骨折

【骨折・骨粗鬆症】転倒して肩が痛い!上腕骨近位部骨折の診断と治療

患者

転倒して肩が痛みます。動かせません。

医師

骨粗鬆症の方は上腕骨近位部骨折を来すことがあります。

レントゲンを撮影して確認します。

肩をついて転倒し、肩周囲に痛みがある場合、代表的な骨折としては以下の2つがあります:

  • 上腕骨近位部骨折
  • 鎖骨骨折

今回は上腕骨近位部骨折について説明します。

目次

上腕骨近位部骨折は骨粗鬆症による骨折

上腕骨近位部骨折は、転んで手を伸ばしてついたり、直接肩を打ったりすると起こる、上腕骨の肩に近い部分の骨折です。骨折を来すと肩や腕に痛みが生じ、腕を上げたりひねったりすることが出来なくなります。また肩周囲に内出血が現れます。

上腕骨近位部骨折は若い人の場合でも交通事故などの強い力で生じることがありますが、骨粗鬆症の高齢者に多い骨折です。骨粗鬆症の高齢者では、転倒して肩を打ったといった軽い力で生じることが多くあります。

大腿骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折、脊椎圧迫骨折と並んで高齢者に多い骨折の一つになります。

>>骨粗鬆症を疑う所見と診断についてはコチラ

上腕骨近位部骨折の検査方法

上腕骨近位部骨折の有無と治療方針の決定のために

  • レントゲン撮影
  • CT撮影

を行います。レントゲン撮影で骨折自体は診断可能ですが、詳細は治療方針を決定するためにCT撮影を行うことがあります。

上腕骨近位部骨折の初期治療

上腕骨近位部骨折が発覚した場合、まずは固定を行います。肩は手首などと異なりギプスでの固定が困難な場所です。そのため、三角巾やバストバンドを用いて固定を行います。

固定によって肩関節を安定させ、また、臥床・起床動作時に肩関節を安定させるためにバストバンドなど体幹に固定します。

骨折による痛みが強い場合には、内服薬による疼痛コントロールを基本とし、場合によっては神経ブロック注射を行うこともあります。

上腕骨近位部骨折の保存的治療・手術加療

治療方法としては手術もしくは保存的治療があります。治療の基準は以下によって決まります:

  • 転位(骨折部位のずれ)
  • 骨折型(単純な骨折か複雑骨折か)

によって変わってきます。

保存的治療について

転位が少なく、単純な骨折型の場合は保存的治療の適応です。

保存的治療としては、初めは三角巾とバストバンドによる固定によって肩関節を安定させます。固定期間中も手指の腫れを軽減させるため、手指の運動を積極的に行って頂くことが重要です。

固定している間はかなり不自由になりますので、ご家族のご協力が必要になります。

痛み、腫れの軽快に応じて、可動域訓練を開始していきます。

手術治療について

転位の度合いや骨折型によって手術が必要となります。

手術によって、骨折部のズレを治し(整復)、適切な位置に戻した状態で骨折部を安定化させることによって

  • 鎮痛効果
  • 骨癒合
  • 肩関節の機能(可動域)の獲得

が得られます。

手術方法としては

手術方法
  • 髄内定固定
  • プレート固定
  • 人工骨頭置換術

が行われることがあります。

手術によって骨折部を安定化させた後はリハビリを行うことで、肩関節の可動域を得ていくことが大切です。

骨折の連鎖を食い止めよう

先ほども話した通り、上腕骨近位部骨折を来す方は骨粗鬆症の事が多いです。

骨折を来すと、身体機能が落ち、転倒リスクが上がるために骨折が連鎖していくことがあります。その前に骨粗鬆症の治療を行って骨折の予防を行うことが大切です。

上腕骨近位部骨折を来した患者はYAM<80%で骨粗鬆症の診断です。

そのため、上腕骨近位部骨折の症例にはDEXAによる骨密度検査を行い、必要に応じて骨粗鬆症治療を開始します。

まとめ

上腕骨近位部骨折は骨粗鬆症の患者に多い骨折です。治療としては保存的治療と手術加療の2通りありますが、可動域制限や痛みの残存などが起こりやすい骨折です。骨折を来した場合は、骨折の連鎖を食い止めるためにも骨粗鬆症の治療が重要です。

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