治療

【鎮痛剤の種類】痛みに効く内服薬(鎮痛剤)はどれ?効果と使い分け

目次

痛みの種類と対処法

痛みは日常生活の中で誰もが経験するものです。市販薬で痛みを和らげることもできますが、市販薬は種類が少なく、効果が限定的なことがあります。

鎮痛剤は、痛みが出た際にすぐに使用できるため、日常生活を快適に過ごすための基本的な治療法の一つです。

整形外科外来では、症状に合わせて薬を調整し、できる限り早く痛みを和らげることを目指しています。

今回は、一般的によく使われている鎮痛剤について、その効果と使い分けを説明します。

痛みの方法

まず痛みに対する治療を行っていくご自身の痛みの具合を把握して下さい。

数値評価スケール:NRS (Numeric Rating Scale)    

0が痛みなし、10が想像できる最大の痛みとして、 0~10までの11段階に分けて、痛みの程度を指し示してもらう方法です。

フェイススケール: FPS (Face Pain Scale)

痛みの表情を選んでもらい、視覚的に大まかな痛みの程度を表現します。

特に、右側の方を選ばれている場合は何か大きな病気が隠れているかもしれませんので、医療機関にご相談下さい。

痛み止めの種類

整形外科整形外科でよく使用される鎮痛剤について、大まかに説明します。

痛みの性状と治療薬

全般的な痛み

  • NSAID(ロキソニン系):ロキソニン イブプロフェン セレコックスなど
  • アセトアミノフェン(カロナール)

神経痛 

  • リリカ
  • タリージェ

慢性腰痛、変形性関節症

  • サインバルタ

その他の痛み

  • ノイロトロピン:腰痛、肩の痛み、神経痛

重症の痛み

  • オピオイド鎮痛薬:トラムセット、トラマドール、フェンタニル、モルヒネ

筋肉のこり

  • 筋弛緩薬:ミオナール

鎮痛剤の効果と注意点

NSAID(ロキソニン系)

ロキソニン系は炎症を抑えることで、抗炎症・鎮痛・解熱作用を持ちます。

慢性腰痛、膝の痛み、関節痛、頭痛などに幅広く使用されます。

しかし、長期使用は胃潰瘍や腎機能障害、心血管イベントなどの副作用を引き起こすことがあります。

特に高齢者や腎機能が悪い方には注意が必要です。

ロキソニンの注意すべき副作用

胃潰瘍

腎機能障害

心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中など)

喘息の誘発

ロキソニン系の中でもセレコキシブ(セレコックス)は比較的胃潰瘍になりにくいお薬になります。

アセトアミノフェン(カロナール)

アセトアミノフェンは、腎機能障害や胃潰瘍のリスクが低く、比較的安全に使用できます。

ただし、肝機能障害には注意が必要です。

半減期が3時間と持続期間が短いため、超急性期にはカロナールを十分量飲んで頂く必要があります。

神経痛にはリリカ タリージェ 

リリカやタリージェは神経障害性疼痛に効果的で、「しびれ」を伴う痛みに使用されます。

副作用としてめまいや眠気がありますが、これらは一週間程度で軽減することが多いです。導入時には少量から開始して、様子を見ながら増量していきます。

日本ペインクリニック学会の「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン」においても神経障害性疼痛の第一選択薬とされています3)

神経痛は

「電気が走るような」

「びりびりする」

などの症状を訴えられることが多いです。

慢性腰痛と変形性膝関節症にはサインバルタ

サインバルタは神経障害性疼痛、変形性関節症、腰痛症に効果があります。

これは脳の中の痛みを感じにくくする経路(下行性疼痛抑制系)に関わる伝達物質に作用してが、それを増幅させることで痛みを和らげてくれるお薬です。

サインバルタは実は心療内科ではうつ病に保険適応のあるお薬ですが、実際には疼痛に対して頻繁に使われているお薬です。

重篤な副作用は非常に稀ですが、良くある副作用は、悪心、傾眠、口渇、頭痛、便秘です。

特に使用し始めた1週間の吐き気の副作用が多いのですが、1~2週間を超えるとましになると言われています。

また効果実感時期はゆっくりで2~4週間かかる場合があります。

トラムセット トラマドール フェンタニル モルヒネ

こちらはオピオイドと呼ばれる癌患者の疼痛にも用いられているお薬です。

トラムセット、トラマドールは比較的副作用が少なく、腰痛や関節症に有効です。ただし、依存性のリスクがあるため、短期的な使用を推奨します。

トラムセットは比較的 副作用が少なく依存性が少ないと言われています。

ただし便秘、嘔気を引き起こすことがあり、便秘薬や嘔気薬の併用が必要なことがあります。

また漠然と長期に使用した際には「依存性のリスク」はどうしてもありますので、外来では短期的に使用することをお勧めします。

整形外科で使用する漢方薬

  • 牛車腎気丸(ツムラ107):腰痛しびれに効果があります。

 むくみ、冷えを訴える慢性腰痛、体力が低下気味の高齢者の腰背部痛、腰部脊柱管狭窄症

  • 疎経活血湯(ツムラ53):若年の椎間板ヘルニアによる下肢痛などに効果があります。カンゾウが含まれます。
  • 治打撲一方(ツムラ89):打撲や骨折後の体動時痛に効果があります
  • 補中益気湯(ツムラ41):食欲がなく、気力が無い場合に効果があります。骨折などをきっかけに体力が低下してきている場合に使うことがあります。
  • 芍薬甘草湯(ツムラ68):こむら返りに即効性があります。痛みが出たときだけに1~2包程度飲むとよいです。カンゾウが含まれるため、頓服使用を推奨します。

まとめ

整形外科でよく使用される鎮痛剤にはさまざまな種類があり、痛みの種類や強さに応じて適切に使い分けることが重要です。

市販薬では対処できない強い痛みの場合、専門医に相談し、適切な治療を受けることをお勧めします。

当院では、痛みの評価から適切な鎮痛剤の選択まで、包括的なケアを提供していますので、痛みでお困りの方はぜひご相談ください。

参考文献

1. Derry S, et al (2016) Topical NSAIDs for chronic musculoskeletal pain in adults. Cochrane Database Syst Rev 4:CD007400.

2. Derry S, et al (2019) Pregabalin for neuropathic pain in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews.

3. Sumitani M, et al(2018) Executive summary of the Clinical Guidelines of Pharmacotherapy for Neuropathic Pain: second edition by the Japanese Society of Pain Clinicians. Journal of Anesthesia 32:463-478.

4. Lunn MP, et al (2014) Duloxetine for treating painful neuropathy, chronic pain or fibromyalgia. Cochrane Database Syst Rev:CD007115.

5. Chaparro LE, et al (2013) Opioids compared to placebo or other treatments for chronic low-back pain. Cochrane Database Syst Rev:CD004959.

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