最近気になることはありませんか?
ぶつけてもいないのに、ふともも付近が痛みます。
骨粗鬆症治療も長期になってきているようですね。
お薬の副作用で骨折を来すことがあります。
まずはレントゲンで確認してみましょう。
近年は高齢化社会となってきているために骨粗鬆症の方が年々増えてきています。それに伴い、骨粗鬆症による骨折が身体機能の低下や介護、そして命にも関わるために問題となりつつあります。
骨粗鬆症は高血圧などと同様に慢性疾患にあたります。骨粗鬆症の治療では、すぐに骨が強くなるわけではありませんので、長期的に治療を行う必要があります。
お薬を正しく使用することによる骨折予防の有用性は高く評価されているものの、一方で長期使用による問題点が指摘されています。
副作用自体はきわめてまれな副作用ではあるものの、起こった際には治療に難渋することになるため注意が必要になります。
今回は、骨粗鬆症治療の副作用とその予防についてお話します。
目次
骨粗鬆症治療で骨折は予防できるのか
そもそも骨粗鬆症治療で骨折の予防が出来るのかという点についてですが、しばしば使われるビスホスホネートという薬剤について中心に説明します。
毎日、週に1回や月に1回 朝一番に飲んでいる、または月1回外来で注射を受けている場合はそれはビスホスホネートと言われるお薬かもしれません。
ビスホスホネートによって大腿骨近位部骨折を30%程度は予防できると言われています。またすでに骨折した場合に、その後にビスホスホネートによる治療を開始することで反対の骨折を70%減ったと報告されています1)。
このように非常に有用なお薬ではありますが、注意点がいくつかあります。
骨粗鬆症治療の副作用について
骨粗鬆症治療による合併症として、程度は様々ですが、比較的よくみられるものは以下になります。
- 胃腸障害
- 筋肉痛
- 低カルシウム血症
胃腸障害については摂取する際に水分を十分に取って頂くことである程度予防することが出来ます。
低カルシウム血症については、注意を要する薬剤の場合には投与後2週間~1ヶ月の段階で血液検査でカルシウムの数値が下がってきていないか確認しています。また、カルシウム製剤やvitDなどを内服して頂くことで予防しています。
こういった副作用は薬剤を変更したり、予防することである程度防いだり、改善することが可能です。
その他、起こることは珍しいが、起こると大変な副作用があります。
- 顎骨壊死
- 非定型骨折
ビスホスホネートやデノスマブなどの骨粗鬆症治療薬は骨折予防に有効ですが、副作用として顎骨壊死(ARONJ)や非定型骨折が報告されています。
顎骨壊死って何?
骨粗鬆症治療を行っていきますが、歯の治療は受けていますか?
この間歯医者さんに言ったら今度抜歯が必要と言われました。
口の中が汚いと、お薬の影響であごの骨が溶けてくることがあります。
まずは歯の治療を行って下さい。
その間は治療中でも問題のない治療薬を使っていきましょう。
治療が終われば教えて下さい。
顎骨壊死というのは
あごの骨の一部が腐って、口の中に露出してくる状態
のことです。
あごも骨の一部になりますので、この部分に副作用が出ることがあるのです。
症状としては
あごが重い、鈍痛がある、うずく
歯肉が腫れる、膿みが出る
歯の動揺
骨の露出
歯周病や抜歯の際など 歯は周囲にさらされるためにばい菌が入りやすく炎症が起りやすい場所です。
そういった炎症がある場所に起りやすく、その部位にビスホスホネートがたまり、骨の代謝が過剰に抑制されて骨の細胞が壊死すると言われています3)。
顎骨壊死のリスク
- ステロイド治療
- 糖尿病
- 喫煙
- 飲酒
- 口腔内環境の不良
- 抜歯
- 歯科インプラントの埋入
治療開始前に歯科治療を行い、口腔内環境を整えておくことが顎骨壊死の予防になります。
そのため骨粗鬆症治療開始前の段階で、必ず歯科にかかって頂くようにお願いしています。
治療中も、歯科による定期的な口腔内ケアによって健全な歯を維持していくことが必要になります。
骨粗鬆症治療中に起こるのは1~10万人に1人程度と言われており3)、非常に頻度は少ないものですが、一度かかると治療に難渋すると言われています。
骨粗鬆症治療中の注意点
- 歯科検診: 治療開始前に必ず歯科検診を受け、治療中も定期的に歯科医の診察を受ける
- 適切な薬剤使用: 副作用が出た場合は、薬剤の変更や休薬を検討
- 口腔ケア: 毎日の口腔ケアを徹底し、感染を予防
骨粗鬆症治療は非常に有用で大切ですが、副作用がなく過ごせるためにも歯を大事にして頂くようお願い致します。
歯の治療の際の休薬について
歯の治療の際の休薬については、日本口腔外科学会からポジションペーパーという形で意見が述べられています。
簡単には
① 骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤)の休薬が 顎骨壊死の 発生を予防するかははっきりとしない
② 感染が顎骨壊死の引き金であり、感染予防が発生には大切である
③ 骨粗鬆症治療薬の休薬によって、骨折リスクが上昇する
④ ビスホスホネート製剤による骨折リスクを軽減するメリットがが、顎骨壊死のリスクよりも勝っている
といったことから、歯科治療の際には
積極的に休薬する必要はないものの、リスクのある患者については休薬を検討する
となっています。具体的には、
- 骨吸収抑制薬投与を 4 年以上受けている場合
- ONJ のリスク因子を有する骨粗鬆症患者に侵襲的歯科治療を行う場合
に 2 カ月前後の骨吸収抑制薬の休薬について検討します。休薬については骨折リスクと勘案する必要があります。
非定型骨折って何?
ビスホスホネートやデノスマブなどの骨粗鬆症治療薬を長期間使用した結果、骨が硬くなりすぎて柔軟性を失い、通常の骨粗鬆症による骨折とは異なる「非定型骨折」を引き起こすことがあります4)5)。
硬くなりすぎると、骨のしなりがなくなり、力が分散されません。日常生活で、毎日のように大腿骨に負荷がかかり、微小な骨折をきっかけに大きな骨折が起ります。
国内での発生頻度は32−59/100万人・年と言われています。
起る確率は低いものの、非定型骨折をおこすと痛みを伴うことはもちろんですが、薬剤の影響で骨形成能力が弱く、骨癒合が難しく、治療に難渋することがあるため注意が必要です。
非定型骨折の予兆と診断
非定型骨折の予兆として、大腿部の痛みがあります。レントゲンでの特徴として、大腿骨外側の膨隆が確認されることがあります。
また、非定型骨折の特徴としては、転倒して尻もちを付いて骨折したといった受傷起点がないことです。例えば「歩いているときに崩れるようにしてこけた」といった受傷の仕方の患者さんがいたことがあります。
1年に1回程度大腿骨に異常がないか確認しておくことをお勧め致します。
非定型骨折の予防
ビスホスホネート製剤は効果が得られるようにするためには少なくとも2-3年の継続が必要になります。
しかし、長期投与は弊害もあるため、「5年」という期間を1つの基準に継続か休薬を検討することが推奨されています。
ビスホスホネートを中止することで、非定型骨折のリスクを下げることが出来ると言われてます5)ので、目標の骨密度に達していれば中止を検討します。
現在言われている休薬についての案として
が言われています6)。
>>骨粗鬆症の診断、Tscore・YAMについては骨粗鬆症にこちらをご参照下さい。
つまりリスクがまだある患者さんには治療継続が必要ですし、治療効果次第で治療薬の変更を積極的に検討していく必要があります。
5年治療すれば必ずしも骨粗鬆症治療を必ずストップする訳ではありませんが、リスクとベネフィットを考えてビスホスホネート製剤の休薬を検討します。
患者さんへのお願い
大腿部に痛みが出てきた際にはいち早く受診するようにして下さい。
治療が長期になってきている場合は医師とご相談下さい。
まとめ
ビスホスホネートやデノスマブは骨粗鬆症治療に効果的ですが、副作用として顎骨壊死や非定型骨折が発生することがあります。
予防策として以下があります。
- 歯の治療: 治療前に口腔内を整えること。
- 長期治療の見直し: 5年を目安に治療内容を再評価。
- 定期的なレントゲン確認
骨粗鬆症治療は骨折予防に非常に有効ですが、副作用リスクを考慮しながら、正しく治療を継続することが大切です。皆さんが元気に過ごせるために、安全な治療を心掛けましょう。