整形外科での診療において、X線検査(レントゲン)はかかせない検査ですが、最近は超音波検査(エコー)が診療に取り入られてきています。
レントゲンでは、骨や関節の状態を把握することが出来ます。
一方で、エコーでは骨や関節の細かな状態、そして靱帯、筋肉、腱、神経・血管などを観察することが出来ます。
エコーの検査は外来の診察室で行うことが出来ますし、放射線の被曝がないことがメリットです。
また、エコーで確認しながら処置をすることによって、目的とする場所に対して確実に処置を行うことが出来ます。
今回は超音波検査(エコー)のメリットについて説明いたします。
目次
痛みの原因はX線検査で分からないことも
レントゲン検査では骨や軟部組織を透過して映し出します。
それによって、骨や関節の状態を把握することが可能です。このレントゲン検査はかかせない検査であることは変わりはありません。
ただし、この診断に欠かせないツールであるX線検査は、射線の量も少なく。病院やクリニックで簡便に受けることが出来ます。
実際、X線検査の結果をもとに診断を行い治療を行うことが大半ですし、骨折の評価や変形、関節の状態を把握するためには欠かせません。
X線の良い点は関節や骨の状態の全体像を把握できる事でき、それを患者さんと共有することが出来ることです。
進化しつつある画像診断技術
ポール・ラウターバー(米)、ピーター・マンスフィールド(英)らが発明したMRI(核磁気共鳴画像)によって画像診断技術が格段に上がりました。
1980年代に普及し始めたMRIは、X線検査(レントゲン)では見えない脊髄・靱帯・筋・腱などの軟部組織を見えるようにして、関節や脊椎疾患の病態を密に病態把握できるようになり、それに伴い新しい治療法が生み出されてきて来ました。
しかし、MRIは場所を取りますし、また時間と費用がかかるため、簡便に受けられる検査ではありません。
一方、エコーはどこでも簡便に行う事が可能です。
以前は画質の問題から、臨床現場で使われることはすくなかったものの、現在は高周波リニアプローブの開発が進んだことから、体表近くの病態把握が出来るようになり、整形外科の治療においてエコーの重要が存在となりつつあります。
骨に異常が無いから大丈夫?
「捻った」「挫いた」といった病歴の場合に、レントゲンを撮影して骨折が無い場合には「捻挫」という診断を下されることが多々あります。
治療としては安静のための固定や湿布、痛み止めなどになってきます。
ただし、この捻挫も状態によっては重症度が変わってきます。状態によっては手術が必要になることもありますし、また固定期間を長くする必要がある場合もあります。
この靭帯の状態を把握するためにはX線検査(レントゲン)では不十分で、体表の中の状態を把握することが不可欠です。
整形外科におけるエコーの立ち位置
エコーは心臓・肝臓・腎臓など、深部にある臓器の観察には欠かせない検査装置です。内科、産婦人科、泌尿器科などほとんど全ての診療科で普及しています。
高周波リニアプローブが登場したことから、体表近くにある腱・靭帯・末梢神経が見えるようになり、整形外科でのエコーが普及してきました。
それでは、現在の整形外科におけるエコーの立ち位置について解説します。
整形外科におけるエコー検査
高周波リニアプローブが登場すると、エコーではMRIよりさらに細かな部分が観察できるようになりました。
MRIでは全体の病態の把握はしやすいのですが、細かな部分までは分かりにくいことがあります。
実際、MRIで関節の中を把握できますが、関節鏡を入れてみるとMRIでは見えなかった部分が分かることがあります。
エコーではMRIと異なり リアルタイムに体の中が見えるため、組織の状態を動かしながら把握することが可能です。そして、同時に触診を行うことによって、痛みの原因となる場所・原因を把握することが可能です。
エコーの臨床的価値
エコーは単に見るだけではなく、同時に治療につなげることが可能です。
手の感触や手技だけとは異なり、エコーを見ながら注射を行うことで精度の高い注射が可能となり、より密な治療が可能となりました。また、それにともないハイドロリリース、筋膜リリースなど新たな治療法が生まれてきています。
また、エコーを使って神経ブロックなどを行うことで確実に神経に麻酔薬を注射出来るようになり、治療や手術の前に痛み止めを行うことで、患者さんにとっても楽に治療を受けることが出来ます。
また今までは把握できていなかった病態が分かりつつあります。
これらによって、今まで以上に患者さんにとって時間的に負担が少なく、また患者さんの満足の得られるような治療を行うことが出来るようになってきました。
整形外科から整形内科へ
整形外科は運動器疾患を扱う専門科ですが、整形外科では手術をしてナンボといった意識が昔はあったとは思いますが、最近ではメスを使わない外来での治療方法を耳にすることが多くなってきています。
その背景には、エコーが運動器疾患に対する保存治療のレベルを飛躍的に向上させたことが挙げられます。
エコーの欠点
超音波検査では、見たい所をピンポイントに見ることが出来る一方で、全体を把握することがなかなか難しいと言えます。
そのため、徒手での検査、レントゲン検査と合わせて使用する必要があります。
レントゲン検査は全体の把握にはかかせません。
それぞれの検査の良い所を利用していくことが診断、そしてよい治療につながると考えています。
まとめ
超音波を使った検査と治療によって整形疾患の病態把握、治療方法が格段に上がってきています。
私もエコーを使って把握し、患者さんの満足の得られるような治療を行えるように心がけています。
何かお困りの際はいつでもご相談下さい。