リウマチ 炎症性疾患

【リウマチ治療薬】JAK阻害薬について~生物学的製剤との違いとそれぞれの特徴~

医師

メトトレキサートや免疫調整薬では効果が不十分のようです。
生物学的製剤を考えた方がよさそうです。注射や点滴のものになります。

患者

注射ではなく内服薬はありませんか?

医師

JAK阻害薬といって生物学的製剤と同等の効果があると言われている経口薬があります。
切れ味がよく、即効性があるお薬になります。少し値段が張りますが試してみますか?

患者

早く痛みを取りたいので、試してみたいです。

医師

試してみましょう。
始めるにあたって、近年腫瘍リスクが示唆されているため、腫瘍スクリーニングを受けて下さい。
また帯状疱疹ワクチンになりやすい事が言われているので、ワクチン接種をお勧めします

目次

はじめに

関節リウマチの治療薬は多岐にわたりますが、近年注目されているのがJAK阻害薬です。ここでは、JAK阻害薬の特徴や生物学的製剤との違い、それぞれのJAK阻害薬について詳しく説明します。

生物学的製剤とJAK阻害薬はどう違うのか?

JAK阻害薬(Janus kinase inhibitors)は、細胞内のシグナル伝達を阻害することで、免疫反応を抑制します。JAKは、免疫系の多くの機能に関与する酵素であり、これを阻害することで、炎症反応を抑えることができます。関節リウマチの治療において、JAK阻害薬は新しい治療選択肢として注目されています。

生物学的製剤との違い

  • 作用機序: 生物学的製剤は、特定の細胞外の分子(例えば、TNF-αやIL-6)を標的にする一方、JAK阻害薬は細胞内のシグナル伝達経路を直接阻害します。
  • 投与方法: 生物学的製剤は注射または点滴で投与されるのに対し、JAK阻害薬は経口薬(錠剤)であり、服用が簡便です。
  • 使用開始時期: JAK阻害薬は、生物学的製剤を使用する前の治療段階で使用されることが多くなっています。

JAK阻害薬の利点と特徴

  • 経口投与: 内服薬であるため、自己注射の必要がない。
  • 即効性: 多くの患者で数週間以内に効果が見られる。
  • 副作用が少ない: 胃腸障害が少ない。
  • 単剤使用可能: メトトレキサート無しでも単剤で使用可能。
  • 生物学的製剤と同等の効果: ただし、腎臓や肝臓で代謝されるため、代謝臓器の状態に応じて注意が必要。

JAK阻害薬の注意点

  1. 感染症リスク: 結核、間質性肺炎、B型肝炎などのスクリーニングが必要。
  2. 帯状疱疹リスク: 特にアジア人に多い。帯状疱疹ワクチン(シングリックス)の接種を推奨。
  3. 費用: 新しい薬剤であり、費用が高い。場合によっては半量で使用することが可能である。
  4. 長期安全性の懸念: 生物学的製剤に比べて長期的な安全性データが少ない。

 メトトレキサートや生物学的製剤と同様に感染症には注意が必要です。結核、間質性肺炎、B型肝炎などのスクリーニングを行う必要があります。

 また、有名な副作用として帯状疱疹があります。日本人を初めとするアジア人でJAK阻害薬による帯状疱疹が多いと言われています。帯状疱疹に一度かかると痛みが強く、神経痛が残ることがあります。そのため、免疫抑制薬を使用中でも打つことの出来る帯状疱疹ワクチン(シングリックス)が出てきていますので、1回22000円で2回摂取となりますが9年程度効果が持続すると言われていますので、打っておくことをお勧め致します。

 内服薬と利便性は高いのですが、値段が高めです。状態に応じて通常の半量を使用することで、負担額を抑える事が出来ます。

JAK阻害薬の種類

 関節リウマチに対して使用可能なJAK阻害薬は5種類あります。それぞれの特徴について説明します。

トファシチニブ(ゼルヤンツ)

JAK阻害薬の中で一番最初に承認された薬剤になりますので、比較的長期的な成績についてのデータが出てきつつあります。

  • JAK選択性:JAK1,2,3
  • 商品名:ゼルヤンツ
  • 発売日:2013年5月
  • 用法用量:5mgを1日2回
     肝機能障害(中等度)なら5mg1日1回
     腎機能障害(中等度、高度)5mg1日1回
  • 禁忌:重度の肝障害
  • 併用禁忌:タクロリムス、生物学的製剤、他のJAK阻害薬
  • 特徴と注意:CYP3A代謝、マクロライド系抗生物質に注意。重症な心疾患や悪性腫瘍のリスク警告あり。

バリシチニブ(オルミエント)

日本において非常によく使用されているお薬ですので、安全性や効果についての実績があります。

  • JAK選択性:JAK1,2
  • 商品名:オルミエント
  • 発売日:2013年5月
  • 代謝:腎臓主体
  • 用法用量:4mg1日1回
     GFR 30-60の腎機能低下が有る場合は2mg 1日1回
  • 禁忌:重度の腎障害
  • 併用禁忌:生物学的製剤、他のJAK阻害薬
  • 特徴:コロナウイルスによる肺炎にも使用。

ベフィシチニブ(スマイラフ)

日本で3番目に承認された薬剤です

  • JAK選択性:JAK1,2,3,TYK2
  • 商品名:スマイラフ
  • 発売日:2019年7月
  • 代謝:肝臓主体
  • 用法用量:150mg1日1回
     肝障害(中等度)の場合は50mg1日1回
  • 併用禁忌:生物学的製剤、他のJAK阻害薬
  • 禁忌:重度の肝障害

タバタシチニブ(リンヴォック)

日本で4番目に承認された薬剤です。乾癬やアトピー性皮膚炎にも用いられています

  • JAK選択性:JAK1
  • 商品名:リンヴォック
  • 発売日:2020年4月
  • 代謝:肝臓主体
  • 用法用量;15mg1日1回
  • 禁忌:重度の肝障害
  • 併用禁忌:生物学的製剤、他のJAK阻害薬、タクロリムスなど
  • 特徴と注意:CYP3A代謝、マクロライド系抗生物質に注意。

フィルゴチニブ(ジセレカ)

日本で5番目に承認された薬剤です

  • JAK選択性:JAK1
  • 商品名:ジセレカ
  • 発売日:2020年11月
  • 代謝:腎臓主体
  • 用法用量;200mg1日1回
     腎障害(中等度、重症)100mg
  • 禁忌:重度の肝障害、末期腎不全
  • 併用禁忌:生物学的製剤、他のJAK阻害薬、タクロリムスなど
  • 特徴と注意:イトラコナゾールなどの併用では本剤の血中濃度が上昇するおそれ

まとめ

JAK阻害薬は、関節リウマチの治療において重要な役割を果たしています。経口薬として服用できる手軽さと、迅速な効果発現が特徴です。患者の生活スタイルや治療歴に応じて、生物学的製剤との選択肢を含めて最適な治療法を選ぶことが重要です。医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけてください。

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