リウマチ 炎症性疾患

【関節リウマチ】メトトレキサートは関節リウマチのアンカードラッグ。特徴と副作用について説明します

リウマトレックス®
医師

関節リウマチです。
感染リスクもないようですので、メトトレキサートによる治療を行いましょう。

患者

(1ヶ月後)少し良くなっていますが、まだ痛みがあります

医師

吐き気などの副作用も無いようですので、徐々に量を増やしていきます。
痛みの強い場所に関節注射も行います。

患者

(それから2ヶ月後)かなり良い感じです。

医師

メトトレキサートによる肝障害が出てきていますが、問題のない範囲です。

フォリアミンを

関節リウマチと診断を受けた場合には、メトトレキサートMTXは予後不良因子がある場合には第一に検討される薬剤になります。リウマトレックスは商品名になります。

メトトレキサートは関節リウマチの治療の肝となる薬剤です。

しかし、メトトレキサートの使用の際に注意するポイントがあります。

今回はメトトレキサートの使用方法と副作用、注意点について説明致します。

目次

関節リウマチ治療におけるアンカードラッグ

メトトレキサートはガイドライン上においても関節リウマチ治療における中心的な薬剤とされています。

メトトレキサートは

  • 関節の炎症を抑える効果が高い
  • 関節破壊の予防効果がある
  • 長期的にも効果が比較的持続する
  • 安価である

であり、診断された場合に第一に検討するべ薬剤、アンカードラッグとなっています。

リウマチは「炎症」と「免疫の異常」をあわせ持っている病気です。それらをうまく押さえ込んで、痛みや腫れ、そして関節の破壊を抑えることが重要です。メトトレキサート はその両方にバランスよく働いてくれます。

また飲み薬であるのに、高価な注射薬の生物学的製剤に近い効果が得られることがしばしばありますし、メトトレキサート が十分効かなかった場合でも生物学的製剤の効果を高める作用があるため、メトトレキサートが関節リウマチの治療における中心的な存在となっています。

メトトレキサートによってリウマチがよくコントロールされていると、そうでない患者さんに比べて寿命が正常化するとも報告されています。

また、効果と副作用のバランスに優れています。治療に伴う副作用もありますが、フォリアミンといったお薬などによって落ち着かせることが出来ます。

また、メトトレキサートは関節リウマチに対する効果は十分にありますし、メトトレキサートは生物学的製剤と比較すると非常に安価です。これは長期的な治療において患者さんの負担を減らしてくれますので大切なポイントです。

薬価がリウマトレックス2mg 165円となっていますので、週1回8mgの使用の場合で3割負担の場合、リウマトレックスのみで月800円程度の負担ですみます。

ただし、リウマチ薬の特徴ではありますが、効果が出てくるのが少し時間がかかります。

他のリウマチ薬よりは早いですが、4週間程度は効果が出てくるのに時間がかかります

そのため症状が強い場合にはそこまでの間、ステロイドや鎮痛薬など速効性のある薬剤を用いて痛み和らげていきます。

今回はメトトレキサートの使用方法と作用機序、そして使用中にどのような点に注意するべきなのか説明いたします。

メトトレキサートの使用方法・容量

メトトレキサート診療ガイドラインより

通常成人の場合、1週間に4~8mgから服用を開始します。

症状や腎機能に応じて初期の容量を調整します。若い方やリウマチによる症状が強い(活動性の高い)方は8mgから開始します。

一方で高齢者や腎機能が悪い方は副作用が出やすい傾向にあるため、2mg~6mgから開始します。80歳以上の超高齢の場合には副作用の観点から処方が難しくなります。

量に応じて1~3回に分けて、半日ごとや食後服用します。

皆さんが思い浮かべるイメージでは薬は毎日飲むものと思われるかと思いますが、メトトレキサートは週に1-2日で決まった曜日に内服します。

最初は年齢や腎機能などを考慮した上で、1週間に4~8mgの量から開始していきますが、2~4週間ごとに2~4mg程度増量していきます。最大量で1週間に16mgになります。

効果が不十分、もしくは副作用が強い場合には薬剤の変更や追加を行います。

最近は胃腸障害が比較的少ないメトジェクトという注射薬が新発売されました。

>>メトトレキサート皮下注射「メトジェクト」についてはコチラ

メトトレキサートの作用機序

メトトレキサートは葉酸代謝拮抗薬です。葉酸は代謝されて活性型となりますが、これは細胞が活動する上で必要なものです。

関節リウマチでは、滑膜細胞やリンパ球が関節で炎症を起して、関節破壊を進行させます。

葉酸の代謝を阻害することによって滑膜細胞やリンパ球の活動・増殖を抑え、炎症を抑える作用があります。

副作用予防方法~葉酸補充~

副作用軽減・予防のために葉酸製剤「フォリアミン」を追加することがあります。

副作用としては予防・軽減出来るものとしては以下のようなものになります。

・消化器症状(下痢、悪心、口内炎)

・肝障害

・骨髄抑制

メトトレキサートにフォリアミンを使用するポイントとしては

フォリアミン内服のポイント

・1週間にメトトレキサート8mgを超える

・高齢者

・腎臓が悪い方

・複数のNSAIDs(痛み止め)を使用中

・体の小さい方

など副作用の出やすい方に使用します。

メトトレキサートの最終服薬の24~48時間後に内服して頂いています。

たとえば、メトトレキサートを月曜日の朝と晩に内服する場合は水曜日の朝に内服します。

通常の葉酸量は5mg/週(フォリアミン1錠)で、副作用が改善されないケースなどに10mg/週が検討されるケースがあります。

こんな時はメトトレキサートを一時的に中止して下さい

メトトレキサート使用中には以下の症状が出てきた場合にはご注意下さい。

  • 発熱時、かぜ症状が強いとき
  • 咳、痰、息切れ、呼吸困難(息苦しい)ような時
  • 熱中症’、食欲低下、嘔吐・下痢で脱水症状(尿の出が悪い、口が強く渇く)が強いとき
  • 新たに口内炎が出てきた
  • 皮膚の青あざ、口の中の出血、繰り返す鼻血など出血しやすい状態の場合
  • 帯状疱疹(ヘルペス)といって、ぷつぷつと皮膚に水ぶくれが出来たり皮膚の症状が出てきた場合

このような場合にメトトレキサートをMTX を休薬することで、副作用が予防でき、悪化を防げる可能性が高まります。1 週間のみの休薬でリウマチがすぐ悪化することはありませんので、すぐ受診できないときには MTX を 1回中止して、早めに医療機関を受診してください。

使用上の禁忌

メトトレキサートは副作用の観点から次のような方には使用することが出来ません。

  • 妊婦妊娠している可能性のある人、授乳中の人

    胎児の形成障害を誘発する可能性があり、また母乳にも移行するため授乳中にも使用出来ません。
  • メトトレキサートによるアレルギー症状

    薬剤に対する過敏症の既往がある場合は使用出来ません。
  • 骨髄障害(白血球、血小板が少ない)

    骨髄の働きが弱い場合はメトトレキサートがさらに悪化させる可能性があります。
  • 肝障害

    活動性のあるウイルス肝炎、肝硬変や重度な肝障害をお持ちの方はさらに悪化させる可能性があります
  • 腎機能障害

    腎機能が悪いとメトトレキサートが身体の中にたまってしまい、副作用の危険が高くなります。多少であれば、少量から使用することもあります
  • 高度な呼吸器障害

    低酸素血症
    高度な肺線維症
    肺機能の低下

メトトレキサートの副作用と対策

  • 吐き気・おなかの痛み・下痢・口内炎などの消化器症状

    メトトレキサートによって、口や消化管を保護する粘膜が傷害されることが原因です。増量したタイミングで起ることが多いです。

    対処法としては、メトトレキサートを減量、ステロイド軟膏、葉酸剤等の胃薬の併用があります。
  • 発疹などの皮膚症状

    メトトレキサートによるアレルギー(過剰な免疫反応)症状です。原則として、メトトレキサートを中止します。
  • 肝障害

    肝臓の数値 AST、ALT、ALPといった数値が上昇することがあります。そのため採血で適宜モニタリングが必要です。

    基準値の3倍以上になってきた場合にはメトトレキサートを減量、葉酸増量で対応します。
  • 骨髄抑制

    白血球、赤血球、血小板の機能が低下します。高齢者で特に腎障害のある方がハイリスクです。

    軽度であればメトトレキサートの減量・中止を行います。重篤な場合には入院して、活性型葉酸「ロイコボリン」を緊急で使用します。
  • 間質性肺炎

    間質性肺炎はMTXを開始して2~3年以内に発生することが多く、一旦肺が繊維化すると元に戻りにくいため、早期発見が重要です。

    咳、痰、呼吸苦といった症状が出た場合は早急に医療機関に受診して下さい。

    メトトレキサートを中止し、必要に応じてステロイド治療が必要となります。
  • 感染症

    発熱、咳、痰などが出てきた場合は早急にご相談下さい。
    原因に応じて抗生剤による治療を行います。

    また、感染のリスクが高い患者さんには抗生剤の予防内服を行って頂いています。
  • 脱け毛

    メトトレキサートの減量・中止します
  • メトトレキサート関連リンパ腫

    メトトレキサートの副作用として、「リンパ腫」があります。
    内服開始してから2~9年くらいで発症することが多いと言われています。

    リンパ腫とは、身体のリンパ節が腫れて腫大する病気です。
    皆さんがよく知っているものとしては「悪性リンパ腫」がありますが、メトトレキサート関連リンパ腫は悪性も良性もあります。
    精査のために腫れているリンパ節を生検して病理診断を行うことで、リンパ腫がどういった種類なのかを知ることが出来ます。

    治療としては、まずはメトトレキサートの中止します。メトトレキサート中心によって半数程度が腫瘤が退縮します。
    また、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と言われるものの場合には化学療法による治療を行っていく必要があります。

ワクチンのすすめ

リウマチの治療においては体の正常な免疫自体も抑えることになるので、感染に対して通常より脆弱になります。

そのため、メトトレキサートを初めとする免疫抑制薬を服用している方、生物学的製剤を使用している方は、インフルエンザワクチンをできる限り接種して下さい。

65 歳以上の患者さんでは肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)もおすすめです。

>>ワクチン接種についてコチラを参照して下さい

まとめ

メトトレキサートは関節リウマチの治療において肝となる薬剤です。

使用上の注意点や副作用はありますが、有効な薬剤です。

患者さんの背景に合せて容量を調節し、採血によるモニタリングや副作用の早期発見・治療に努めています。

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