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ぎっくり腰は整形外科へ!
「ぎっくり腰」とは、何か物を持ち上げようとしたり、腰をねじる動作をしたり、朝起きた直後などに急に起こる強い腰の痛みを指します。
特に高齢者の場合、この症状は脊椎圧迫骨折であることが多いです。
圧迫骨折を放置すると、骨が変形して痛みが残ったり、姿勢が悪化して視界が悪くなったりします。
場合によっては手術が必要になることもあります。
急性腰痛と慢性腰痛について
腰痛は以下の3つに分類されます:
- 急性腰痛: 発症から4週間以内
- 亜急性腰痛: 発症から3か月未満
- 慢性腰痛: 発症から3か月以上
特に急性腰痛や亜急性腰痛の場合、大きな病変が隠れていることがあります。
ぎっくり腰と腰痛の原因
ぎっくり腰は単なる急な腰痛と思われがちですが、その中には治療が必要な病気が隠れていることがあります。腰痛の主な原因は以下の通りです:
- 椎体骨折(圧迫骨折)
- 椎間関節障害
- 椎間性疼痛
- 腰部脊柱管狭窄症
- 軟部組織損傷(腱、靱帯、筋肉損傷)
- 病的骨折(転移性腫瘍)
- 硬膜外膿瘍
- 大動脈解離 など
など様々です。
その中で高齢者に多く見られるのが圧迫骨折です。
圧迫骨折は痛みが軽い場合もあり、気付かずに放置してしまうことがあります。
脊椎圧迫骨折とは
脊椎圧迫骨折は、上下方向からの力が加わり、背骨の椎体が骨折して扁平になるものです。
高齢化社会に伴い、骨粗鬆症患者が増えています。軽い衝撃や体重の重みでも骨折することがあり、
「いつの間にか骨折」
とも言われます。
尻もちをついたり、重いものを持ったりすることをきっかけに圧迫骨折を来します。
「何もしていないのに骨折してるの?」
とびっくりされることがありますが、それだけ骨が脆い(骨粗鬆症)のです。
Red flags(危険信号)について
腰痛には重大な疾患が隠れている可能性があります。
特に以下の症状がある場合は、整形外科での精密検査を受けましょう:
- 発症年齢が20歳未満 or 55歳以上
- 時間や活動性に関係のない腰痛
- 胸部痛
- 癌、ステロイド治療、HIV感染の既往
- 栄養不良
- 体重減少
- 広範囲に及ぶ神経症状
- 構築性脊椎変形
- 発熱
圧迫骨折の診断方法
圧迫骨折の診断はX線検査、CT、MRIによる画像検査で診断します。
- X線検査
上の左図のように四角い椎体がひしゃげていることが分かります。
ただし、変形が少ない場合は診断出来ない場合があります。また、以前の画像が無い場合は昔の骨折とと新しい圧迫骨折かの区別が付きにくい
- CT検査
CTではX線検査よりもより詳細に椎体の状態が分かります。
X線では分からない場合でも、CTでは椎体がへこんで骨折線が分かることがあります。
ちょっとした陰影の変化や骨の突起などで、分かりにくい骨折も判明出来ます。
ただし、全くつぶれてない場合はCTでも診断出来ない場合があります。
- MRI検査
高い診断率(90%以上)で骨折を確認出来ます。
高齢者の腰痛患者ではレントゲン撮像を行いますが、初期ではあまり椎体が潰れていないことがあり、診断が難しいことがあります。
骨折リスクのある患者さんでは
MRI撮影をお勧めします
治療内容
疼痛コントロール
体幹コルセット、体幹ギプス 2-3か月
骨粗鬆症の治療 内服・点滴・注射など様々
手術加療
骨折の治療の原則は固定と安静です。基本的にはコルセットなどによる保存的加療を行います。
あまりにも痛みが強く体動困難な場合や麻痺を合併している場合は手術加療を行うことがあります。
骨折の治療の基本は固定と安静です。
体幹コルセットは患者に合わせて作成され1週間くらい作成に時間がかかります。
高齢の患者さんにとってこのようなコルセットを着けた状態で生活することは非常に苦痛ではありますが、骨折による椎体圧壊や疼痛軽減のために2-3ヶ月の装着して頂いています。
横になっている際や夜間は外して頂いても大丈夫です。
最近では、フィットキュア®・スパインFit Cure-Spineという市販の優れたコルセットもあります。
脊椎の変形が強い方や、痛みが強い方で位置早く固定した方がよい方にお勧めです。
手術加療について
椎体の中にvacuum cleftといったものがあり、コルセットなどではなかなか骨癒合が得られなさそうな場合があります。
そういった場合で痛みが強く、神経障害も出てきているような方もおられ、そういった方に対しては手術を行うことがあります。
最近ではBKP(balloon kyphoplasty)といって骨折している部分にバルーンを挿入して拡張して作った空間に骨セメントを充填することで、骨折部分の高さを回復させ、安定化させる方法があります。
手術時間も短く、傷も小さく出来る手術で、術後すぐに痛みが取り除けることが出来ます。
ただし、セメント自体が自身の骨よりも固いために、上下の骨が再度骨折してしまうことがあるという点が注意点です。
その他、後方固定術や除圧術などを行うことがあります。
圧迫骨折=骨粗鬆症
また、圧迫骨折を来している方はその時点で骨粗鬆症の診断です。
骨粗鬆症患者においては骨折の連鎖を食い止めることが非常に重要です。
圧迫骨折の患者では骨密度の検査DEXA、採血(骨粗鬆症に関する検査)を行い、早急に骨粗鬆症の治療を開始しましょう。
骨密度の度合いや骨折の状態によって骨粗鬆症の重症度を判定して治療薬を選択します。
いわゆる重症の骨粗鬆症にあたる場合には、テリパラチド(フォルテオ・テリボン)やロモソズマブ(イベニティ)、アバロパラチド(オスタバロ)といった治療薬を推奨しています。
>>重症の骨粗鬆症「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」についてはコチラを参照
まとめ
「ぎっくり腰」と軽く考えず、早めに整形外科を受診しましょう。特に高齢者は圧迫骨折の可能性が高く、放置せずに診察を受けることが重要です。
適切な治療を受けて、健康な生活を取り戻しましょう。