「捻挫」はスポーツ中に最もよく見られる急性外傷の一つであり、全スポーツ関連損傷の約14%を占めています1)。
捻挫の定義は曖昧で明確ではありませんが、一般的には関節の靱帯が損傷したことで生じた状態を捻挫と言います。
目次
捻挫の原因とリスク要因
多くの捻挫は、着地時に内反や回外することで靱帯が引き伸ばされることで生じます。特に以下の要因があると、捻挫のリスクが高まります。
- 過去の捻挫歴 (リスク4.9倍)
- 運動前のストレッチ不足 (リスク2.6倍)
- 片脚バランステストが苦手 (リスク2.4倍)
- 体重過多 (リスク3.9倍)
捻挫は特にサッカーなどの接触プレー中に多く発生し、その約75%が外側靱帯の損傷です2)。
外側の捻挫が多い理由
外側靱帯の捻挫が多い理由は、以下のような解剖学的特徴によります。
- 外果の方が内果より長く、外側への制動が強い
- 距腿関節の軸の傾斜により、底屈時に内がえしが、背屈時に外がえしが生じる
- 背屈時は骨性に安定するのに対し、底屈時は比較的に不安定
- 外側靱帯(特に前距腓靱帯)が脆弱
骨折の可能性を排除するオタワルール
「4ヶ所の骨に圧痛がなく、4歩以上歩ければ足関節骨折は除外できる」
というルールがあります。これは1992年に北米で生まれたもので、スポーツ現場で骨折を除外するために有用な検査です。
ただし、所見を取り慣れていない方が行った場合は難しい可能性がありますので、捻挫は一度整形外科を受診して頂くことをお勧めします。
診断と検査
足首の捻挫か骨折かを判断するためには、次のような検査を行います。
- レントゲン検査:骨折の有無を確認
- 超音波検査:靱帯損傷の有無とその度合いを判定
その他 細かく見ている場合に、圧痛部位から予測される疾患としては以下のような物があり、痛みの場所や性状によっては捻挫以外を念頭に置いておく必要があります。
捻挫の治療
- 固定・冷却・安静
- リハビリテーション
基本は固定です。ただ靭帯損傷の度合いによって固定期間が変わってきます。
捻挫はGrade1-3(軽傷-重症)に分類され、Grade1は靱帯が伸びた状態、Grade2は部分断裂、Grade3は完全断裂を指します。完全断裂になると不安定性が出てきます。
受傷時は足関節全体が腫脹しているため、痛みの部位が分かりにくく、どの靭帯が傷んでいるのか、損傷具合が分かりにくいことが多くあります。
そのため1週間固定を行い、少し落ち着いたタイミングで再度痛みの部位を確認します4)。
固定をすることによって早期に腫脹・疼痛軽減が出来ます。2週間程度は固定することをお勧めします。損傷の度合いによっても変わりますが、捻挫は初期治療がその後の捻挫の再発や障害の予防に大きく関わります。
腫脹が落ち着いた段階からリハビリテーションを行うことをお勧めします。
捻挫の再発予防
またその後の捻挫の再発を防ぐためには、以下の方法が有効です。
- 捻挫後のリハビリテーション
- サポーターやテーピングの使用
これにより、かなりの再発リスクを軽減できます2)。
まとめ
捻挫は迅速な対応と適切な予防でリスクを大幅に減少させることが可能です。スポーツ活動を続けるために、捻挫の治療と予防についてしっかりと理解しておきましょう。
参考文献
1) Fong DT, Chan YY, Mok KM, Yung PS, Chan KM. Understanding acute ankle ligamentous sprain injury in sports. Sports Med Arthrosc Rehabil Ther Technol. 2009 Jul 30;1:14. doi: 10.1186/1758-2555-1-14. PMID: 19640309; PMCID: PMC2724472.
2) Woods C, Hawkins R, Hulse M, Hodson A. The Football Association Medical Research Programme: an audit of injuries in professional football: an analysis of ankle sprains. Br J Sports Med. 2003 Jun;37(3):233-8. doi: 10.1136/bjsm.37.3.233. PMID: 12782548; PMCID: PMC1724634.