メトトレキサートに注射が出たって聞きました。
経口薬と何が違いますか?
メトトレキサートの経口薬は嘔気などの消化器症状で使用出来なくなることがあります。
皮下注射は消化器症状が出来にくいと言われています。またメトジェクトの有効性は経口薬に劣らず、また週に1回の投与で治療が可能です。
今の経口薬から注射に変更出来ますか?
吐き気もあるようですので注射薬に変更してみましょう。
経口薬と注射で効果が少し異なりますので、調整が必要となります。
目次
国内初のメトトレキサート皮下注製剤
メトトレキサートは日本で約70~80万人いると言われている関節リウマチの治療において第一選択約となる薬剤です。
MTXはこれまで内服薬(商品名:リウマトレックス®など)として使用されていましたが、2022年9月に国内初の皮下注射製剤「メトジェクト®」が承認されました。
この記事では、メトジェクト®の特徴と使用方法、副作用について詳しく説明します。
>>メトトレキサートの内服薬による治療方法についてはこちらをご参照下さい
メトジェクト®の効果と特徴
- 速効性: 皮下注射後、30分程度で血中濃度が最大になり、半減期は約3時間と経口薬と同様です。。
- 効果: 国内試験では、ACR20%改善率がMTX経口剤群の51.0%に対し、皮下注射群は59.6%と、経口剤と同様の効果が得られています。
- 有害事象: 悪心などの消化器症状が経口投与より少なく、皮下注射では悪心が15.4%と、経口投与での34%の半分以下に抑えられている。
- 継続率: 経口投与の有害事象が72%に対し、皮下注射では57.7%と少なく、中止となったのは5.5%と比較的少ない割合です。
これらから今まで悪心でメトトレキサートが使用出来ていなかった方にも治療の選択肢の幅が広がります。
メトジェクト®の主な副作用
- 悪心: 13.8%
- 口内炎: 11.9%
- 血清ALT値上昇: 9.2%
ほとんどの副作用は投与中断により軽快します。
メトジェクト®の利点
- 週1回の投与: 内服薬は2回や3回に分けて内服する必要があるため、内服を忘れるリスクや消化器症状のリスクが高いが、メトジェクトは週に1回の投与で済む。
- 高容量投与: 皮下注射では経口薬より高容量で使用でき、副作用が少なく、疾患活動性をコントロールしやすい。
- 効果的なプリン生合成阻害: 皮下注射は経口薬よりもde novoプリン生合成を強力に阻害し、疾患活動性を低下させる効果があります。
メトトレキサートの経口薬の容量が増えると内服が大変ですが、一回の注射ですむ点が利点です。
メトジェクト®の用法用量
- 成人の場合: 通常7.5mgを週に1回皮下注射。効果や忍容性に応じて4週間程度を目安に2.5mgずつ増量し、最大15mgまで使用可能。
- 自己注射: 可能であり、使用時の痛みも少ない。
経口薬では数回に分けて内服することが多いですが、皮下注射薬は週に1回に全量を注射します。
経口から皮下注射に切り替える場合には、
メトトレキサート 経口内服量 | メイジェクト 初期用量 |
---|---|
6mg/週 | 7.5mg/週 |
8~10mg/週 | 7.5もしくは10mg/週 |
12~16mg/週 | 10もしくは12.5mg/週 |
を目安として切り替えます。
メトジェクトは内服薬より効果がある?
メトジェクトの特徴は週に1回の投与です。内服薬のメトトレキサートでは、2回や3回に分けて内服する必要があり、忘れたり時間がずれたりする問題がありました。また、1回で内服すると嘔気や口内炎などの消化器症状が起こりやすいです。
メトジェクトは、皮下注射により高容量を1回で投与でき、経口薬と比べて副作用に差がなく、疾患活動性もコントロールしやすいとされています1)。皮下注射に切り替えることで、長鎖MTXPGの37%増加、超長鎖MTXPGの132%増加が見られ、疾患活動性が31%低下するという報告もあります2)。
このような点から、このような点から、高容量を1回投与可能であるメトジェクトがメトトレキサートの効果を最大限に発揮する可能性を秘めています。
- メトトレキサート経口薬でコントロール不十分であった方の生物学的製剤やJAK阻害薬を使用前
- 高齢者で内服管理が難しい
こういった場合に使用することで、生物学的製剤やJAK阻害薬の使用割合を減らせる可能性があり、経済的な負担を軽減する効果も期待されます。
注射の方法
非常に持ちやすいサイズになっていて、針も細くて痛みもほとんど感じません。
注射に不安がある方は、図のような補助具を使う事で、針キャップを安全に取り外せ、 針を安定して注射することが出来ます。
副作用予防の葉酸補充
- 葉酸の役割: 葉酸はビタミンB群の一種で、赤血球を作り、DNAやRNAの合成を促進します。
- フォリアミンの補充: メトトレキサートは葉酸拮抗作用を持つため、副作用予防のために、投与後24~48時間以内に葉酸の補充(フォリアミン)を内服することが推奨されます。
これらの働きをメトトレキサートは阻害するため、副作用を生じます。貧血、嘔気・胃の不快感などの副作用を生じます。
それを予防するためにリウマトレックスなどの内服薬と同様に注射薬であるメトジェクトにおいても投与した24~48時間後に葉酸の補充「フォリアミン」を内服することが推奨されます。
使用上の注意点
禁忌:
- 妊婦または妊娠の可能性がある方
- 薬剤アレルギー
- 骨髄抑制
- 慢性肝疾患
- 腎臓に障害がある方
- 活動性結核
注意が必要な方
- B型肝炎の既往がある方
- 間質性肺炎の既往がある方
- 結核の既往がある方
使用前には、採血、尿検査、胸部XP/CT、B型肝炎、結核(T-SPOT)などの検査を行います。
メトジェクト®の適応
- 内服管理が難しい高齢者: 週1回の投与で管理が簡便になります。
- 胃腸障害がある方: 内服薬で悪心や消化器症状が強い場合に推奨されます。
- 内服薬で効果不十分な場合: 生物学的製剤やJAK阻害薬を使用する前の治療選択肢として有用です。
まとめ
〈 メリット〉
- MTX経口薬と比較して悪心といった消化器症状が出にくい
- 経口薬と同等の効果 もしくはそれ以上の効果があるかもしれない
- 内服薬でコントロール不十分な場合に、バイオ・JAKの使用前の治療選択肢となる
- 週1回で済むため、内服薬よりも管理がしやすい
〈 デメリット 〉
- MTXと比べて薬価が高い
MTX10mg/週の1月の3割負担 ジェネリック経口薬: 410円/月
メトジェクト®︎ :2640円/月 - 皮下注射による痛みを伴う
今回、メトトレキサートの皮下注射薬が出来たことで、今まで悪心などでメトトレキサートが使用出来ていなかった方、そして効果が不十分だった方への選択肢となります。
生物学的製剤やJAK阻害薬といった治療に行く前に使用することで費用を軽減出来る可能性があります。
経口薬と同様に使用中の注意は必要ですが、関節リウマチでお悩みの患者さんの治療の幅が広がることになります。