リウマチ 炎症性疾患

【関節リウマチ】早期発見・治療を行い、いかにして関節破壊を防ぐか

関節リウマチの治療において、早期発見と治療は非常に重要です。2003年にインフリキシマブが登場し、その後、多数の生物学的製剤やが使用可能となりました。

また、2011年にはメトトレキサートが成人で最大16mg使用可能となり、最近はJAK阻害薬が多数登場してきました。

  • MTX16mg使用可能
  • 生物学的製剤(TNF阻害薬、IL-6阻害薬、CLTA4-Ig) の登場
  • JAK阻害薬の登場

これらによって臨床的寛解を得られるようになり、変形を予防することが可能な疾患になりました。

目次

早期発見の重要性

一方で

  • 発症早期の段階で構造的障害の進行が起りやすい 1)
  • 臨床的に寛解を達成しても、構造的障害が進行することがある 2)

そのため、早期発見と治療、そして「臨床的寛解」と「構造的寛解」を保つための治療戦略が重要です。

今回はどのようにして早期発見し、治療戦略をたてていくのかについて説明いたします。

早期発見に向けて

2010ACR/EULAR分類基準

アメリカリウマチ学会1987基準

1987年の分類基準では、早期の関節リウマチに対する感度と特異度が低いことが課題でした。そこで、2010年にACR/EULARが新たなリウマチ分類基準を設定しました。

発症3か月以内の早期の関節炎に対して以下の報告がされています4)。

  • 1987年分類基準:感度38%、特異度93%
  • 2010年分類基準:感度62%、特異度78%

これにより、早期の関節リウマチの発見が容易になりました3)。

リウマトイド因子や抗CCP抗体については健常人でもわずかに陽性となることがありますが、強陽性と分けることで、関節リウマチとそれ以外の原因を分けています。

また、日本国内の報告 においても2010年の分類基準は 感度7381% 特異度71%と報告されており、高い感度と特異度があります。

注意としては、2010年の分類基準が6点未満であったとしても関節リウマチの可能性があるということです。

そこで超音波検査とMRIの検査が診断に用いられます。

早期診断と治療

超音波検査

超音波検査は、安価で侵襲性がなく、何度も検査が可能です。関節内外の痛みの原因を特定し、滑膜炎やびらん、腱鞘滑膜炎の所見を高感度で検出できます。

造影MRI

MRIでは、超音波検査やレントゲンではわからない骨髄浮腫を検出できます。骨髄浮腫は早期関節リウマチの予測因子であり、骨びらんの前駆病変です4)。

早期診断と超音波検査

超音波検査は、安価で侵襲性がなく、何度も検査が可能です。

近年はリニアプローベが出てきたことによって体表近くの筋肉・骨格系を細かく観察出来るようになり、整形外科領域では頻繁に使われてるようになりました。

リニアプローベ

関節リウマチに特徴的な所見の検出感度が高

  • 滑膜炎の検出 (感度98%)
  • びらん (早期RAでレントゲンの6.5倍の検出力)
  • 腱鞘滑膜炎の検出

が可能であるという点で優れた検査です6)

特に腱鞘滑膜炎の所見は早期の関節リウマチの予測因子であると言われています5)。

滑膜炎所見
びらん
屈筋腱腱鞘炎

早期診断と造影MRI

造影MRI 滑膜炎所見
びらん

造影MRIも超音波検査と同様に関節リウマチに特徴的な所見の検出感度が高く有用です。

  • 滑膜炎
  • びらん
  • 腱鞘滑膜炎: 早期RAの予測因子
  • 骨髄浮腫 
     MRI:T1 low、T2 iso-high 、T2 stir high
     早期RAの予測因子
     骨びらんの前駆病変で、関節破壊の予測因子

MRIでは、超音波検査やレントゲンではわからない骨髄浮腫を検出できます。骨髄浮腫は早期関節リウマチの予測因子であり、骨びらんの前駆病変です7)。

MRI検査自体は超音波検査と比較すると、簡便さに劣りますが、なにより客観的な所見が得られます。

超音波検査とMRIによるtight control

臨床的寛解を維持しても、15%で新規の骨びらんが出現することが報告されています8)。

患活動性の抑えられている関節リウマチ患者に無症候性の滑膜炎が見られることが有り、これが関節破壊を来す病的な物であると言えます。

そのため、関節破壊の完全な抑制には画像的寛解が必要であると言えます。その一つとして、超音波検査とMRIによって滑膜炎所見を発見することによって、密な治療を行うことが可能です。

超音波検査やMRIを用いて、滑膜炎所見を早期に発見し、tightな治療を行うことで、関節破壊を防ぐことが可能です。

まとめ

関節リウマチの治療には、早期発見と治療が不可欠です。超音波検査とMRIを活用し、関節破壊を防ぎ、患者さんの日常生活への早期復帰を目指しましょう。超音波検査は日常診療で活用できるため、患者さんとのコミュニケーションを図りながら治療を進めることが重要です。

【参考文献】

  1. van der Heijde DM. Joint erosions and patients with early rheumatoid arthritis. Br J Rheumatol. 1995 Nov;34 Suppl 2:74-8. PMID: 8535653.
  2. Brown AK, Quinn MA, Karim Z, Conaghan PG, Peterfy CG, Hensor E, Wakefield RJ, O’Connor PJ, Emery P. Presence of significant synovitis in rheumatoid arthritis patients with disease-modifying antirheumatic drug-induced clinical remission: evidence from an imaging study may explain structural progression. Arthritis Rheum. 2006 Dec;54(12):3761-73. doi: 10.1002/art.22190. PMID: 17133543.
  3. Arnett FC, Edworthy SM, Bloch DA, McShane DJ, Fries JF, Cooper NS, Healey LA, Kaplan SR, Liang MH, Luthra HS, et al. The American Rheumatism Association 1987 revised criteria for the classification of rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum. 1988 Mar;31(3):315-24. doi: 10.1002/art.1780310302. PMID: 3358796.
  4. Cader MZ, Filer A, Hazlehurst J, de Pablo P, Buckley CD, Raza K. Performance of the 2010 ACR/EULAR criteria for rheumatoid arthritis: comparison with 1987 ACR criteria in a very early synovitis cohort. Ann Rheum Dis. 2011 Jun;70(6):949-55. doi: 10.1136/ard.2010.143560. Epub 2011 Feb 1. Erratum in: Ann Rheum Dis. 2011 Jul;70(7):1349. Erratum in: Ann Rheum Dis. 2012 Sep;71(9):1592. PMID: 21285117.
  5. Eshed I, Feist E, Althoff CE, Hamm B, Konen E, Burmester GR, Backhaus M, Hermann KG. Tenosynovitis of the flexor tendons of the hand detected by MRI: an early indicator of rheumatoid arthritis. Rheumatology (Oxford). 2009 Aug;48(8):887-91. doi: 10.1093/rheumatology/kep136. Epub 2009 May 27. PMID: 19474128.
  6. Karim Z, Wakefield RJ, Quinn M, Conaghan PG, Brown AK, Veale DJ, O’Connor P, Reece R, Emery P. Validation and reproducibility of ultrasonography in the detection of synovitis in the knee: a comparison with arthroscopy and clinical examination. Arthritis Rheum. 2004 Feb;50(2):387-94. doi: 10.1002/art.20054. PMID: 14872480.
  7. Hetland ML, Ejbjerg B, Hørslev-Petersen K, Jacobsen S, Vestergaard A, Jurik AG, Stengaard-Pedersen K, Junker P, Lottenburger T, Hansen I, Andersen LS, Tarp U, Skjødt H, Pedersen JK, Majgaard O, Svendsen AJ, Ellingsen T, Lindegaard H, Christensen AF, Vallø J, Torfing T, Narvestad E, Thomsen HS, Ostergaard M; CIMESTRA study group. MRI bone oedema is the strongest predictor of subsequent radiographic progression in early rheumatoid arthritis. Results from a 2-year randomised controlled trial (CIMESTRA). Ann Rheum Dis. 2009 Mar;68(3):384-90. doi: 10.1136/ard.2008.088245. Epub 2008 Apr 3. PMID: 18388160.
  8. Molenaar ET, Voskuyl AE, Dinant HJ, Bezemer PD, Boers M, Dijkmans BA. Progression of radiologic damage in patients with rheumatoid arthritis in clinical remission. Arthritis Rheum. 2004 Jan;50(1):36-42. doi: 10.1002/art.11481. PMID: 14730597.

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