半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にあり、クッション材のような役割を果たしています。
これが損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかり、クリックを感じたりします。
ひどい場合には、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」という状態になり、歩けなくなるほど痛くなることがあります。
目次
半月板の特徴と役割
半月板は内側と外側にそれぞれあります。内側半月板はC型をしており、外側より厚く大きい形状をしており、後節部(後ろ側)が有意に幅広いため変性を起こしやすい。
外側半月板はO型をしていて、脛骨関節面の約80%を覆い、内側の60%より大きいのが特徴です。
また、膝関節の運動に伴う移動量は外側の方が大きく、関節包との結合が緩いという特徴があります。
半月板は膝関節の屈伸に伴い、後方に移動するだけでなく形状を変形させることによって関節面の適合性を保っています。
・内側半月板は冠状靭帯により脛骨外縁部に固定されているが、外側半月板は膝窩筋裂孔部が固定されていないため、内外側半月板で動態が異なることの要因となっています。
・また、伸展位から屈曲90°で、荷重下では以下の図のように後方にスライドするとの報告があります1)
半月板損傷の原因
スポーツなどの怪我から生じる場合と、加齢により傷つきやすくなっている半月に微妙な外力が加わって損傷する場合とがあります。
スポーツによる損傷の場合は、切り返しなど膝を回旋させるスポーツでの受傷が目立ちます。体重が加わった状態でのひねり動作や衝撃によって半月だけが損傷するものと、前十字靱帯損傷などに合併して起こるものとがあります。
また、中高年者に関しては、立ち上がり時や無理な態勢で膝を捻った際に受傷するケースが多くなっています。半月板は加齢に伴って変性してくるため、40歳以上ではちょっとした外傷でも半月損傷が起こりやすくなります。
半月板損傷の分類
損傷の形も様々で形態により
- 変性断裂
- 水平断裂
- 縦断裂
- 横断裂
に分類されます。
損傷の状態によっては放置すると、さらに関節軟骨を傷めることもあります。
徒手検査
徒手検査や症状の経過からも予測可能です。
徒手検査としては
- マックマレーテスト
- アプレー牽引テスト
- アプレー圧迫テスト
などがあります。
マックマレーテスト
膝を最大屈曲位とし膝に手を当て、下腿に回旋ストレスを加えながら膝を伸展させます。
外側半月板損傷では下腿内旋で膝を伸展させるときに、内側半月板損傷では下腿外旋で膝を伸展させるときに疼痛が誘発されます。
アプレー牽引テスト
うつ伏せで膝を90°屈曲し、患者の大腿下方に検者の膝をのせ固定します。
下腿を上方に引っ張り上げて膝の関節包を緊張させ、疼痛が誘発されると陽性です。
膝関節内旋時に痛みが生じた場合は、内側半月板損傷を疑います。
膝関節外旋時に痛みが生じた場合は、外側半月板損傷を疑います。
アプレー圧迫テスト
うつ伏せで膝を90°屈曲します。足部を押さえて膝を圧迫しながら下腿を回旋させ、関節列隙に疼痛が誘発されると陽性になります。
画像検査
膝の痛みの場合に変形や軟骨下骨折などもあるため、レントゲンを確認致しますが、単純レントゲン写真では半月は写りません。
症状や診察で半月損傷を疑えばMRI検査を行います。
MRIは非侵襲性で半月損傷の病態や合併する靭帯損傷の診断にも有用です。
治療
- 安静
- 抗炎症薬
- ヒアルロン酸注射
- リハビリテーション
- 手術
になります。
スポーツや運動などで半月板を損傷したケースの初期では、損傷した膝関節の患部の安静を保ち、関節部に注射を使ってたまった関節液を抜いて、局所麻酔剤やヒアルロン酸注射による治療が行われます。
ヒアルロン酸注射
膝関節の軟骨の一成分でもあるヒアルロン酸は、関節軟骨組織や半月板そのものが損傷した時に関節内部において潤滑油のような働きをしてくれ、また炎症を抑える役割があります。
とはいえ、早く痛みが軽快した場合にも半月板が治癒していない場合があるため、損傷初期の段階では無理な運動は控えて下さい。
保存的治療で症状がで症状が改善する場合がありますが、改善しない場合には手術を行います。若年者のスポーツ外傷による半月板損傷では、辺縁部の縦断裂が多く、原則として半月板縫合術を行うことが望ましいとされています。
リハビリテーション
受傷後は痛みに応じて松葉杖を使用します。患部はシーネ固定し安静にします。固定期間中は患部以外のトレーニングを中心に行っていくことになります。
リハビリテーションとしてはスクワットなどの筋力訓練を行い、筋力向上を図ります。
エルゴメーターでの持久力トレーニングなども徐々に開始していきます。
まとめ
今回は半月板損傷について説明しました。
膝の痛みで悩まされる方は非常に多く、半月板損傷は膝の痛みの原因の1つです。
半月板損傷は治療の仕方によっては、その後の変形性膝関節症に繋がることがあるため、リハビリテーションを含めた治療を受けておくことをお勧め致します。
参考文献
- Vedi V, Williams A, Tennant SJ, Spouse E, Hunt DM, Gedroyc WM. Meniscal movement. An in-vivo study using dynamic MRI. J Bone Joint Surg Br. 1999 Jan;81(1):37-41. doi: 10.1302/0301-620x.81b1.8928. PMID: 10067999.
- スポーツ整形外科学(文光堂). 2020