目次
はじめに
最近腰が痛くて、背中が曲がってきて身長も低くなりました
最近骨折したことはありませんか?
骨折したことはありません
骨粗鬆症によって「いつの間にか骨折」といって気が付かない間に
背中の骨が骨折していることがあります。
一度レントゲンを撮影してみましょう
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは
骨粗鬆症とは、骨の強度が低下し、骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症の方は、転倒して手をついたり、尻餅をついたりするだけで、骨折を引き起こすことがあります。
骨折と治療の影響
骨折が治るまでには最低でも2ヶ月かかり、下肢の骨折の場合にはリハビリ治療も含めて半年から1年かかることもあります。骨折による痛みや可動域の制限は、日常生活に大きな支障をきたします。また、大腿骨頸部骨折を起こした方の10〜30%が1年以内に死亡すると言われており、骨粗鬆症は命に関わる病気でもあります。
自覚症状と診断の遅れ
骨粗鬆症は自覚症状が少なく、その深刻さに気づかないことが多いため、骨折して初めて診断されるケースが大半です。骨折が連鎖して起こるため、早期の治療が重要ですが、骨折後も骨粗鬆症の治療を受けていない方が多いのが現状です。
骨粗鬆症のリスクと高齢化
現在、65歳の女性の平均寿命は89歳と言われています。2人に1人が90歳まで長生きして、16人に1人は100歳まで長生きする時代です。
近年は「人生100年時代」と言われており、高齢化が進んでいますが、その分、骨の脆弱性による骨折も増えています。体感としても近年、骨の脆弱性による激しい骨折が増えてきているように感じます。
長生きするためには、健康で元気に歩けることが重要です。
医療機関では、骨粗鬆症が疑われる患者や骨折歴のある患者に対し、積極的に治療を提案しています。骨粗鬆症の治療を受けることで、連鎖的な骨折を防ぎ、健康で自立した生活を送ることが可能になります。
今回は骨粗しょう症について、一度は検査を受けておいた方がよい年齢や症状、そして診断と治療について幅広く解説致しますので是非最後まで読んで下さい。
骨粗鬆症を疑う症状
あなたの背中が曲がり、身長が低くなっていませんか?
最近、腰が痛くて、背中が曲がり、身長が低くなっていると感じる方は、骨粗鬆症が原因の「いつの間にか骨折」を起こしている可能性があります。
骨粗鬆症による骨折は自覚しにくく、一度骨折をすると連鎖的に骨折が進みます。背中が曲がってきたり、身長が低くなったり、前を向きにくいと感じたら、骨粗鬆症の可能性を考えてください。
特に、以下の症状がある場合は要注意です。
- 背中が曲がってきた
- 腰が痛い
- 身長が低くなった
- 前を向きにくい
何歳から検査を受けるべき?
骨は常に、古い骨を壊して、新しい骨を作る骨代謝による新陳代謝を行って健康な骨を作り上げています。
骨代謝では古い骨を壊す「破骨細胞」と新しい骨を作る「骨芽細胞」という細胞が働いています。これらのバランスが崩れることで骨が少なく、脆くなって骨粗鬆症になります。
閉経後の女性は特に注意が必要です。閉経後はエストロゲンという女性ホルモンの欠乏によって、破骨細胞の働きが活発となって、
「骨が壊れる量」>「骨を作る量」
となり骨がどんどん減っていき、急激に骨密度が低下していきます。
そのため年齢では以下の年齢の方は一度検査を受けることをお勧めします。
女性60歳以上 男性70歳以上
ただ元々の疾患によっては早期に骨粗鬆症になりやすいので以下を参考にして下さい。
- 60歳以上の女性 70歳以上の男性
- 骨折歴あり
特に脆弱性骨折(橈骨遠位端骨折、上腕骨近位部骨折、大腿骨近位部骨折、椎体骨折など) - 腰痛を持っている
- 背中が曲がってきた、身長が低くなった
- ステロイド使用歴
- 糖尿病、高脂血症、高血圧
骨密度結果の見方と骨粗鬆症の診断
骨折歴と骨密度測定DXA法による骨密度によって診断することが一般的です。
骨密度の測定結果は、施設や装置によって表示方法が異なりますが、一般的には以下の2つの指標を用います。
YAM(Young Adult Mean)
YAMは、若い人の骨密度を100%とし、本人の骨密度をパーセンテージで表したものです。例えば、YAMが58%であれば、若い人の骨密度の58%という意味です。
Tスコア
Tスコアは、若い人の骨密度を基準(0)とし、標準偏差(SD)で表現したもので、若い人の骨密度からどの程度離れているかを示します。Tスコアが-3.5であれば、若い人の骨密度よりも3.5標準偏差低いという意味です。
具体例での解説
上の図を見てみましょう。左側の結果は腰椎の骨密度を示しています。YAMは58%、Tスコアは-3.5です。右側の結果は大腿骨の骨密度で、YAMは69%、Tスコアは-2.5です。
骨粗鬆症の診断基準(DEXA)
以下の基準に該当する場合、骨粗鬆症と診断されます:
- YAMが70%以下
- Tスコアが-2.5以下
この基準に基づくと、上記の例では腰椎も大腿骨も骨粗鬆症の診断基準を満たしていますので、骨粗鬆症の治療が必要です。
骨折=骨粗鬆症?
骨粗鬆症の診断基準は、骨折の有無や基礎疾患によって異なることがあります。特に脆弱性骨折と呼ばれる、骨が脆くなり骨折しやすい箇所での骨折は、特別な注意が必要です。
脆弱性骨折とは?
脆弱性骨折は、骨の脆さが原因で発生しやすい骨折を指します。代表的な脆弱性骨折の種類には以下があります:
- 脊椎圧迫骨折
- 大腿骨近位部骨折
- 橈骨遠位端骨折
- 上腕骨頸部骨折
これらの骨折がある患者は、骨密度の数値に関係なく、骨粗鬆症と診断されます。
これらの骨折のある患者は骨密度の数値に関わらず、骨折=骨粗鬆症の診断です。
これらの骨折がある場合も骨が脆く骨折の危険性が高いため、YAM<80%で骨粗鬆症診断となります。
骨折リスクの測定方法 FRAX
骨折リスクを評価するためのツールとして「FRAX」があります。これを使用することで、10年以内に骨折する確率を知ることができます。このツールは、骨粗鬆症治療の開始基準にも利用されています。
FRAXツールの利用方法
FRAXツールは日本語版もあり、以下のリンクから利用できます:
- 骨密度の結果を準備: より正確な評価のために、ご自身の骨密度の結果(Tスコア)が必要です。Tスコアは-2.5 SDなどと表記されます。測定したことがない場合でも、入力なしで結果を得ることが可能です。
- 入力方法:
- 左の項目に必要情報を入力します。
- 骨密度の選択肢にはYAMはなく、Tスコアを入力します。
- 入力が完了したら「計算する」を押します。
- 結果の解釈:
- Major osteoporotic(主要な骨粗鬆症性骨折): 例えば、結果が43%であれば、10年以内に主要な骨粗鬆症性骨折を起こす確率が43%という意味です。
- Hip fracture(大腿骨近位部骨折): 結果が32%であれば、10年以内に大腿骨近位部骨折を起こす確率が32%です。
FRAXツールの項目
- 続発性骨粗鬆症: 内分泌異常、栄養異常、ステロイドなど薬剤性などが原因の場合。
- アルコール摂取量: 1単位はビール1缶、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯に相当。
簡易的な骨折リスク評価
Tスコアが1違うと骨折の確率が約10%異なると言われています。FRAXツールを活用することで、骨折リスクを客観的に評価し、適切な治療や予防策を講じることができます。
一度FRAXツールを使って、ご自身の骨折リスクを確認してみてください。詳細な解説は「FRAXを使ってみた」を参考にしてください。
重症の骨粗鬆症
- 骨密度値が YAM70%以下 もしくは -2.5SD(Tスコア)以下 かつ 1個以上の脆弱性骨折を有する
- 腰椎の骨密度が ー3.3SD(Tスコア)未満
- 椎体骨折の数が2個以上ある
- 椎体骨折が椎体が40%以上つぶれる重症の骨折型
このような場合、骨折リスクが非常に高いため、積極的な治療が必要です。治療には、骨密度を上げる効果の高いロモソズマブ(イベニティ)やテリパラチド(フォルテオ)などの薬が推奨されます。
骨粗鬆症の予防
日常でできる骨粗鬆症の予防策には以下があります:
- 適度な運動: ジャンプやジョギングは大腿骨の骨密度を上げるのに有効です。ウォーキングも効果があるので、日常に取り入れてください。
- バランスの取れた食事: カルシウムを豊富に含む食品を摂取することが重要です。
- 適度な日光浴: ビタミンDを生成するために必要です。
- 禁煙・禁酒: 喫煙は骨折時の骨癒合を遅らせ、骨折リスクを高めます。アルコールも過剰摂取は避けましょう。
若い頃からの対策
骨密度は思春期にピークを迎え、20歳で最も高くなります。その後、40歳くらいまで維持されますが、徐々に減少します。若い頃から適切な栄養摂取と運動を行うことが、将来の骨粗鬆症予防につながります。
骨粗鬆症の治療
骨はいくつ年を取っても若返る能力を持っていて、いくつになっても骨折すれば骨は再生しますし、骨を若返らせることが出来ます。
骨粗鬆症の治療は何歳からでも遅くありません。気付いた時から治療を始めましょう。
運動や食事だけでは不十分な場合、薬物療法が必要です。以下の薬が一般的に使用されます。
- 骨吸収抑制剤
- 骨形成促進剤
- ホルモン剤(閉経後の女性用)
- ビタミンDおよびカルシウム製剤
薬物療法の選択肢は多く、内服薬や皮下注射、点滴など様々な方法があります。患者の状況に合わせた治療法を選択し、継続的に治療を行うことが大切です。
>>骨粗鬆症治療薬の種類と効果についてはコチラを参照して下さい
どのくらい治療を続けないといけないのか?
骨粗鬆症の治療は、最低でも1年以上続けないと効果がありません。しかし、日本では1年以上の継続率が約4割と低いのが現状です。骨粗鬆症は慢性疾患であり、高血圧や糖尿病と同様にすぐに治るものではありません。
長期治療の重要性
骨密度が若い人と同じになるまでには時間がかかります。例えば、3年間ビスホスホネート製剤を使用することで、以下のリスクが低下することが報告されています 5)
- 橈骨遠位端骨折のリスクが22%低下
- 上腕骨近位部骨折のリスクが31%低下
- 下肢骨折のリスクが44%低下
このように、治療を継続することで十分な効果が得られます。しかし、一度骨密度が上がっても、年々骨密度は低下するため、長期的に治療を続けることが重要です。
継続治療の課題と解決策
多くの患者が「副作用が心配」、「内服が難しい」、「通院が大変」などの理由で治療を中断してしまいます。その場合、患者の状況に合わせて無理のない治療薬に変更し、調整することができます。気軽にご相談ください。
治療前と治療中の検査
治療の効果を確認し、必要に応じて薬剤を変更するためには、定期的な検査が必要です。
- 骨密度や血液検査: 半年や1年に1回行います。
- 導入後や変更後の確認: 最初の3ヶ月は月1回の採血で電解質異常の有無を確認します。また、骨代謝マーカーを調べることで薬剤の効果を見極めます。
骨密度が十分に上がってきた場合には、一旦治療を終了することもありますが、中断すると急激に骨密度が低下することがあるため、定期的なフォローが重要です。
まとめ
骨粗鬆症の早期発見と治療が、健康で自立した生活を送るための鍵となります。定期的に骨密度を測定し、早期に治療を開始することで、骨折のリスクを減らし、健康寿命を延ばすことができます。