下肢

【外反母趾】「親指が曲がっている、靴がすれて痛い」

親指が曲がって、付け根が擦れて痛みがある方は外反母趾かもしれません。

特に女性に多く見られる疾患ですが、適切に治療を行うことで外反母趾の悪化を防ぐことが出来ます。

外反母趾は放置して悪化すれば出っ張った部分が床擦れになったり、皮膚トラブルが生じて痛みが出てくるため手術が必要となってきます。

今回はそうならないために外反母趾に関して症状、原因、予防方法について説明します。

目次

外反母趾って何?診断方法

外反母趾は、足の親指が小指側に曲がり(外反)、付け根が擦れて痛む疾患です。

特に女性に多く見られますが、適切な治療を行うことで悪化を防ぐことができます。

放置すると痛みが強くなり、手術が必要になる場合があります。外反母趾は名前は良く聞く病気のため、知っておられる方も多いのでないでしょうか。

ご自身の親指はどうでしょうか?親指が外側に向いて、親指と人差し指が重なったりはしてませんか?

診断方法

外反母趾の診断は、母趾の中足骨と基節骨がなす角度(HV角)を基準に行います。レントゲンで荷重時と非荷重時の両方を測定し、HV角が20度を超えると外反母趾と診断されます。

重症度は以下のように分類されます:

  • 軽度:20〜30度
  • 中等度:30〜40度
  • 重度:40度以上

外反母趾の原因

原因としては

が挙げられます。

特に女性に多く、家族内発生の割合が高いです1)。外反母趾は幼児期から始まり、成長とともに悪化しやすいです。

現代の日本では西欧風の靴になってきており、特にハイヒールが外反母趾の原因になると言われています。靴の変化によってこの10年でもHV角が悪化してきていると言われています。

ハイヒールは外反母趾、足底筋膜炎など様々な足の疾患に関連していますので、是非スニーカーをお勧めします。

ただし靴は一つの原因であって、外反母趾は生来的な要素があります。

有名は話としては、1965年に靴を履いていないセントヘレナ島の住民3006名を調査した所、靴を履いていない人でも2%以下ではあるが外反母趾がいたと言われています。靴を履いていない人でも外反母趾の人はいるという非常に面白い調査結果です。

外反母趾とアーチ不良

扁平足・開張足といった足のアーチ不足も外反母趾に関係していると言われています。

特に後脛骨筋腱、長腓骨筋腱がアーチ保持に重要な役割をもち、それらの機能低下や緊張などによってアーチ構造が崩れます。これらは捻挫の際に損傷して機能低下することがあるため、捻挫後のリハビリはかかせません。

外反母趾の症状

外反母趾の主な症状は以下の通りです:

  • 皮膚トラブル
  • 見た目の変形(整容面)
  • 親指の付け根の出っ張りによる痛み
  • タコやウオノメの形成
  • 歩行時の痛み

女性としては、外反母趾でまず気になる点としては見た目(整容面)ではないでしょうか。曲がりきってしまうと、手術以外に治せなくなってしまうので、その前に手を打つこと肝心です。

外反母趾が進行すると、親指の付け根の部分が出っ張ってきて、それが靴と擦れて刺激を受けて、バニオン(Bunion)と言われる皮下滑液包炎を生じて腫れや発赤、疼痛を伴うことがあります。

また、外反母趾の人の足の裏を見てみると、足の人差し指の付け根や小指の付け根などにタコ(胼胝)、ウオノメ(鶏眼)を形成することで歩行時の痛みを生じます。これらの胼胝(ベンチ)は足の「横アーチ」が低下することにより、中足骨頭が足底に突出し、蹴り返し動作の際に中足骨頭に負担がかかるために生じるものです。

外反母趾の治療方法

初期の段階で外反母趾と気づいた場合、悪化を防ぐための方法があります:

  • 薬物療法:痛みや炎症を抑えるための薬。初期の段階で外反母趾と気づけた方はラッキーです。
  • 靴の指導:ハイヒールを避け、クッションのあるスニーカーを履く。
  • 運動療法:母趾外転筋の強化やアーチ構造の維持のためのエクササイズ。
  • 装具療法:足底板や矯正装具を使用し、足の形を矯正する。

運動療法

運動療法としては、他動運動による拘縮予防、自動運動による母趾外転筋の強化があります。

他動運動としてはゴム等を使用して、足の親指通しに引っかけて引っ張り合うHohmann運動という物があります。

自動運動としては、親指を内側に寄せる(内反)ように自身の力で動かして、外転筋の筋力トレーニングを行う方法があります。

その他、足の下にタオルを引いて、タオルを足の指でつかむ運動があります。

自動運動は最初はなかなか難しいのですが、継続していくことで力が付き、予防効果が得られます。

装具療法

装具療法としては、足の形も外反母趾の原因の一つですので、足底板をお勧め致します。足裏から持ち上げてアーチを作ってあげることによって足の変形を矯正します。

胼胝を形成して疼痛を伴っている場合ではその部分が除圧できるようにくぼみを付けたりします。

また、以下のような親指に装着するバンドや趾間にはさむ矯正装具あり、症状の緩和に繋がります。

その他、靴の選択も大切です。

それぞれの足の形に合わせて靴を選択する必要があります。ヒールは止めるようにして、クッションのしっかりとあるスニーカーをお勧めします。

また、足先が少し広めの物で、指先に負担がかからない形の物が疼痛の軽減に効果があります。

手術の方法

手術としては骨切りが行われることが一般的です。

手術の後のリハビリも大変ではありますが、アライメントを矯正することで、タコ・ウオノメなどの皮膚トラブル、痛みが軽減されます。

重症の場合には無理に保存的に矯正することで疼痛が生じることもありますので、病状によっては最初から手術が好ましいこともあります。

まとめ

外反母趾は、適切な治療を受けることで悪化を防ぎ、痛みや皮膚トラブルを軽減できます。悪化すると手術が必要になる場合があるため、早めの診断と治療が重要です。

参考資料

1. Hardy RH, Clapham JCR (1951) OBSERVATIONS ON HALLUX VALGUS. The Journal of Bone and Joint Surgery British volume 33-B:376-391. doi: 10.1302/0301-620x.33b3.376

2. Shine LB (1965) Incidence of Hallux Valgus in a Partially Shoe-wearing Community. BMJ 1:1648-1650. doi: 10.1136/bmj.1.5451.1648

3.外反母趾診療ガイドライン2014年

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