骨粗鬆症

【骨粗鬆症】薬の種類と効果について。お薬で骨折は予防出来るのか?

目次

はじめに

骨粗鬆症はなかなか皆さんに周知されていない病気であり、一般的な検診では骨密度を検査しないため、気付かないまま過ごされている方の多い病気です。

骨折は誰しも起したくないものですが、突然起ります。

起きたときに

「今まで元気だったのに」

「何も病気した事ないのに」

そんな言葉が出ないように準備して下さい。

年をとってくると必ず身体に不調が起きてきます。

平均寿命は女性90歳、男性80歳です。この年齢に近づくにつれて何かが起ります。

骨折はその一つで、大腿骨頸部骨折では命にも関わります

骨折を予防することで、皆さんが健康で元気に過ごすことが出来るようにお手伝いが出来ると考えています。

骨粗鬆症患者の骨折は複雑な骨折が多く、治療にも難渋し、医療者側・患者側の両方が大変な目に合います。

そして、骨粗鬆症は最近は検診でのスクリーニングが推奨されていますが、なかなか受けていない方が多いのが現状です。

そのため、医療者側が患者さんを骨粗鬆症と診断するタイミングは骨折した時が多く、そこから骨粗鬆症治療を始める事になります。これはいわゆる2次予防になります。

それではワンテンポ遅く、骨折が起る前に1次予防をしていくことが肝心です。骨折の前に定期的に骨密度測定される事をお勧めします。

どうして骨粗鬆症になるの?

骨は常に、古い骨を壊して(骨吸収)、新しい骨を作る(骨形成)というリモデリングと呼ばれる骨代謝を繰り返して健康な骨を保っています。

「破骨細胞」:骨を壊す

「骨芽細胞」:新しい骨を作る

それぞれの役割をもつ細胞があります。

このバランスが崩れ

骨吸収>骨形成

となることで骨粗鬆症になります。

つまり

  • 骨が壊れすぎる(骨吸収の亢進)
  • 新しい骨を作る量の低下(骨形成の低下)

 ことで骨粗鬆症の原因です。

骨粗鬆症治療を行うことで、この骨の代謝バランスを調節することで骨の量が増加し、骨折の確率を減らすことが可能です。

骨粗鬆症治療薬の種類について

骨粗鬆症の治療薬は、この崩れた骨の代謝バランスを改善することで骨を強くしていきます。

お薬の種類としては大きく分けると以下に分けられます。商品名は代表的なものを挙げています。

種類商品名投与方法投与間隔
ビスホスホネートボナロン
ベネット
など
内服
点滴
毎日
週1回
毎月
デノスマブプラリア皮下注半年1回
テリパラチドフォルテオ
テリボン
皮下注毎日
週2回
週1回
ロモソズマブイベニティ皮下注月1回
SERMビビアント
エビスタ
内服毎日
ビタミンD製剤アルファロール
エディロール
内服毎日

に分けられます。

物によって、内服、点滴、皮下注射のものがあります。また、注射に関しては家で出来るもののあれば、病院に来て頂いて注射するものもあります。

作用で分けると

  1. 骨吸収抑制剤 骨が溶けるのを抑えて作った骨をためこむ
  2. 骨形成促進剤 新しい骨をたくさん作り出す

の2つに分類されます。

片方の作用のものもあれば、両方の作用をもつものもあります。

ここからは一つひとつの薬剤について作用と注意点、効果について説明します。

少し内容が多いので、知りたい薬剤の所に飛んで、見て頂ければと思います。

ビスホスホネート製剤

ビスホスホネート製剤は
破骨細胞(骨を溶かす細胞)に作用して細胞が力を発揮出来ないようにすることで、骨が溶けることを抑制します(骨吸収抑制剤)

投与方法、投与間隔について色々な種類があります。

一般的に非常によく使われている薬剤です。

なぜならビスホスホネート製剤は毎日、週1回、月1回の飲み薬から点滴のものまで様々あり、患者さんの背景によって使用しやすいお薬で、また効果も示されいるためです。

飲み薬にはゼリーのものがあり、高齢者に使いやすい薬剤です。

ビスホスホネートの効果

ビスホスホネート製剤は様々ありますが、今回はアレンドロネート(商品名:アレンドロン酸、フォサマック、ボナロン)に関しての成績について説明します。

アレンドロネートは3年間継続することで、腰椎骨密度が9.2%上昇し1)、椎体骨折・大腿骨近位部骨折ともに50%程度もリスクを軽減すると言われています2,3)

3年の継続によって効果が得られますので、是非継続して下さい。続けやすい薬剤を選択させて頂きます。

ビスホスホネートの注意点

吸収に時間がかかるため、コップ1杯の水とともに服用し、飲んでから30分は横にならないようにして頂きます。その他 副作用として、顎骨壊死、非定型骨折が指摘されています。別の記事をご参照下さい。

デノスマブ(商品名:プラリア)

デノスマブはRANKLというものに作用して破骨細胞の分化や活性化を抑制する薬剤になります。つまり、骨吸収抑制剤になります。

デノスマブ(商品名:プラリア)は半年に1回注射するお薬になります。負担を軽減することが出来るが可能な薬剤です。

副作用として低カルシウム血症と顎骨壊死に注意が必要です。

投与時にはカルシウム血症の防止のためにカルシウム製剤やビタミンDの内服を併せてして頂いています。

プラリアの効果

2年間の投与で骨密度が腰椎で9.1%、大腿骨近位部で4.6%の上昇と非常に優秀なお薬です4)骨折リスクを42%も低下させると報告されています5)

ビスホスホネートと同等かそれ以上の効果がありますビスホスホネート製剤とは異なる作用ですので、ビスホスホネート製剤を使用していて効果が不十分な場合にこの薬剤に変更することでより効果が得られる事があります。

プラリアの注意点

薬の中断によって破骨細胞が活性化するとリバウンドでオーバーシュート現象が起ることがあると言われています。

これにより急激に骨吸収が起り、骨密度の低下と多発骨折を来すことがあります。そのため、

急に止めないこと

止める場合もビスホスホネートに変更してしばらく継続する必要があります。

テリパラチド(商品名:フォルテオ、テリボン)

テリパラチドは副甲状腺ホルモンと言われるものですが、骨芽細胞に作用することで骨形成を促進し、骨密度を上げる作用を持っています。

つまり骨形成促進剤にあたります。

骨吸収促進剤(ビスホスホネート、デノスマブ)の前にテリパラチドを使用するとより効果が得られるため、先に使用することをお勧めします。

  • 毎日
  • 週2回皮下注射(家)
  • 週1回注射(外来)

のものがあります。

患者さんにとっては手間にはなるのですが、骨折予防効果が非常に強く、テリパラチドとロモソズマブは重症な骨粗鬆症の症例に推奨されるお薬です。

また骨折の時の骨癒合促進にも用いられるお薬で、骨折の治癒遅延の際にも使用します。

注意点としては、お薬の値段が高く1割負担の方で約5000円/月になり、人生の中で投与可能な期間が2年間のみとなっています。

テリパラチドの効果

しかし、テリパラチドは1年間使用するだけで、骨密度が腰椎10%、大腿骨近位部2%も上昇させてくれる非常に優秀なお薬です6)

骨折リスクも5-60%軽減させると言われています7)

ビスホスホネート製剤と比べても非常に優秀な効果があります。

基本は家での皮下注射のものになりますが、本人がしっかりしている方、もしくは家族と同居している方であれば問題なく使用することが出来る方が多いです。自分で注射すると聞いて躊躇される方も多いのですが、よく出来ていますので手技は意外と難しくありません。

私の場合は重症の骨粗鬆症にあたる患者さんで、しっかりしていらっしゃる患者さんには一番に勧めているお薬です。1ヶ月間ためして頂いたら、大抵の方が慣れて頂けます。

特に最初が不安かと思いますが、丁寧に手技方法について説明・練習頂きますし、動画もあります。

ロモソズマブ(商品名:イベニティ)

ロモソズマブは最近新しく出てきたお薬で、2019年3月に日本で販売開始となったお薬です。

これは骨吸収抑制+骨形成促進の両方に作用し、非常に優れた骨粗鬆症治療薬です。

月1回 両肩に1本ずつ、合計2本 皮下注射するものになります。

こちらもテリパラチドと同様にお薬の値段が高く、約5000円/月程度になります。

投与可能期間は1年となっていますが、一定の期間を開けて、骨折リスクが高い患者に対しては再投与も可能となっています。この点がテリパラチドとは異なる利点です。

イベニティの効果

イベニティの効果として、1年間の使用でビスホスホネート(アレンドロネート)使用している人と比較して、椎体骨折のリスクを36%も低下させ8)、なかなか上がりにくい大腿骨近位部の骨密度を1年間で2.6%上昇させる非常に有用なお薬になります。

この薬剤のおかげで、我々整形外科医の骨粗鬆症治療の選択肢が格段に増えました。

こちらも、私の場合は重症な骨粗鬆症患者に対しては推奨させて頂いています。

イベニティの注意点

イベニティは

虚血性心疾患又は脳血管障害発現のリスク

となると言われております。

そのため、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった病気をお持ちの方には使用を避ける必要があります。

SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)

以前は女性ホルモン自体を骨粗鬆症の治療薬として使われていたことがありますが、骨だけではなく他にも作用するため乳がんや子宮癌などのリスクが上がると報告されたため、骨に対してのみ効くように改良されたのがSERMというお薬です。

閉経後の女性ではエストロゲンとよばれる女性ホルモンが減り、それが原因で骨が溶け(骨吸収が亢進)することで骨粗鬆症が進行します。

そのため閉経後にぐっと骨密度が下がっていくため、女性に骨粗鬆症が多く見られます。

SERMの効果

SERMの効果としては、3年で腰椎・大腿骨の骨密度を2%程度上昇させ11)、椎体骨折リスクを40%減少させると報告されています。

SERM自体の骨折予防効果は、ビスホスホネート製剤などと比較すると強くはありませんが効果は十分にあります。

若い女性で骨粗鬆症が軽度な患者さんに使用しています。

ちなみにこのお薬は閉経後の女性に用いることが出来ます。男性には使うことはありません。

ビタミン剤

  • カルシウム剤

 胃腸管切除、小食、続発性副甲状腺機能亢進症などによって、カルシウムが不足している場合にはカルシウム薬の投与を行います。

 基本的にはその他の薬剤と一緒に用います。

 カルシウム剤を用いるだけでも、骨密度を1~2%程度上昇させ、骨折リスクを下げると言われています。

  • ビタミンD

 ビタミンDは日光にあたることで、身体の中で作られるビタミンです。

 ビタミンDは腸からのカルシウムの吸収を促進、骨吸収の抑制、副甲状腺ホルモンの調整などによって、骨の代謝に作用することで骨を強くしてくれます。

日頃、日光に当たることでも体内のビタミンDを増やす事が出来ます。夏であれば30分程度、冬なら1時間程度は日光浴をするようにしましょう。幼いお子さんで、日にあたらないことでビタミンDが不足すると「くる病」という病気になることもあります。日光は浴びましょう。

 効果の報告は様々ではありますが、骨密度を上昇させて脆弱性骨折のリスクを30%程度抑制すると言われています9)

 また転倒リスクも20%程度下がると言われており、筋骨格系へも作用して骨折リスクを下げてくれる可能性があります10)

 このお薬はビタミンDが不足している場合には使用します。特に施設に入所している方は日光暴露が少なくビタミンDが不足していると思われる患者さんには良い適応です。

 ビタミンDのみでも骨折予防効果はありますが、十分に予防効果を得られるようにするために他の薬剤と併用して補助的に用いることが大半です。

まとめ

骨粗鬆症の治療を行うことで新規骨折を予防することが出来ます。

どのお薬も骨折予防効果を得られますが、患者さんの骨粗鬆症の度合いや年齢、背景疾患などに応じて薬剤を選択させて頂きます。

2次予防も大切ですが、一次予防を行い骨折を一度もせずに過ごせればよりよい生活を送れます。

骨折の前に一度骨密度測定される事をお勧めします。

閉経後の女性、高齢男性の方は一度骨密度について整形外科にご相談下さい。

参考文献

1. Martin AR,et al. The impact of osteoporosis on quality-of-life: the OFELY cohort. Bone 31:32-36. doi: 10.1016/s8756-3282(02)00787-1

2. Cranney A,et al.IX: Summary of Meta-Analyses of Therapies for Postmenopausal Osteoporosis. Endocrine Reviews 23:570-578. doi: 10.1210/er.2001-9002

3. Papapoulos SE,et al.Meta-analysis of the efficacy of alendronate for the prevention of hip fractures in postmenopausal women. Osteoporosis International 16:468-474. doi: 10.1007/s00198-004-1725-z

4. Nakamura T,et al.Clinical Trials Express:Fracture Risk Reduction With Denosumab in Japanese Postmenopausal Women and Men With Osteoporosis: Denosumab Fracture Intervention Randomized Placebo Controlled Trial (DIRECT). The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 99:2599-2607. doi: 10.1210/jc.2013-4175

5. Lin T,et al.Comparison of clinical efficacy and safety between denosumab and alendronate in postmenopausal women with osteoporosis: a meta-analysis. International Journal of Clinical Practice 66:399-408. doi: 10.1111/j.1742-1241.2011.02806.x

6. Miyauchi A,et al.Effect of teriparatide on bone mineral density and biochemical markers in Japanese women with postmenopausal osteoporosis: a 6-month dose-response study. Journal of Bone and Mineral Metabolism 26:624-634. doi: 10.1007/s00774-008-0871-3

7. Neer RM,et al. Effect of Parathyroid Hormone (1-34) on Fractures and Bone Mineral Density in Postmenopausal Women with Osteoporosis. New England Journal of Medicine 344:1434-1441. doi: 10.1056/nejm200105103441904

8. Chavassieux P,et al.Bone‐Forming and Antiresorptive Effects of Romosozumab in Postmenopausal Women With Osteoporosis: Bone Histomorphometry and Microcomputed Tomography Analysis After 2 and 12 Months of Treatment. Journal of Bone and Mineral Research 34:1597-1608. doi: 10.1002/jbmr.3735

9. Nakamura T,et al.Eldecalcitol is more effective for the prevention of osteoporotic fractures than alfacalcidol. Journal of Bone and Mineral Metabolism 31:417-422. doi: 10.1007/s00774-012-0418-5

10. Bischoff-Ferrari HA,et al.Effect of Vitamin D on Falls. JAMA 291:1999. doi: 10.1001/jama.291.16.1999

11. Ettinger B .Reduction of Vertebral Fracture Risk in Postmenopausal Women With Osteoporosis Treated With Raloxifene<SUBTITLE>Results From a 3-Year Randomized Clinical Trial</SUBTITLE>. JAMA 282:637. doi: 10.1001/jama.282.7.637

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