目次
はじめに
指がこわばる、痛みがある、伸びない
これだけを聞くと関節リウマチを連想する方もおられるかと思います。
こういった症状の原因の1つとしてバネ指があります。
皆さんはバネ指という名前は聞いたことがありますか。
バネ指(弾発指)は診断を受けて、リハビリや注射などの治療を受ければ良くなることが多い疾患です。
今回は、バネ指(弾発指)に関して症状、治療方法について説明致します。
バネ指ってどんな症状?診断方法について
バネ指は弾発指とも書きます。弾発というと、はじけるという意味ですね。
文字通り、バネ指では指を曲げて伸ばそうとした際になかなか伸びずに急にはじけるように指が伸びます。これを弾発現象といいます。
この症状があれば、バネ指と診断できます。
外来でこの症状を再現させることでバネ指(弾発指)と診断することが出来ます。
また、これは屈筋腱を通す腱鞘という筒にひっかかって起るのですが、指の付け根の所でそれが起りやすく、指の付け根に痛みを生じることがあります。
時に弾発はないものの、痛みだけがある場合や伸ばしにくさだけがある場合もあります。そのため、実際に指を動かしてみて痛みが出るのか、指の動き具合、今までの症状の経過を聞くことで診断することもあります。
また、症状のみではなく、超音波検査で確認することで、腫瘤性病変の有無、そのほか石灰沈着などの有無を確認することができ、診断に有用と言われています。私も原因や状態の把握のために超音波で確認するようにしています1)。
また、バネ指が進行して指が拘縮して固まってしまうとバネ指の原因を取り除いたとしても指の動きが改善しなくなります。
なんでバネ指になるのか
指には、指を曲げるための腱(屈筋腱)と指を伸ばすための腱(伸筋腱)というものがあります。
指を曲げたり伸ばしたりして見て下さい。手のひら側に触れるのが屈筋腱で、手の甲に触れるでっぱりが伸筋腱になります。
腱にはいくつか腱鞘という筒の中を通っています。その筒の中を前後に動くことで指を曲げたり・伸ばしたりしています。
バネ指では、筒がせまくなったり、腱が肥厚して分厚くなることで、筒に腱が引っかかります。指を曲げてから伸ばすときに腱が筒(腱鞘)に引っかかることで指がなかなか伸びず、ひっかかりが取れて腱が筒を通る際にはじけるように指が伸びます。
繰り返すことで炎症が進み、より症状が悪化し、指が伸びにくくなり、痛みも増悪していきます。
バネ指になりやすい人は?
更年期や妊娠出産期の女性に多く見られ、手をよく使う仕事の人に多く見られます。
50代、60代で起こることが多く、女性の方が男性より6倍罹患しやすいと言われています。
また、糖尿病、リウマチ、透析患者、甲状腺機能低下症などに多い傾向があります。
生涯罹患率は2-3%ですが、糖尿病があると10%に増加すると言われています。
バネ指の治療
バネ指の治療としては
- 指のリハビリ
- 薬物療法
- 注射
- 手術
があります。
症状が軽度の場合には局所の安静、ストレッチの指導を行います。速効性はありませんが、中長期的にみれば、効果的と言われています。
リハビリとしては指を曲げる動作を繰り返すことで、腱で腱鞘を押し上げることで通り道を広げます。言葉ではなかなか説明しにくいものですので、外来・リハビリの際にご説明させて頂きます。
薬物療法として、炎症が有る場合にはNSAIDs(ロキソニンなど)や湿布などを貼ることによって炎症を抑えて症状を改善させます。
これらで効果が得られない場合や症状が強くて日常に支障がある場合にはステロイドの腱鞘内注射を行います。
注射で一時的な症状改善には非常に有効ですが、その間に原因をリハビリを通して改善させ、トータルとして症状改善を目指します。
注射で大抵の方が改善しますが、難治性の場合 手術を行います。
注射としてはひっかかりのある腱鞘の部分に注射を行います。
注射薬はステロイドと局所麻酔薬を混ぜたものになります。炎症による腱の肥厚を抑えこむことでバネ指を解消します。
私はエコーで見ながら確実に腱鞘の中に注射するように心がけております。また指の注射は痛みを感じやすいため、細い針で注射しています。
1回の注射で良くなることが大半ですが、それで改善しない場合には2-3回注射を行うことがあります。再度注射する場合には2週間以上は開けたうえで行います。
バネ指では、腱自体がすでに痛んでいる場合があり、繰り返しステロイド注射を行うことで腱が脆弱となり、腱断裂に至る危険性があるため、注射は3回までにとどめています。
それでも治らない、再発するような場合には手術をお勧めします。
手術も小さな皮膚切開で行うことが可能で、早期に日常生活に戻ることが出来る非常に切れ味が良いものです。再発も1割程度と非常に良好なものになります2)。
再発の可能性は?
バネ指に対して注射で治療した場合には再発の可能性はあります。
1年以内の再発は半数程度と言われています。再発する危険因子としてはインスリン依存性糖尿病、若年齢、複数指罹患例などが言われています3)。
確実性という意味では手術かもしれませんが、半数以上の患者が手術を避けられるのであればまずは注射やストレッチなどによる治療を行っていくべきと考えます。
まとめ
バネ指は痛みとこわばりを伴って関節リウマチの様な症状のこともありますが、症状から診断が可能です
バネ指は早めに診断を受けて治療を行えば、手術を避けられる疾患です。
バネ指は重症になってからだと指の拘縮やそのほかのトラブルが起こりやすいものになります。
指のこわばりや痛みなどでお困りの際には整形外科にご相談下さい。
参考文献
1.亀山真.狭窄性屈筋腱腱鞘炎の超音波診断.MB Orthop. 25(8),2012,53-9.