先生、急に足の親指が痛くなって腫れてきました
今まで検診などで尿酸値が高いと言われたことはありませんか?
以前尿酸値が高いと言われたことがあります。
痛風かもしれません。腫れている部分から検体をとって確定させましょう。
採血で尿酸値と炎症反応を確認しておきます。
この痛みはどのくらいで良くなりますか?
ロキソニンをしっかり内服すれば1週間以内に大抵良ります。
落ち着いたら再発予防のために尿酸値をコントロールしていく必要があります。
その他高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病がないか確認しておきましょう。
目次
痛風とは何か?
急に足の付け根や手の指に痛みが出てきた場合、痛風発作の可能性があります。
痛風の原因となる高尿酸血症はそれ自体に自覚症状がないため、健康診断などで偶然指摘されることが多く、若い方であれば発作による痛みが生じて初めて気づくことが多いです。
高尿酸血症の基本情報
高尿酸血症は、血液中の尿酸値が高い状態(7.0mg/dl以上)を指します。
尿酸は、ビールなどに含まれているプリン体が体内で分解される際に生じる老廃物です。
体に必要以上のプリン体を摂取すると尿酸が増え、尿から排出しきれず体に蓄積されます。
特に体温の低い末端部である足の指などの関節に尿酸結晶が形成され、それが激しい痛みを引き起こします。
この痛みを生じるような状態のことを「痛風」と言います。
「痛風」は高尿酸血症の結果、起こります。
ただ、高尿酸血症の方が全員が痛風発作を起こすわけではなく、脱水や飲酒などによって尿酸値が大きく変動した際などに痛風を起こすとも言われています
欧米化で痛風は増えている
最近は食生活が欧米化してきていることで高尿酸血症の方は年々増加しています。
痛風の原因
痛風の原因として、以下の要因が挙げられます:
- 肥満
- 飲酒
- 運動不足
- ストレス
- 高プリン体食品の摂取
高尿酸血症・痛風の発生率
成人男性の25%程度と4人に1人の割合で高尿酸血症で、女性は比較的すくなくて5%程度と言われています。
その方々は痛風の予備軍に該当します。
痛風になっている方は30歳以上の男性で1%を超えていると言われていて、痛風になっている人は全国で100万人を超えると言われていて増加傾向にあります。
痛風は万病の元
高尿酸血症患者の80%に高血圧、肥満、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が合併していると言われています。
高尿酸血症は動脈硬化、脳卒中、虚血心疾患(心筋梗塞など)、心不全といった命にかかわる疾患とも密接な関連があると言われています。
高尿酸血症が生活習慣病や臓器障害の予測因子となるという報告もあります。
痛風が起こった際には痛風のみならずその他の疾患が隠れていないか確認することが大切です。
高尿酸血症と合併症
高尿酸血症は、痛風の他にも以下のような合併症を引き起こすことがあります:
- 腎臓への影響(尿路結石、腎障害)
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
高尿酸血症の患者の約80%がこれらの生活習慣病を併発しています。
痛風発作の診断
痛みの部位と関節液の所見から診断します。
痛みのある部位の関節から関節液を採取してその関節液に尿酸結晶があることから確定します。
また「偽」痛風や化膿性関節炎(感染)の場合も同じように赤く腫れあがり、痛みが生じることがあるので注意が必要になります。
腫れている場所や痛みの程度などで判断しますが、感染が隠れていることがありため注意が必要です。
そのため、基本的には赤く腫れた場合には関節液を採取させて頂き、検査に提出します。
実は発作の際には尿酸値が低いことがあるため、採血では診断出来ないことが多いのです。
痛風発作の治療
痛風発作の治療には、以下の薬剤が用いられます:
- コルヒチン:予兆期に内服することで発作を予防できます。
- NSAID(非ステロイド性抗炎症薬):ロキソニンなどの薬剤を用いて、痛みと炎症を緩和します。
- ステロイド:強い痛みがある場合やNSAIDが効果を発揮しない場合に使用します。
また、発作中には尿酸値を下げる薬剤は使用しません。
高尿酸血症の治療
高尿酸血症の治療は、根本的に尿酸値を下げることを目指します。以下の方法があります:
食事療法
プリン体を多く含む食品(ビール、レバー、イクラなど)の摂取を控え、野菜や根菜類を積極的に摂ることが重要です。
プリン体は多く含まれるものは
「人が美味しいと感じる食べ物」(ビールを含むお酒、お肉、レバー、ウニ・イクラ・白子といった酒のアテ)
というとイメージしやすいのではないでしょうか。
逆に 野菜、お米、卵、根菜類などにはあまり含まれていません。上記のものを減らしてこれらの接種を増やし、偏りのない食事を心がけることが大切です。
- 内服薬
尿酸値が9.0mg/dl以上の場合や痛風結節がある場合、または合併症がある場合には薬物治療が必要です。
アロプリノールやフェブキソスタットといった尿酸を作りにくくする薬剤を使用します。
治療の目標としては尿酸値6.0mg/dl以下を目指します。
整形外科と高尿酸血症、痛風発作
整形外科は、指、足首、膝の腫れなどの症状を診断・治療する専門分野として非常に重要な役割を果たします。
1. 関節穿刺による確定診断
整形外科では、内科医では難しい関節穿刺を行うことで、痛風発作やその他の関節炎の確定診断が可能です。この手技により、腫れの原因が痛風であるか、感染などの重篤な疾患であるかを迅速に見極めることができます。
2. 内科との連携
高尿酸血症には多くの内科的合併症が伴います。整形外科医は内科医と連携して、患者の総合的な健康状態を管理し、適切な検査や治療を行います。これにより、患者は包括的なケアを受けることができます。
3. 生活習慣の改善指導
整形外科では、関節炎の治療に加え、患者の日常生活における生活習慣の改善を指導します。食事指導だけでなく、運動習慣の重要性を強調し、リハビリテーションを通じて運動習慣を身につける手助けを行います。これにより、患者の健康維持と病気の予防が図られます。
整形外科のこれらの対応は、関節炎や高尿酸血症の早期発見・治療において非常に重要であり、患者の生活の質を向上させるために不可欠だと考えています。
まとめ
関節の痛みや腫れが生じた場合は痛風の可能性があります。
健康診断で高尿酸血症を指摘された場合は、痛風の予防と治療が重要です。
高尿酸血症は生活習慣病や臓器障害のリスクを高めるため、早期の検査と適切な治療が必要です。
当院では、生活習慣病に関する検査・治療も行っていますので、ぜひ一度ご相談ください。
皆様の健康を守るために、些細な症状でも放置せず、適切な診断と治療を受けることが大切です。
参考文献
4. Gutman AB (1965) Treatment of primary gout: the present status. Arthritis Rheum 8:911-920.