患 間質性肺炎など
    • 肝疾患 原発性胆汁性肝硬変、肝硬変
    • その他 サルコイドーシス、悪性腫瘍

    といった病気でRFが陽性となることがあります。

    このように多様な疾患でRFが陽性となることがあるため、

    RF陽性≠関節リウマチ

    です。

    RFはリウマチの活動性を表す

    リウマチの方の経過を見ていく上で、RFの数値を1つ指標とします。

    RFの数値が経時的に上昇してくる場合にはリウマチ症状の悪化を反映していることがあります。

    ただし、RF単独で評価することはなく、リウマチの活動性の評価としては

    • 関節の腫れや痛み
    • 腫脹した関節数
    • 血液検査(CRP、ESR 1h 赤沈1時間)
    • 関節エコー所見

    などを用いて総合的に判断致します。

    抗CCP抗体とは

    抗CCP抗体は関節リウマチの滑膜に存在するCCPという抗原に対する自己抗体です。

    血液検査で検出でき、リウマチを診断・治療するうえで重要な検査の1つです。

    抗CCP抗体の基準値は4.5未満(U/mL)です。

    抗CCP抗体陽性≒関節リウマチ

    特異度とは陽性であったときにその疾患である可能性を表します。

    例えば、特異度90%ということは陽性の方の内90%がその病気であるということになります。非常にその病気である可能性が高いということになります。

    つまり、確定診断につかえる検査となります。

    リウマチの抗CCP抗体はRFと比較すると特異度が高い検査になります。特異度が高い検査では、その検査が陽性だとほぼ診断確定です。

    抗CCP抗体の特異度は95~98%と言われていますので、

    抗CCP抗体陽性≒関節リウマチ

    と言えます。

    一方でRFの特異度は50%ですので、RF陽性の方のうち、半数以上は関節リウマチではありません。つまり、RF陽性だからといってリウマチとは言えません。

    また、これらの検査結果は単独では意味がなく、身体所見やエコー所見(滑膜炎所見の有無)などと合せて初めて意味をなしてきます。

    抗CCP抗体陽性=リウマチ?

    UA患者で抗CCP抗体陽性の場合に関節リウマチと診断される割合

    関節リウマチを発症した患者さんは、発症よりかなり前から抗CCP抗体陽性になることがわかっています。

    抗CCP抗体が陽性でもまだ関節症状が出てきてなければリウマチを発症していない事があります。

    ただし、関節症状がなくても陽性の場合にはその後にリウマチを発症してくる可能性がありますので、3~6ヶ月ごとに経過観察させて頂いています。

    リウマトイド因子陽性、抗CCP抗体陽性なら関節破壊が進行しやすい

    リウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性の方は関節リウマチを発症した場合、関節破壊が進行しやすいと言われています。特に抗CCP抗体陽性の場合においては早期に十分な治療をしないと、1-3年以内に関節の変形が重度に進行しやすいこともわかっています。

    抗CCP抗体陽性の方が関節リウマチを発症した場合、早期に十分な治療をしないと、1-3年以内に関節の変形が重度に進行しやすいこともわかっています。

    抗CCP抗体が高い方は、積極的に先手、先手を打って治療していくことが重要です

    特に強陽性といって、抗CCP抗体が基準値よりも3倍以上高い方については特に関節破壊が早期に進行しやすいと言われていますので注意が必要です。

    抗CCP抗体の数値が高いとリウマチが重症なのか

    抗CCP抗体の基準値は4.5未満(U/mL)ですが、高い方では抗CCP抗体1,000以上の方もおられますが、抗CCP抗体の数値自体はリウマチの重症度とは比例しません。

    また、基本的には治療の効果の判定には用いることは出来ません。

    治療が奏功した場合に数値が低くなったり陰性になることがあり、薬剤調整の1助にすることがありますが普段は測定しません。

    抗CCP抗体の血液検査はリウマチ診断後の保険診療では、生物学的製剤変更判断目的の測定のみ認められています。

    まとめ

    リウマトイド因子や抗CCP抗体といった検査は関節リウマチの診断や治療において利用しますが、必ずしも陽性となるわけではありません。

    関節リウマチの診断の一助として使用しますが、身体所見やエコーなども用いて総合的に判断する必要があります。

    参考文献

    ・Berglin E, Johansson T, Sundin U, Jidell E, Wadell G, Hallmans G, Rantapää-Dahlqvist S. Radiological outcome in rheumatoid arthritis is predicted by presence of antibodies against cyclic citrullinated peptide before and at disease onset, and by IgA-RF at disease onset. Ann Rheum Dis. 2006 Apr;65(4):453-8. doi: 10.1136/ard.2005.041376. Epub 2005 Sep 21. PMID: 16176994; PMCID: PMC1798112.

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