目次
はじめに
手を捻った時や物を持ち上げた時に手首に痛みがあります
昔手首の骨折をした事があります
TFCC損傷かもしれません
レントゲンとエコーで確認しましょう。
レントゲンでは尺骨が橈骨よりも少し長めで突き上げています。
エコーでもTFCCの不連続が見られるのでTFCC損傷の所見があります。
サポーターを最低1ヶ月付ければかなり良くなると思います。
ドアノブを回すときに痛い!重たいものを持ち上げる時に痛い!といった症状はありませんでしょうか。
手首の痛みの原因は様々ではありますが、その1つとしてTFCC損傷と言われるものがあります。
皆さんがあまり聞き慣れない病気かと思いますが、今回はTFCC損傷に関して症状、治療方法について説明致します。
TFCC損傷とは
手の尺側(小指側)に三角線維軟骨複合体(TFCC)と呼ばれる組織があります。
遠位橈尺靭帯、尺骨手根靭帯、尺骨手根伸筋腱鞘、尺側関節包ならびに中央の実質部で構成されています。
三角線維軟骨複合体(TFCC)は手首の運動や支持性に関与するものです手関節において重要な役割を果たす軟部組織です。
三角形の形をしていて関節円板や靭帯、腱で構成されています。
膝関節にある半月板と同じように、手首の関節に加わる衝撃を緩和させるハンモックのようになっていて、衝撃を緩和するクッション機能を果たしています。
TFCC損傷の症状
症状としては手関節尺側の痛み、前腕の回内外の制限、遠位橈尺関節DRUJ不安定性
を3徴とします。
特にドアノブを捻る、タオルを絞る、蛇口を捻る際に疼痛を生じることが多く見られます。
回内外可動域制限まで来す方は1-2割程度と比較的に少ないです。
重症のDRUJ不安定性を来たした場合には動作の際に手が抜けるような症状があります。
TFCC損傷の原因
TFCC損傷の原因としては
- 外傷(手首の捻挫)
- 変性・変形
があります。
転倒、転落、交通事故によって手首の捻挫を来して損傷することがあります。車の追突事故の場合でも、ハンドルを持っている手を衝撃で捻ってしまい手首を捻挫してTFCC損傷を来すことがあります。
また、長年、日常生活や仕事・スポーツなどによって手関節を酷使してきたことによる変性損傷によっても生じます。アメフト・ラグビーなどのコンタクトスポーツだけでなく、野球やテニスなどでは手首をよく使うため起りやすいと言われています。
また通常は橈骨の方が尺骨よりも長いことが多いのですが、生来的もしくは橈骨遠位端骨折の影響によって尺骨が橈骨よりも長い(尺骨突き上げ)ことがあり、それが原因となることがあります。これはレントゲン撮影によって分かります。
・TFCC損傷の診断方法
検査としては
- 単純レントゲン、MRI
- 超音波エコー
- 疼痛誘発テスト
によって診断します。
レントゲンで尺骨と橈骨のバランスが分かります。尺骨茎状突起の剥離骨折などの損傷が分かります。
しかし、TFCC自体はレントゲンには写りません。レントゲンでは何もないように見えます。
そのため、これを観察出来るMRIによる検査を行うことがあります。
MRIではTFCCは線維軟骨と靱帯から構成されていますので、T2で通常は黒く(低信号)で描出されますが、損傷が起っている部分は白く(高進号)となり、損傷している事が分かります。
また手首の疼痛を来す原因はTFCC損傷以外にも多数ありますので必ず単純レントゲンは確認させて頂いています。
疼痛誘発テストとしては
TFCC部位の圧痛 Fovea sign
肘90度屈曲、前腕回内外中間位で尺骨茎状突起の掌側基部の圧痛をみる
手関節の尺側の疼痛と押したときの痛みと(圧痛)を認めます。
手関節の尺側ストレステスト
手関節を尺屈(小指側に屈曲)した状態で、手関節に対して軸圧を加えることで手関節の尺側に痛みが生じます。
DRUJ不安定性テスト(遠位橈尺関節不安定性テスト)
TFCCは橈骨と尺骨の関節であるDRUJの支持性に強く関与するため、DRUJの不安定性を来すことがあります。DRUJ不安定性がある場合にはTFCC損傷の可能性が高いです。
テストの方法としては橈骨と尺骨をそれぞれ把持して関節を動かした際に、痛みや不安定性、コリコリと音がある場合は陽性となります。
TFCC損傷の治療方法
治療方法として
- 装具による局所の安静
- リハビリテーション
- 手術療法
があります。
まずは手関節を使うスポーツを禁止した上で、3ヶ月程度の保存的治療が優先されます。
局所の安静のために手関節のサポーターやギプスによる固定を行い、消炎鎮痛剤の投与を行います。
3ヶ月以内に症状の改善が得られることが多いです。約4週間程度の装具固定で57%に症状の緩和を認めたという報告もあります。
手首の固定期間中は指、肘、肩の拘縮を予防するために可動域訓練を行います。
1ヶ月程度経過した段階で手関節周囲の筋肉のストレッチ・トレーニングなどのリハビリを行います。
これらの治療によっても改善が得られない場合には手術加療が適応となります。
先ほどの尺骨突き上げが原因の場合には尺骨の骨切り(短縮術)を行ったり、また関節鏡によるTFCCの縫合、除圧が行われます。
まとめ
今回はTFCC損傷という皆さんが聞き慣れない疾患について説明致しました。
適切に治療すれば良くなりやすい疾患ですが、痛いながらにどうしても手関節を使ってしまい悪化する方が多い疾患です。
手関節の痛みが有る場合は一度ご相談下さい。