足首を捻った際、多くの人は捻挫をイメージしますが、実際には骨折していることもあります。
骨折を放置すると治りにくく、変形や痛みが残るため、早期の診断と治療が重要です。今回は、足首の捻挫と骨折について、その注意点と治療法を説明します。
目次
足首を捻って痛いのは捻挫?
足首を捻った際に痛みがある場合、多くの人は捻挫を考えますが、骨折が隠れていることもあります。捻挫と思って放置していると、後になって骨折が判明し、治療が遅れることがあります。
たまに捻挫と思って1週間くらい様子を見ていたものの、痛みが強く、家でなんとか過ごしていたけれど耐えられなくなって受診されて、骨折が判明する方がおられます。治療が遅くなれば、治るのも遅くなりますし、あまりに遅いと適切な治療が受けられいかもしれません。
すごく我慢強い方なのだなと思う反面、そこまで我慢せずに「早く受診して頂ければ」と思うことがあります。
足首の捻挫について
足の周りに靱帯という骨を互いにつなぐ強靱な繊維性の結合組織があります。
足首には外側と内側に靱帯があり、これが関節を保護し、運動を制限します。
捻挫は、関節にかかる力に靱帯が耐えきれずに損傷することです。外側の捻挫が多く、前距腓靱帯(ATFL)は特に損傷しやすいです。
足関節骨折について
捻挫と同じように足首を捻って骨折することがあります。
骨折の場合、関節内での骨折になることが多く、適切な治療が行われないと変形性足関節症のリスクがあります。
そのため図のように転位(ずれ)のある骨折の場合には手術が必要です。
捻挫なのか骨折なのか
足首の捻挫か骨折かを判断するには、以下の検査が必要です:
- レントゲン
- 超音波検査
- MRI検査
レントゲンで大半が分かりますが、微小な骨折の場合には当初は判別つかないことがあります。そのため、痛みや損傷具合によってCTやMRIを確認することがあります。CTでは骨折の有無が非常に明瞭に見えますし、MRIでは骨折部位だけではなく、靭帯損傷の場所・程度がはっきりとしてきます。
また、超音波検査では骨折を判定したり、靭帯損傷の程度を判別出来ます。
オタワルール
「図の4カ所を触って圧痛がなく、4歩以上歩ければ足関節骨折を除外できる」というルールで、スポーツの現場において骨折の除外を行う際には有用な情報となります3)。しかし、このルールを使っても確実ではないため、必ずレントゲンで確認します。
足関節骨折の治療
骨折の治療は
- 保存的加療(ギプスなど)
- 手術(金属の板やネジを用いて固定)
の大きく2通りになります。
転位がある場合には手術加療、転位がなければギプス固定などによる保存的加療を行います。
一般的に足関節骨折は関節内の骨折になりますので、2mm以上の転位がある場合に手術を行うことが多いです。しばらくは免荷といって足に体重をかけないように松葉杖を使って歩いて頂きます。
どのような骨折でも、骨折部分がしっかりとくっついてくれるのには2か月程度かかります。癒合してから、リハビリによる荷重訓練や可動域訓練が必要になります。
一度骨折したら、元通りに戻るには半年くらいかかるかもしれないと思っておいて下さい。
足を捻って痛みがある場合の初期対応
足を捻って痛みがある場合の初期対応としてはRICEが有名です。
Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)で、頭文字を取って略してRICEです。
- RICE(安静)
ケガをしたら、まずは安静を保つことが大切です。安静のため動かさないようにするために添え木やタオルなどを当てて固定してください。
- Icing(冷却)
患部を冷やすことで、出血を抑え、腫れや内出血、痛みを抑えます。
ただし、凍傷にならないようにアイスノンや氷の入ったビニール袋などで直接冷やすのではなく、タオルなどでくるんで冷やすようにして下さい。
- Compression(圧迫)
患部を巻いて圧迫することで腫れや出血を抑えます。
注意としてはきつすぎると血流が阻害されて、患部よりも先の色が紫色になってきて、しびれなどが出てくることがありますので、その場合は圧迫を緩めるようにして下さい。
- Elevationa(挙上)
患者を可能な限り上にあげておくようにしましょう。目安は心臓です。
例えば足の損傷の場合には、寝る際にクッションや枕を足の下に引いて高い位置に維持するようにして下さい。
まとめ
足首を捻った際には、捻挫だけでなく骨折の可能性もあるため、放置せずに医療機関を受診することが重要です。早期の診断と適切な治療が、後の合併症を防ぐために必要です。
参考文献
4. 高倉義典(2010)「図説 足の臨床」メジカルビュー社