足首の捻挫は皆さんも人生で1度は体験したことがあるのでしょうないでしょうか。
足首を捻った際には、捻挫だけでなく骨折を起していることがあります。
骨折を放置していても治りにくく、変形して痛みが残ることになります。
今回は、足首の損傷について注意点と治療について説明致します。
目次
足首を捻って痛いのは捻挫?
足首を捻って足首の痛みがある場合には、捻挫をイメージされる方が多いと思います。
しかし、その中には骨折が隠れていることがあります。
たまに捻挫と思って1週間くらい様子を見ていたものの、痛みが強く、家でなんとか過ごしていたけれど耐えられなくなって受診されて、骨折が判明する方がおられます。治療が遅くなれば、治るのも遅くなりますし、あまりに遅いと適切な治療が受けられいかもしれません。
すごく我慢強い方なのだなと思う反面、そこまで我慢せずに「早く受診して頂ければ」と思うことがあります。
普段、かかりつけのない方が医者にかかることに対して抵抗感があることは分かりますが、ちょっとした疑問点でも、ご相談でも受診して頂いて問題ありません。
今回は足首の捻挫と思った際の注意点と検査や治療方法について説明します。
足首の捻挫について
足の周りに靱帯という骨を互いにつなぐ強靱な繊維性の結合組織があります。
靱帯は関節に付いており、関節を保護し、運動を制限する役目があります。指や膝、足の関節がまっすぐと伸ばした状態でとどまっているのは靱帯のおかげです。
足首の周りに外側、内側にそれぞれ靱帯があります。上の図は外側の靱帯を表しています。内側にも靱帯があります。
捻挫とは、関節にかかる力に靱帯が耐えきれずに痛めてしまうことを言います。
捻り方にもよりますが、内外側ともに痛めることが大半です。
時に外果(外側の部分)の方が内果(内側の部分)よりも長く、外側への制動が強いため内側の捻挫が多いと言われています。また、前距腓靱帯(ATFL)は破断強度がその他の靱帯よりも弱いことや解剖学的な性質から損傷しやすいと言われています1)。
足関節骨折について
足関節骨折では図のように骨折することが多々あります。
足関節骨折は捻挫の延長線と思って下さい。捻り方は同じで、それによって靭帯を痛めるのか、骨折してしまうのかの違いだけですので、捻り方だけでは判断出来ません。
また運動だけではなく、歩いていて捻って骨折する方も大変多いですので安易に捻挫と思わないようにして下さい。
また、骨折の場合には大抵の場合が足関節の関節内での骨折になりますので、変形治癒した場合には変形性足関節症のリスクとなります。そのため図のように転位(ずれ)のある骨折の場合には手術を行うことになります。
捻挫なのか骨折なのか
検査としては
- レントゲン
- 超音波検査
- MRI検査
を状態に応じて行います。
捻挫か骨折かの1つの指標としてオタワルールというものが言われています。
「図の4カ所を触って圧痛がなくて、4歩以上歩ければ足関節骨折が除外出来る」
というルールです2)。
感度94.8%、特異度42.3%言われており、スポーツの現場において骨折の除外を行う際には有用な情報となります3)。
これを用いてある程度は判断推測しますが、腫脹が強い場合には難しいことがあります。
そのため、必ずレントゲンは確認させて頂いています。骨折の有無はレントゲンで大抵判断出来ます。
ただ微小な骨折の場合には当初は判別つかないことがあります。そのため、痛みや損傷具合によってCTやMRIを確認することがあります。CTでは骨折の有無が非常に明瞭に見えますし、MRIでは骨折部位だけではなく、靭帯損傷の場所・程度がはっきりとしてきます。
また、超音波検査では骨折を判定したり、靭帯損傷の程度を判別出来ます。
捻挫の治療
靭帯損傷の度合いによって固定期間が変わってきます。Grade1-3(軽傷-重症)に分類されます。Grade1は靱帯が伸びた状態、Grade2は部分断裂、Grade3は完全断裂になります。完全断裂になると不安定性が出てきます。
受傷時は足関節全体が腫脹しているため、痛みの部位が分かりにくく、どの靭帯が傷んでいるのか、損傷具合が分かりにくいことが多くあります。
そのため1週間固定を行い、少し落ち着いたタイミングで再度痛みの部位を確認します4)。
足関節骨折の治療
骨折の治療は
- 保存的加療(ギプスなど)
- 手術(金属の板やネジを用いて固定)
の大きく2通りになります。
転位がある場合には手術加療、転位がなければギプス固定などによる保存的加療を行います。
一般的に足関節骨折は関節内の骨折になりますので、2mm以上の転位がある場合に手術を行うことが多いです。しばらくは免荷といって足に体重をかけないように松葉杖を使って歩いて頂きます。
どのような骨折でも、骨折部分がしっかりとくっついてくれるのには2か月程度かかります。癒合してから、リハビリによる荷重訓練や可動域訓練が必要になります。
一度骨折したら、元通りに戻るには半年くらいかかるかもしれないと思っておいて下さい。
足を捻って痛みがある場合の初期対応
捻った場合には甘く見ずに医療機関を受診してください。
60歳以上の高齢者では骨折が多いので、放置せずに受診してください。ただ若年でも骨折することはありますのでご注意下さい。
レントゲンで骨折部分が転位している場合には早期の整復・固定が必要です。転位が大きい場合は、そのまま放置していると血管・神経が損傷してしまうことがあります。
場合によっては緊急での手術が必要となることもあります。整形外科のいる医院・病院を受診して下さい。
とはいえ、受診までに行って頂きたい応急処置としてはRICEと言われるものが有名です。
Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)
で、頭文字を取って略してRICEです。
- RICE(安静)
ケガをしたら、まずは安静を保つことが大切です。安静のため動かさないようにするために固定が必要になりますので、添え木やタオルなどを当てて固定してください。
- Icing(冷却)
患部を冷やすことで、出血を抑え、腫れや内出血、痛みを抑えます。
ただし、凍傷にならないようにアイスノンや氷の入ったビニール袋などで直接冷やすのではなく、タオルなどでくるんで冷やすようにして下さい。
- Compression(圧迫)
患部を巻いて圧迫することで腫れや出血を抑えます。
注意としてはきつすぎると血流が阻害されて、患部よりも先の色が紫色になってきて、しびれなどが出てくることがありますので、その場合は圧迫を緩めるようにして下さい。
- Elevationa(挙上)
患者を可能な限り上にあげておくようにしましょう。目安は心臓です。
例えば足の損傷の場合には、寝る際にクッションや枕を足の下に引いて高い位置に維持するようにして下さい。
まずは受傷した際にはRICEを心がけて頂くことで腫れにくく、腫れも引きやすくなります。
骨折や捻挫を放置してパンパンに足首が腫れてくると、水疱といって水ぶくれが出来てしまいます。
それが出来ると、水疱からばい菌が入りやすくなるために手術による治療が出来なくなり、治療が遅れることになりますのでご注意下さい。
まとめ
足首の捻挫と思っていたら、骨折などが隠れていることがあります。
捻挫と思っても甘くみず、一度は整形外科へ受診されることをお勧めします。
参考文献
4. 高倉義典(2010)「図説 足の臨床」メジカルビュー社