治療

ブロック注射って何?種類と効果について

患者

お薬では中々痛みが良くなりません。
早く痛みを和らげる方法はありませんか?

医師

痛みの原因に合わせたブロック注射があります。
症状と画像からは脊柱管狭窄による神経痛のようですので、
仙骨硬膜外ブロックや神経根ブロックが効く可能性があります

患者

効果は一時的なものじゃないですか?

医師

効果はかなりまちまちですが、痛みの物質を流し出すことでずっと痛みが取れる方もおられます。ただし、数日でまた痛みが出てくることがあります。
いずれにせよ、一定の効果は得られます。
ブロックを行って痛みが和らいでいる間にお薬を調整したり、注射を何度か行っていくうちに痛みが徐々に和らいできます。

患者

一度お願いします。
でも注射では根本は治らないですよね。

医師

日常生活のためにも痛みを落ち着かせることが先決です。
痛みが落ち着けばリハビリを通して再発予防を行っていくことをお勧めします。

痛みがなかなか取れない、痛くて日常生活を送るのが大変という場合はなんとか早く痛みを取り除いて日常生活に戻っていただくことが大切です。

痛くてたまらない、痛みが中々良くならないという時の治療は整形外科医でも非常に悩ましいものです

そのときに用いる方法の1つとしてブロック注射があります。

ブロック注射も色々ですが、基本的には神経に直接 痛み止めなどを打つことで痛みの伝達を遮断し、炎症を抑えることで痛みを軽減します。

神経痛に限らず、さまざまな疾患の治療に有効な方法です。

ただブロック注射自体は専門性が高く、出来る医師としては整形外科や麻酔科の先生に限られてきます。

今回は神経ブロックの種類、鎮痛効果について解説いたします。

目次

鎮痛方法について

まず整形外科領域において良く用いる痛みの治療法についてお話します。

外来で行う治療法としては

  • 内服薬
  • 運動療法 
  • 関節内注射
  • その他注射(トリガー注射、筋膜リリース、神経ブロックなど)

の4つに大別されるかと思います。

関節の中の痛みで有れば、関節内注射が有効な事がありますし、痛みの原因によってこれらを使い分けます。

運動療法は痛みの改善には非常に大切ですが、それはまた今度の機会にお話させて頂きます。

今回はその内の神経ブロックについて説明致します。

神経ブロックって何?

簡単に言うと、痛みのある部位に繋がる神経を麻痺(ブロック)させたり炎症を抑えてあげることで痛みを和らげる方法です。

神経ブロックを行う際には確実に狙った神経の周りにお薬を注射するためにエコーやX線透視(レントゲンで針の位置を確認出来ます)を用いて行います。

お薬としては局所麻酔薬や少量のステロイドを用います。

どこの痛みに効くの?

痛みの原因に応じてブロックをすることで最適な治療が行えます。

ブロック注射の最大限の効果を得るためには事前の診察・検査がかかせません。

痛みが伴いますので原因をはっきりとさせた後に痛みの緩和目的に行うことが多いです。

ただ画像だけでは痛みの原因がはっきりとしないことがあります。たとえば何カ所も可能性のある病変が合って、症状自体からもどこの場所が悪いのかはっきりとしない場合は非常に悩みます。その場合は原因と思われる部位に注射を行って効果をみることで、診断と治療の両方を目的に行うことがあります。

良く行うブロックとしては

  • 神経根ブロック(首、腰)
  • 仙骨硬膜外ブロック
  • 腕神経叢ブロック
  • 星状神経節ブロック
  • 肩甲上神経ブロック など

になります。

仙骨硬膜外ブロック

ベッドの上でうつ伏せになった状態で行います。お尻を上に突き出すような格好になって頂いて、お尻の割れ目の少し上にある仙骨の下端から針を刺してお薬を注入します。

硬膜外ブロックは痛みの治療で非常に頻用される有効な治療です。腰や下肢の痛みに対して効果があります。

MRIなどの詳細は検査がなくても、行うことが可能であるという事がメリットです。特に、初めて診察させて頂いた患者さんでなんとか痛みを早く取って欲しいという状態の場合にすぐに行うことが多いです。

神経全体にききますので、原因がはっきりとしない場合も一定の効果が得られます。

脊椎疾患による痛みは、背骨の中にある硬膜という神経を包む膜の周囲の炎症が原因の一つです。生理食塩水、ステロイドや局所麻酔薬を注入することで炎症を抑え、炎症物質を洗い流すことで効果があると言われています。

一時的な効果ではなく、長期的にも鎮痛効果が得られると報告されています1)

効果があっても痛みが再燃することもありますが、その場合も何度か行っていくにつれて徐々に痛みが落ち着いてきます。

神経根ブロック

透視(X線)室で行います

俯せになった状態で透視(X線)を見て場所を確認して神経に直接鎮痛剤を投与します。

頸椎の場合はエコーを使って神経ブロックすることも可能です。

神経根ブロックは腰椎椎間板ヘルニアなどで神経根が圧迫されることによる神経根症状がある際にしばしば用います。

ヘルニアによる神経根障害

痛み、炎症が起っている神経根を狙ってお薬を注入することが出来るため、痛みの原因となっている神経痛をいち早く取り除くことが出来ます。

腰椎疾患に対する神経根ブロックによるステロイド投与による鎮痛効果と歩行能力などの日常生活能力(ADLと言います)が改善すると示されています1)

リハビリや内服薬に加えて用いることでより効果が得られることが言われています2)。急性期と言われる痛みが強い時期がすぎれば、リハビリを合せて行っていくことをお勧めします。

星状神経節ブロック

複合性局所疼痛症候群(CRPS):ケガのあとに残るうずく痛み、帯状疱疹痛、頭痛などその他様々な疾患に用いられています。

以前はエコーなどを用いずにすることがありましたが、最近では手技の効果を確実にすること、安全性を担保するためにエコーやX線透視を用いて行うことが増えてきています。

実際、この星状神経節ブロックによって、上肢のCRPSによる痛みに効果があり、可動域も改善したという報告があります3)

疾患を選べば非常に有用なもので、また発症から12週以内(3ヶ月以内)に行うと効果が高いと言われていますので、発症早期に行うことでより良い効果が得られます4)

ためらい過ぎずに他の方法で1ヶ月程度で効果が無い場合は早めにブロック注射など他の方法を検討する肝心です。

注射の時は痛みはあるの?

細いものの針を挿入することになるので、痛みは伴ってしまいます。

可能な限り痛みを抑えるために本番の注射を行う前に、注射する部位に事前に局所麻酔を行った上で行います。

腰部の神経根ブロックの際には針が神経に当たった所でお薬を注入することが多く、当たった際に下肢に痛みが走ります。それがいつもの痛みの場所と一致し、そして注射後に痛みが消えることを確認出来ることで診断に用いることがあります。

どの程度痛みが落ち着くのか?効果の持続期間はどのくらいか?

症状、画像などから痛みが落ち着くと思われる部位に注射をしていますので、一定の効果が得られると考えております。効果が無かった場合は別の神経に改めて注射することもあります。

ブロック注射で魔法のように痛みが消え去ったと喜ぶ患者様もおられますが、それでも1日~1週間程度で痛みが再度出てくる事があります。

1回のブロック注射で完全に痛みを取り切ることは難しく、ブロック注射は痛みの連鎖を断ち切ることが目的ですので何度か治療を重ねていくことで痛みを和らいでいきます。

またブロック注射のみではなく、他の治療を組み合わせることで最大の効果が得られますので、内服、運動療法、関節内注射などを併用しつつ痛みを和らげることを目指します。

まとめ

神経ブロック注射は痛みを和らげる上で有効な治療方法です。

ブロック注射だけではなく、他の方法(内服、リハビリなど)を組み合わせることによって有効な鎮痛を行うことが出来ます。

整形外科では仙骨部硬膜外ブロック、神経根ブロックなどを行うことが可能ですのでご相談下さい。

参考文献

1. Kaye AD, et al (2015) Efficacy of Epidural Injections in Managing Chronic Spinal Pain: A Best Evidence Synthesis :A best evidence synthesis.Pain physician.

2. Mondal P, et al (2017) Assessment of Efficacy of Transforaminal Epidural Steroid Injection for Management of Low Back Pain with Unilateral Radiculopathy in Industrial Workers: A Randomized Control Trial. Journal of Clinical and Diagnostic Research.

3. Van Eijs F, et al (2011) 16. Complex Regional Pain Syndrome. Pain Practice 11:70-87.

4. Ackerman WE, et al (2006) Efficacy of stellate ganglion blockade for the management of type 1 complex regional pain syndrome. South Med J 99:1084-1088.

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