リウマチ 炎症性疾患

【ワクチン接種のすすめ】関節リウマチの治療中にワクチン摂取について

冬になるとインフルエンザワクチンのシーズンになります。

最近はcovid19(コロナ)に対するワクチンの3回目のターンですね。

高齢患者さんの場合は肺炎球菌ワクチン等も検討されている方もおられるのではないでしょうか。

ワクチンを摂取するべきかどうかという点にについて結論として

ワクチンは摂取すべき」です。

なぜワクチンは摂取すべきなのか、時期や打つべきワクチンなどについて説明致します。

関節リウマチや膠原病といった自己免疫性リウマチ疾患患者(autoimmune inflammatory rheumatic diseases; AIIRD)さんへのワクチン摂取に関して、最近ヨーロッパリウマチ学会から摂取方法に関して報告されています。今回参照させて頂いています。

目次

関節リウマチと感染リスク

日本人の死因の4番目が肺炎です。高齢者を中心に肺炎で亡くなる人は年間約8万人にも及びます。

関節リウマチにおいても最もよく見られる死因は感染症です。一部の感染症はワクチンによって感染予防と感染した際の重症化を防ぐっことが出来ます。

関節リウマチ(RA)患者さんではリウマチによる免疫異常や、ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤による免疫抑制治療を行うために感染症のリスクが高いことは広く知られています。

そのため高齢者、ステロイド内服など肺炎などのリスクのある患者さんには予防的な抗生剤投与が行われています。

ワクチンで予防可能な感染症の一部も、関節リウマチ患者で発症が多いと言われていますので、リウマチ患者さんにはワクチン摂取が推奨されます。

そのためリウマチ患者さんは初診時にワクチン摂取状況を評価し、ワクチン接種はリウマチの病状が安定した時期に実施しています。

ワクチンのメリット

ワクチン摂取自体は一般の人たちへのワクチン摂取と比較して同等の安全性があると言われています。

また、ワクチン摂取によるメリットは副反応のリスク・デメリットよりも大きいと考えられています。

最近流行しているCovid19においても、膠原病・リウマチ性疾患を基礎疾患として有する人は、COVID-19に罹患すると重症化リスクが高くなる可能性が示唆されています1)

そのため諸外国においても、リウマチ性疾患・膠原病患者へのワクチン接種を基本的に推奨しています。

ワクチンを打つタイミング

ワクチン摂取のタイミングは

  • 病状が安定してきている時
  • 免疫抑制剤を開始する前

がよいと言われています。

病状が落ち着いていない状態けれども、打ちたいという場合は一度主治医とご相談下さい。

ワクチンの種類

また、ワクチンの種類によって少し変わります。

不活化ワクチンは治療中でも安全に使用出来ますが、弱毒性生ワクチンの場合はその種類によります。

生ワクチン(BCG、麻疹、風疹、水ぼうそう、おたふくかぜなど)はウイルスや細菌の毒性や感染力を弱めたワクチンであるため、免疫が低下した状態では生ワクチンによって感染してしまう可能性があります。

そのため、生ワクチンは関節リウマチの免疫抑制剤を使用している場合には摂取することは出来ません。子供の頃にワクチン摂取していることが大半のため、成人においてはあまり生ワクチンを摂取することは少ないですが、もし摂取が必要な場合には医師にご相談下さい。

不活化ワクチンはウイルスや細菌の毒性や感染力を失わせたワクチンなので、ワクチン摂取による感染が起ることはありません。そのため、不活化ワクチン関節リウマチの薬を使用中でも問題ありません

不活化ワクチンであるインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンに関しては強く推奨されています。

インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンは例年冬にかけて流行のピークを迎えます。65歳以上の方や基礎疾患をお持ちの方は時期がくる前の早めの摂取をお勧め致します。

その年に流行するであろうウイルスに対するワクチンになるので、ワクチンは毎年変化します。基本的には1年に1回の摂取になります。

ワクチンの最も大きな効果としてはインフルエンザによる重症化の予防です。一方でワクチン摂取の副反応としては摂取部分の発赤・腫れ・痛みなどですが通常は2,3日で無くなります。

是非、ワクチンを摂取して下さい。

肺炎球菌ワクチン

 インフルエンザと同様に強く推奨されています。特に65歳以上に推奨されます。

時間経過とともにワクチンの効果が衰えるため定期的に再摂取することが勧められます。ただし5年以上間隔をあけて予防接種するようにして下さい。5年以内に再摂取すると局所の副反応(摂取部位の痛み、赤み、腫れなど)が強く出ることが知られています。

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹の予防接種の対象年齢は50歳以上です。

JAK阻害薬を使用中の方は特に帯状疱疹になりやすいためワクチン摂取をお勧めします。

帯状疱疹のワクチンは2種類あります。

  • 弱毒生水痘ワクチン 商品名:「ビケン」 1回接種ワクチン 接種費用は8,000円
  • サブユニットワクチン 商品名:「シングリックス」) 2回接種ワクチン 接種費用は1回21,000円、(2回接種で42,000円)

今までは生ワクチンしか無かったため免疫抑制剤を使用中の関節リウマチの患者さんは摂取が難しかったのですが、シングリックスが出てきました。

シングリックスは2020年に認可され、ウイルスの感染性をもたない部分だけが含まれており、免疫抑制剤使用中でも摂取可能です。ただし、2回摂取が必要で、費用負担が回21,000円、(2回接種で42,000円)となっています。

出産した子供のワクチン摂取について

妊娠後期に生物学的製剤を投与していた母親から生まれた子供への弱毒生ワクチンは生後6ヶ月までは避けるようにして下さい。

6ヶ月以内に受ける可能性のある生ワクチンとしては

結核(BCG)

ロタウイルス 

がありますので、摂取時期について一度主治医とご相談下さい。

もしも感染症にかかったら?

感染予防としては基本的にはcovid19の感染予防をして頂ければと思います。

手洗い、うがい、マスクの着用、人混みを避ける事

これが感染予防になります。

発熱が続いて感染が疑われる場合、咳・息切れがある場合には早めに医療機関を受診して下さい。

その上でメトトレキサート服用中においては発熱が有るときや下痢が有る場合は服用をやめるようにして下さい。メトトレキサートが効果を示した後は、1~2週間程度の中止では関節リウマチが悪化することは少なく、逆に体調不良の際に内服すると副作用が出やすくなるため中断して下さい。

一方で、ステロイドは急に内服を中断すると副腎不全などの副作用を来す可能性があるため、自己中断しないようにして下さい。

感染を疑う場合は一度主治医にご連絡頂ければと思います。

まとめ

関節リウマチ患者さんでは免疫抑制されていることが多く感染予防が大切です。ワクチンの摂取によって一部の感染を予防出来ますので、摂取を推奨致します。

参考文献

  1. SARS-CoV-2 Infection and COVID-19 Outcomes in Rheumatic Disease: A Systematic Literature Review And Meta-Analysis. Arthritis Rheumatol. 2021 Nov 22. doi: 10.1002/art.42030. Online ahead of print

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