臨床所見から関節リウマチと考えます。
早くこの痛みを何とかして欲しいです
関節リウマチの治療では自分の免疫を抑えるお薬を用いるため、感染のリスクが上がります。
B型肝炎やC型肝炎、結核、肺病変などお持ちでないか確認しておいておくことで、比較的安全にお薬を使うことが出来ます。
目次
治療前の検査
関節リウマチは中高年で発症しやすく、長期的な治療が必要な疾患です。
関節リウマチの治療では免疫機能を抑制することになるため、それに伴う合併症を来す可能性があります。
そのため治療を始める前に、適切な薬剤を選択するために患者さんの背景を詳細に調べることが重要です。
- B型肝炎、C型肝炎の感染の有無
- 肺疾患 間質性肺炎・結核・真菌感染(TSPOT、βDグルカン)など
- 肝機能・腎機能
などを採血や胸部レントゲン・CT検査を用いて調べます。
B型肝炎
B型肝炎の既往がある場合、免疫抑制剤の使用中に再燃するリスクがあるため、HBV-DNAの定期的なモニタリングが必要です。
関節リウマチの治療の際に免疫抑制剤を使用した場合、B型肝炎が活性化してくることが報告されています。
そのため安全にお薬を使用するために、定期的(1ヶ月毎)にHBV-DNAの量を測定して、B型肝炎ウイルスが体の中に存在するかを調べます。
HBV-DNA≧2.1 log copies/ml となった場合にはB型肝炎が体の中にいると考えて、免疫抑制剤を使用する前にB型肝炎の治療を行うことが推奨されます。
C型肝炎
C型肝炎ウイルスキャリアの場合は消化器内科の専門医に抗ウイルス薬治療を要するか相談いたします。
C型肝炎の場合、B型肝炎のHBV-DNAのようにウイルス量を定量化する方法が確立されていません。そのため、採血や超音波検査などで肝機能異常や肝硬変の進行がないか注意しながら確認していくことになります。
潜在性肺結核
関節リウマチの治療前に、潜在性肺結核の有無を確認するため、以下の検査が行われます:
- ツベルクリン反応
- 方法: 結核菌培養ろ液から精製した抗原(PPD)を皮内に投与し、48~72時間後に接種部位の発赤を測定して判定します。
- 注意点: 日本ではBCG(結核ワクチン)を接種しているため、偽陽性が出ることがあります。そのため、胸部レントゲンやTSPOTなどの追加検査が必要です。
- IGRA(インターフェロンガンマ放出試験)
- QFT(クオンティフェロン): 結核菌特異抗原で血液を刺激し、産生されたインターフェロン-γの総量を測定します。
- TSPOT: インターフェロン-γを産生した細胞(スポット)の数を測定します。
IGRAは感度と特異度が高く、信頼性の高い検査です。これらの検査を用いて、感染の有無を確認します。
追加検査
- 胸部レントゲン
- CT検査
これらの画像検査で、肺内の異常を確認し、潜在性肺結核の診断を補完します。
潜在性肺結核による結核再燃のリスクが高いと判断された場合、あらかじめイソニアジドによる予防的な治療を行うことがあります。これにより、関節リウマチの治療中に結核が再燃するリスクを最小限に抑えます。
合併症と治療薬
関節リウマチに対して最初に検討する薬剤はメトトレキサートというお薬になります。
しかし、メトトレキサートは慢性腎不全、ウイルス性肝炎、肝硬変、呼吸器障害などがある患者さんには使用が出来ません。そのため、その他の薬剤を選択することになります。
薬剤にはそれぞれに特徴があり、患者さんの背景に合わせて薬剤を選択、調整していくことになります。
まとめ
関節リウマチの治療は、症状の緩和と関節破壊の進行抑制の2つの目的があります。
治療薬は患者の背景や病状に合わせて選択され、効果的な管理が行われます。
長期にわたる治療には、定期的な評価と適切な薬剤調整が必要です。