目次
はじめに
- 腰痛、お尻、下肢の痛み
- 歩行すると痛み、しびれが強くなってが長時間歩けない
- 座ったり、前屈位で痛みが和らぐ
- 自転車は長時間運転出来る。
このような症状がいくつか当てはまる方は腰部脊柱管狭窄症かもしれません。
腰部脊柱管狭窄症では正座の後のようなしびれがずっと続き、しびれや痛みが強くなると長時間の歩行が出来なくなり日常生活に支障を来します。
今回は腰部脊柱管狭窄症について、原因と診断、治療について説明致します。
腰部脊柱管狭窄症とは
脊柱管狭窄症は、背中の神経の通り道である脊柱管や椎間孔といった部分が狭く、圧迫されることによって、神経組織や血流のスペースが減少して障害が生じた状態です。
典型的な症状としては
□ 腰痛、お尻、下肢の痛み
□ 歩行すると痛み、しびれが強くなってが長時間歩けない(間欠性跛行)
□ 座ったり、前屈位で痛みが和らぐ
□ 自転車は長時間運転出来る。
のような症状が現れてますが、人によって様々で非常に多彩です。
出てくるのは足の症状ですが、原因は腰にあります。
腰痛は必ずしも出ないことがあります。
場合によっては麻痺や膀胱直腸障害(尿や便のコントロールが出来ない)が出ることがあり、その場合は緊急性がありますのでいち早くご相談下さい。
腰部脊柱管狭窄症の原因
神経の周囲の組織が出っ張ってくることで神経が狭窄します。
骨や靱帯によって神経が包まれています。年を経るにつれて骨が痛んで変性したり、靱帯が肥厚したりします。
具体的には
- 黄色靱帯の肥厚(黄色靱帯は神経の後ろ側にあります)
- 椎体、椎弓、椎間関節の骨棘や変性
- 腰椎すべり症
といった要素があります。
原因が1つという訳ではなく、これら組み合わさることによって神経が圧迫されて症状が出てきます。
腰部脊柱管狭窄症と閉塞性動脈硬化症
腰部脊柱管狭窄症と似たような症状を来す疾患として
- 閉塞性動脈硬化症
- バージャー病
といった病気があり、これらとの鑑別が大切になります。
これらはいずれも血管の閉塞によるものですので、放置しておくと、手足が壊死してしまうこともあります。
症状や年齢層、喫煙歴などから比較的簡単に見分けていきます。
腰部脊柱管狭窄症の検査
問診で
- 特徴的な症状の有無(しびれ、痛み、間欠性跛行など)
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の有無
- 喫煙歴
などを確認します。糖尿病や喫煙歴がある場合には血管性による症状の可能性があります。
身体所見では
- 下肢の筋力、感覚、反射
- 足背動脈・後脛骨動脈の触知の有無
といった要素を調べます。
画像検査としては
- レントゲン
腰の骨の変形や、不安定性、骨と骨のずれがあるかを調べます。
症状にあう様なものがあるかどうかを確認します。
- MRI
レントゲンで所見が見られない場合や判断が難しい場合はMRIを撮影します。
レントゲンではヘルニアの有無や、どの程度狭窄しているかまでは判別は難しいですが、MRIでは狭窄の程度をより具体的に確認することが出来ます。
- ABI(足関節上腕血圧比)
動脈の閉塞によるものの可能性が有る場合はこちらの検査を行います。
両側の上腕と足首の血圧を測定して、その比(ABI)を計算することによって、動脈の内腔が狭くなっていないかどうかを調べる検査になります。
同じような検査でPWV検査というものもあります。こちらは拍動の伝わり方の速さを調べる検査で、PWVは『比較的太い血管の硬さ』の指標のひとつです。
腰部脊柱管狭窄症の治療
治療としては
- 薬物療法(内服薬、外用薬)
内服薬として
・ プレバガリン(リリカ)
・ミロガバリン(タリージェ)
・ノイロトロピン
・NSAIDs
(ロキソニン、セレコキシブなど)
・ツムラ107番(牛車腎気丸)
などが症状緩和に効果があります。
- リハビリテーション(理学療法、物理療法)
・理学療法
ストレッチと体幹や臀部周囲の筋力の増強がメインになります。
ご自身でも行って頂くことによってよりよい効果が得られます。薬物療法などと一緒に行うことで早期の回復が得られます。
また、リハビリテーションは症状の緩和だけでなく、悪化の予防にも繋がります。
急性期の強い痛みが落ち着いた段階でリハビリすることをお勧め致します。
・物理療法
低周波治療や電気による神経刺激療法、温熱療法などがあります。
神経痛、しびれについての緩和に繋がります。
- 装具療法
腰椎のコルセットも効果がある可能性があります。
とくに腰椎の不安定性による狭窄の場合にはコルセットを使用して頂いています。
- ブロック注射
ブロック注射が腰部脊柱管狭窄症の症状緩和に効果があると報告されています。
当院ではステロイド、キシロカイン、生理食塩水の混合液による仙骨孔ブロックを行っています。
- 手術
保存的治療による改善が乏しく、間欠性跛行の症状が強く、歩行が難しい場合や麻痺や膀胱直腸障害がある場合には手術が行われる事があります。
除圧術と状態に応じて固定術が追加されます。
症状の予後
腰部脊柱管狭窄症によって、安静にしている場合でも足がしびれている場合には、手術を行ったとしてもしびれや歩行障害が残りやすいと言われています。
症状が強い場合には改善に乏しい傾向にありますので、悪化する前に早めの対応が肝心です。
まとめ
腰部脊柱管狭窄症ではしびれや痛み、歩行障害を伴い、血管性の間欠性跛行との鑑別が重要になってきます。
症状とレントゲンやMRIの所見から診断を行います。
検査治療としては内服治療やブロック注射、手術などがあり、症状に合わせた治療を行います。
症状が悪化する前にリハビリテーションなどによる治療を行っていくことが症状改善と悪化の予防に繋がります。
しびれ、痛みのある方は一度整形外科にご相談下さい。