DEXAの結果ですが
骨密度が低く、YAMが70%を切っていて骨粗鬆症の診断です。
今後骨折のリスクがあります。治療を始めましょう。
実感がわきません
骨折するとどうなりますか?
一度骨折すると治療にリハビリも含めると半年くらい治療にかかります。
足が骨折したらその期間まともに歩けませんし、杖歩行になることもあります。
目次
はじめに
骨粗鬆症とは、骨量が低下し、骨組織の微細な構造が壊れることで、骨が脆くなり、骨折のリスクが高まる病気です。
骨は常にリモデリングされており、古い骨が吸収され(骨吸収)、新しい骨が形成されます(骨形成)。
骨吸収>骨形成→骨粗鬆症
ホルモンバランスや年齢によって骨のバランスが崩れることで骨粗鬆症になります。骨折すると治療に時間と体力がかかるため、予防が重要です。
骨粗鬆症治療の治療評価
骨粗鬆症治療の評価は主に骨密度の増減で行いますが、結果が出るまでに時間がかかります。
そのため、骨密度の検査自体は半年に1回程度をお勧めします。
密度の数値に現れるのも微小な変化なこともあり、骨密度検査では治療効果がすぐには分かりにくいという何点があります。
そのため、骨密度以外の骨粗鬆症の効果治療判定として、骨代謝マーカーを用いて行っています。
開始前に骨密度、骨代謝マーカーを測定しておくことで、後々の数値と比較することで治療効果判定を行う事が出来ます。
今回は、骨粗鬆症の治療の際に必要となる骨代謝マーカーと、その他の採血項目について説明致します。
骨代謝(骨吸収と骨形成)マーカーって何?
骨代謝マーカーは骨の新陳代謝状態を反映する指標で、骨吸収と骨形成の両方を測定します。
骨の代謝は骨を融解(骨吸収)する破骨細胞と、骨形成を行う骨芽細胞によって行われています。
・骨吸収マーカー:骨が溶ける量の資料
・骨形成マーカー:新しい骨が作られる量の指標
高回転型か低回転型か
骨の代謝は高回転型と低回転型に分かれます。
1.高回転型の骨
骨吸収マーカー:高 骨形成マーカー:高
この場合、骨形成は問題なく行われているのですが、骨吸収が骨形成を上回ると骨量が減少します。
閉経後は女性ホルモンが欠乏し、骨の代謝回転が亢進して骨吸収が骨形成を上回り、高回転型になります。高回転型は高齢女性に多いです。
また、あまりにも代謝のスピードが速すぎると骨が成熟せず、骨の質が下がってしまいます。
2.低回転型の骨
閉経による変化は、60歳以降には少し落ち着き、次第に老化に伴って骨の代謝回転が低下していきます。
骨の新陳代謝が低下して骨形成、骨吸収が共に健康な人より下回り、骨形成が骨吸収より低下すると骨量が減少します。
代謝マーカーの種類
骨代謝マーカーは血液または尿検査で測定します。日内変動が少なく、腎機能の影響が少ないことから以下のマーカーがよく使用されます。
- 骨吸収マーカー:TRACP-5b,NTX(尿)
- 骨形成マーカー:BAP、P1NP
TRCP5bが309以上で骨量が減少、420を超えると骨折リスクがあると言われています。
骨吸収マーカーで治療効果が分かる?
お薬は効いていますか?
DEXAで骨密度が上昇していますので、効果が出てきています。
骨のマーカーでも骨吸収が抑制出来ているためお薬は想定通り効いてくれています。
3年治療を続ければ、骨折リスクがかなり減らすことが出来ると思います。
継続が肝心です。
安心しました。続けていきます。
骨吸収マーカーが少しでも上昇しているようであれば骨吸収抑制薬の積極的な投与が推奨されます。
ビスホスホネート製剤(週1回や月1回の内服薬)
プラリア
イベニティ
骨吸収マーカーは治療開始前と治療開始後を比較して変化量から効果判定を行います。
<治療開始前検査>
- 骨密度(DEXA)
- 骨代謝マーカー(骨吸収マーカー、骨形成マーカー)
<治療開始後3~6ヶ月>
- 骨代謝マーカー
<治療開始6ヶ月>
- 骨密度検査(DEXA)
このような流れで検査を行っていきます。
その他、薬剤を変更した場合は変更時と変更後6ヶ月以内に再度検査を行い、効果判定を行います。
代謝マーカー結果の評価
最少有意変化(mimnimum significant change:MSC)が各マーカーで決まっていて、それを超えるか、もしくは閉経前女性の基準値内に維持されている場合には効果ありと判定します。
最少有意変化というのは、元の数値からの変化量(%)になります。以下が各項目の基準値(min~max)とMSCの数値になります。
項目 | 閉経前 | 閉経後 | 男性 | 最少有意変化% |
intactP1NP | 14.9~64.7 | 27.0~109.3 | 19.0~83.5 | 12.1 |
BAP | 2.9~14.5 | 3.8~22.6 | 3.7~20.9 | 9.0 |
TRACP-5b | 120~420 | 250~760 | 170~590 | 12.4 |
骨形成マーカーで治療効果が分かる
テリパラチド
イベニティ
先ほどの通り、日内変動が少なく、腎機能障害の影響の受けないBAP、P1NPが使いやすく、それらが用いられます。
骨形成治療薬(テリパラチド)を開始してから骨形成マーカーがすぐに著しい上昇を来たすため、少し落ち着いた4ヶ月程度の段階で評価を行います。
ビタミンD
ビタミンDは骨密度や筋力維持に重要で、日光を浴びることで皮膚で生合成されます。ビタミンDはビタミンDは骨・ミネラル代謝の維持に重要な要素で、骨密度や筋力維持に必要です。
しかし、現代人や高齢者は特に家にいる時間が多く、日照時間が短いためにビタミンDが不足していることが多いです。
ビタミンDが不足すると、骨粗鬆症治療薬の効果が減少します。治療前にビタミンDの充足度を確認し、不足している場合は補充が必要です。
具体的には25OHビタミンDで評価します。
- 20ng/mL未満:ビタミン D 欠乏
- 20~30ngmL :ビタミン D 不足
- 30ng/ml以上:ビタミンD充足
ビタミンDが不足していると骨粗鬆症治療薬の期待される効果が発揮されないため、不足している場合は補充が必要です。
治療開始前の検査について
治療開始前の検査としては、骨代謝マーカーだけではなく、一般的な採血と尿の検査を行います。
基礎疾患による続発性骨粗鬆症
ではないか確認するためです。
採血結果から、転移性骨腫瘍、骨の疾患、骨・カルシウム代謝異常が明らかに無いか確認します。糖尿病、慢性腎不全、肺気腫、関節リウマチなども骨粗鬆症の原因の1つです。
以下が一般的な採血になります。
肝臓関連:Alb、T-Bil、AST、ALT、Gamma-GTP、ALP
腎機関連:BUN、Crea、eGFR
コレステロール 尿酸:T-cho、TG、LDL、HDL、UA
血糖値:血糖、(HbA1c)
電解質:Na、K、Cl、Ca、P
尿検査
代謝マーカー:TRACP-5b、P1NP
25OHビタミンD
たとえば高カルシウム血症がある場合には、多発性骨髄腫、副甲状腺機能異常などの可能性があります。
また腎機能の状態によっては、骨粗鬆症に対して使える薬剤も限られてきますし、副作用の可能性が上がりますので慎重に薬剤を選択する必要があります。
マーカー検査の費用について
骨吸収マーカー、骨形成マーカーは1つずつのみ測定しますが、項目によって少し差がありますが、1項目あたり3割負担で500円になります。
毎回測定するものではなく、基本的には最初と効果判定の際に測定しますので、毎回の負担にはなりません。適切な治療を受けるために必要なものになります。是非検査を受けておくことをお勧めします。
まとめ
骨粗鬆症の治療では、骨密度と骨代謝マーカーを用いて効果を評価します。
骨代謝マーカーは、治療の適切さを確認するために重要です。
さらに、採血で他の基礎疾患を把握することで、より効果的な治療が行えます。適切な治療を受けるために、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献
骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイド2018年版、一般社団法人 日本骨粗鬆症学会