痛みはありますが、手のこわばりがあります。
リウマチの検査はすべて陰性だから関節リウマチではないと言われました。
検査が陰性となる関節リウマチがあり、診断に苦慮することがあります。
手のこわばりはいつからで、どのくらい続きますか?
半年前からで、朝に30分以上続きます。
症状からは初期の関節リウマチの可能性があります。
一度エコーと造影MRIで調べて見ましょう。
関節リウマチでは現在、関節破壊が起る前に早期診断して治療を開始し、いち早く寛解状態に持って行くよう治療が行われています。
これは、関節リウマチによって破壊された関節は元通りには戻ることはないためです。
また、関節リウマチによる関節破壊は発症2年以内に進行しやすいことが分かっており、早期の診断を行うことによって、関節破壊が進行する前に手を打つことが関節破壊を予防することに繋がります。
昔は診断のための情報が少なく、レントゲン上に骨破壊が進行してから治療することがありましたが、近年は関節リウマチに関連する自己抗体や関節エコー、MRIなどといった技術が発展してきています。今回はその中でMRIを中心にお話したいと思います。
目次
関節リウマチの早期診断は難しい
関節リウマチの診断では
- リウマトイド因子(RF)
- 抗CCP抗体(ACPAともいいます)
という2つの自己抗体が現在一般的に使用されています。
リウマトイド因子は関節リウマチ以外でも陽性となることも多々あります。また、ACPAはリウマチに特徴的な自己抗体で、関節リウマチの診断に有用なマーカーとして利用されています。
しかし、RFやACPAといったものも関節リウマチで必ず陽性という訳ではありません。RF陰性、ACPA陰性といった検査値が陰性のことを血清反応陰性といいます。
関節痛やこわばりなどの所見はあるものの、所見に乏しく、RFやACPAが陰性の場合は関節リウマチの診断が難しいことがあります。
これは、関節リウマチの診断は現在の分類基準に従って診断が行われますが、早期の関節リウマチではその診断基準を満たさないことがあるためです。
レントゲンで骨破壊があれば関節リウマチらしさが出てきますが、「骨びらん」や「関節劣劇の狭小化」といった所見が出てくるには時間がかかります。また、近年はそういった関節破壊の所見が出る前に診断して治療することが好ましいと言われています。
関節リウマチ以外にも関節痛を来す疾患はウイルス感染や痛風、偽痛風、リウマチ以外の自己免疫性疾患など多数ありますが、他の病気を疑う所見もない場合に関節リウマチなのだろうかと悩ましい時があります。
そこで診断に有用なのが関節エコーとMRIです。
関節エコー
関節エコーでは滑膜炎といった炎症の所見を確認することが出来ます。
エコーの利点としては外来ですぐに検査を行うことが出来る事です。
外来診察の際に滑膜炎の所見が改善しているかどうか確認することで治療判定と治療の方針決定に役立ちます。
またエコー所見を患者さんと一緒に見る事によって、病状と治療について共通の認識を得る事が出来ます。
MRI検査
もう1つがMRIです。MRIでは単純と造影と有ります。
MRIは非常に高い解像度で、3次元的に関節内の変化を検出することが出来る
単純MRIでは関節リウマチに特徴的な所見として、発症早期の骨びらん、骨髄浮腫を描出できます。一方で、滑膜炎は関節軟骨との区別が困難な場合が多いのですが、造影MRIでは、脂肪抑制T1強調像で滑膜炎を明確に描出することが出来、腱鞘滑膜の描出が出来るため情報量が多く得られます。
そのため、関節リウマチを疑う患者のMRI撮像においては、喘息や造影剤アレルギー症状など造影剤の使用をためらうものがなければ、造影MRIが推奨されます。
造影MRIでは一般的にガドリニウムによる血管造影が行われます。これによって手足の関節リウマチに関係する所見を確認することが出来ます。
・関節炎(滑膜炎)
・骨髄浮腫
・骨びらん
・屈筋腱腱鞘炎
といった所見がレントゲンで関節破壊が認められない早期の段階で確認することが出来ます。
骨髄浮腫は骨びらんの前駆状態であり、関節破壊の予後を予測する因子と言われていますし、屈筋腱腱鞘炎が関節リウマチの初期に見られると言われています。
MRIは超音波検査より優れている
近年、画像診断技術を用いて、未分化関節炎(UA)を呈する患者の中からRAを発症する患者を早期に発見する試みが行われています。
滑膜炎や腱鞘炎がRAの発症予測に有用で、特に屈筋腱滑膜炎が早期のRAの最も有力な予測因子であると報告されている。
MRIは超音波検査よりも滑膜炎、腱鞘炎の検出力に優れていることから、MRIを有効活用する事によってRAの診断時期を早めることが可能であると考えられています。
また、MIPと言われる画像処理によって、炎症性滑膜の分布が1枚の画像上で表すことが出来、滑膜炎の有無を視覚的に得ることが出来るため、患者と情報共有することで病状の理解を得ることに役立ちます。
また、関節エコーよりも検査する人による結果の差が出にくいといった利点があります。
また、超音波検査は簡便ではあるものの、関節や腱すべてを調べることは時間がかかり労力を要します。MRIは簡便さでは劣りますが、手全体を一気に撮像して病態を視覚的に把握することが可能です。
早期診断の限界
関節エコーや造影MRIなどによって検査をしてもリウマチの証拠がそろわない場合は、身長に経過観察を行います。
「今は関節リウマチではありません。」
と説明することがありますが、前兆のような状態から関節リウマチに進行することがあります。
早期診断出来る状態にしておけば、今後の関節リウマチに進行した場合にも関節破壊を防ぐことが出来ます。
MRIによるtarget to treat(T2T)戦略
現在はT2T戦略と言われる関節リウマチの治療戦略があります。これは、関節リウマチ患者を寛解と低疾患活動性といって病状が落ち着いた状態を達成するためのものです。
しかし、臨床的に寛解(落ち着いた状態)しているにもかかわらず、滑膜の炎症と関節破壊が進行することがあります。
多くの臨床研究で、臨床的寛解を示す患者のMRIにおいて、滑膜炎が確認できることが示されています。つまり、症状はないものの、MRIを撮影すると関節の炎症所見が見られることがあり、炎症の残存がX線上の関節破壊の進行に関係することが報告されています。
治療中において、MRIを使用することによって、非常に密な治療を行える可能性があり、T2T戦略にMRIを使用することは利点があります。
ただし、健康な人においても、特に高齢者では造影MRIにおいて炎症やびらんが見られることが報告されていることから、画像診断がRA患者の寛解評価の誤りや過剰な治療につながる可能性があり、これは今後の課題です。
まとめ
造影MRIは早期診断に有用な検査です。
私も関節リウマチを疑う症状、所見があるものの診断基準を満たさず、判断に迷う場合があります。
そのような場合も可能な限り早期の診断して治療を行っていくために造影MRIや関節エコーといった検査を行っています。
関節痛のある患者様は一度ご相談下さい。